挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
デスマーチからはじまる異世界狂想曲 作者:愛七ひろ
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

38/554

4-3.雑事とフラグ

※8/16 誤字修正しました。

 サトゥーです。誰かの手のひらで踊らされていると感じた事はありますか?

 なんとなく西遊記の孫悟空のような気分です……。





「どうしたのよ? ご主人様、背中が煤けてるわよ~?」

 堂々巡りしていた思考を打ち切ると、大きな荷物を背負ったアリサが立っていた。

「オナカ痛い~?」
「痛いのです?」

 ローブの裾を引かれるので視線を向けると、足元にしゃがみ込んで心配そうに見上げているポチとタマがいた。
 リザは静かに立っているだけだがなんとなく心配してくれているのが伝わってくる。

「大丈夫だよ、ここ何日か忙しかったから疲れがでたのかもね」

 ポチとタマの頭をポンポンと叩いてやる。
 ちみっこ達に心配とかさせたら大人失格だよな。そう考えただけで、さっきまで心に圧し掛かるようにあった罪悪感や嫌悪感が潮が引くかのように消えていく。

 ……念のためログを確認したが新しいメッセージは何も記録されていない。

 やはり今晩アリサに相談しよう。アリサに耳打ちして「今晩ルルが寝たら少し時間を割いてくれ」と頼むと「え~デレるの早くない?」と勘違いに満ちた返答が来た。とりあえずOKと受け止めておこう。

 買い物の首尾をたずねるとポチとタマが嬉しそうに鞄から服を取り出し始めたのを止める。宿に戻ってから見せてもらう事にした。
 リザだけは使いすぎを詫びていたが、必要経費だから気にするなと言っておいた。

 今のペースで金を使っていてもシガ王国の通貨だけでも2~3年は持ちそうだから当面は心配いらないだろう。

 宿に帰る道すがらアリサ達から買い物の話を聞く。ポチとタマは買い物自体が初めてだったのか終始はしゃいで、いかに楽しかったかを話してくれる。
 リザに両手に下げた雑貨やルルの服を半分持とうと提案したが、やんわりと断られた。




 帰宅中、前に見慣れた後姿を見つけた。ちょっと足元が覚束無いようだ。
 マーサちゃんと宿の小間使いの少女の二人が薪束を運んでいる。

「マーサちゃん、お使いの帰りかい?」
「あ~、サトゥーさん。デートはもう終わり?」
「残念ながら、ゼナさんは午後から仕事なんだよ」

 話しながらマーサちゃんと小間使いの少女から薪束を1つずつ取り上げる。彼女達の仕事かもしれないが目的地は一緒だ。半分くらい持ってあげてもいいだろう。
 リザが代わりに持とうとするが両手がふさがってるので遠慮させた。ポチとタマも「持つ~」と言ってきたが、幼女の荷物を預かって別の幼女に持たせたら意味が無いので諦めさせた。

 大して重い物ではないが2~3キロはある。年端も行かない女の子が一人で2束も持つのは無理がある。いつもは配達してもらっているらしいが今日は仕込みの時に使う分が足りなかったので買いに行かされたそうだ。

 厩舎の側の勝手口から中庭に入る。薪置き場に束を置く。

>「運搬スキルを得た」

「ありがと~サトゥーさん。お陰で助かっちゃたよ~」
「ありがとうございます、お客さんっ」
「気にしないでいいよ」

 マーサちゃんは一束持って厨房に入っていく。小間使いの少女、名前はユニと言うらしい。ユニはこれから客から預かっている馬の世話をするそうなので見学させてもらう。
 馬が居るのは昨日も見ていたんだが、馬の世話を見たことがなかったので興味があった。けっして逃避では無い。

 ユニは踏み台の上で小さい体を精一杯伸ばして馬にブラシを掛けてやっている。手伝いを申し出てみたが客に手伝わせたら女将にしかられてしまうそうだ。
 荷物を自分のスペースの藁束の下に隠してきたポチ達が戻ってきた。ポチとタマがユニを手伝いに行く。リザによると朝も手伝いをしていたそうだ。ポチ達が手伝うのはいいのか?

 3人の幼女が頑張って馬の世話をしているのを見ていると運動会で応援している父兄の気分になるな、何か癒される。
 いつの間にか4人目の幼女も戻ってきていたが、アリサは手伝う気は無いようだ。
「だって買ったばかりの服が汚れちゃう~」と言って外套の下の街娘っぽい服を見せて来る。

「リザ、仮駐屯所に槍と魔核(コア)の代金を受け取りに行くけど一緒に来るか?」
「はい、お供します」
「わたしも! わたしも行く!」

 ポチとタマも手伝いを中断してこっちに走ってくる。
「どこか~?」「行くのです?」と聞いてくるが、全員でぞろぞろ行っても迷惑になりそうなので、ポチとタマはお手伝いを続行するように言う。
「あい!」「なのです~」と2人は馬の飼い葉を運ぶ作業に戻る。不思議なほど楽しそうなのは何故だろう?





「ルルの様子はどうだった?」
「大丈夫そうだったよ。着替えと下着渡してきたから今から行ったらラッキースケベなシーンが思い出に追加されるわよ~?」

 バカな事を言ってくるアリサの頭を(はた)いておく。本当にあの子の異母妹なのか?

「ちょっと寄り道するぞ~」

 そう宣言してなんでも屋に行く。

「こんにちはナディさん」
「あら、いらっしゃいサトゥーさん。今日は可愛い子が一緒なんですね」

 なんでも屋の中に入るとナディさんがカウンターの向こうから愛想よく答えてくれた。もう一人いるヒゲのオッサンが店主らしいのだが、いつ来ても寝ている。働いているのだろうか?

 遺髪や遺品の配達の依頼をしたいとナディさんに話す。
 オレみたいな身元不明の怪しいやつよりもナディさんみたいにこの街の人に配達してもらった方がいいだろう。ちなみに仮駐屯所にいた文官さんにも頼んでみたのだがキッパリと断られた。亡くなった人の名前とおおよその容姿は伝えておいたので遺族に連絡は行っているはずだ。

「謝礼の受け取り代行まで行いますか?」
「はい? 何の謝礼ですか?」

 快く引き受けてくれたナディーさんに遺髪や遺品を渡し、文官さんに伝えたのと同じ亡くなった人の情報を伝えた後にナディーさんが可笑しなことを聞いてきた。
 遺族から遺髪を届けた謝礼を受け取るのを代行するか確認してきたらしい。単なる御節介だから謝礼なんて必要ないんだが……。

「でしたら遺族が裕福な場合に限って謝礼を受け取ったらどうでしょう? そういう方達は謝礼目的以外で遺品を配達してきたと聞いたら何か裏があるんじゃないかと勘繰って来る可能性が高いですよ」

 との事だった。なんでも屋の配達依頼料を上限にして受け取って貰う事で話は纏まった。

「ナディーさん、話は変わるんですが……」

 借家か分譲家屋を買いたいので相場を聞いてみた。買えない額では無いのだが、結果的に仲介を頼むことはなかった。
 ナディーさん曰く、「亜人が住むことを嫌がる隣人が多いので内壁はもちろん西街でも家を売って貰えないと思いますよ。東街なら探せばあると思いますが、治安が悪いのでサトゥーさんのように裕福な身なりの人が住んでいたら翌日までに盗賊が襲ってくるのは確実です」との事だった。





「こちらの買取書類にサインをお願いします。それと槍の鑑定費用は買取金額から天引きしてあります。槍の安全は確認されたので持ち帰って頂いて結構ですが市内で亜人に持たせないように注意してください」

 文官さんの差し出す書類にサインして代金と槍を受け取る。槍には持ってきた布を巻いておく。

 魔核(コア)の値段は銀貨17枚になった。鑑定料が銀貨2枚だったのは妥当な額なのだろうか? 正直、鑑定だけで食っていける気がする。
 4人でたった1日迷宮に潜っただけでアリサ6人分も稼げるとは……。単位がおかしいな。スキル持ちの奴隷や知識奴隷はとても買えないが労働用の奴隷なら余裕で買えてしまう。
 4人で分配したとしても今の生活水準で半月分の生活費になるのか……。

「へ~迷宮って儲かるのね~」
「命がけだけどな」

 仮駐屯所の中では静かだったアリサだが外に出たとたん元気に話し始めた。気のせいじゃなく目が輝いている。

「ねぇ、ご主人様、聞いていい? この街に定住するつもりだったりするの?」
「いや、そんな積もりはないぞ」

 仮駐屯所の出入り口に立ち止まっていても邪魔なので歩きながら話す。

「でもでも、さっき家を買おうとしてたじゃない?」
「リザ達をいつまでも馬小屋に泊まらせたくなかったから買おうと思ったんだが、無理そうだな~」

 リザは何かを言おうとしたがアリサの勢いに負けて割り込めなかったようだ。

「さっきの恋人さんは現地妻なの?」
「嫌な言い方をするな。親しくさせて貰ってるけど恋人ってわけじゃないよ。出会ってまだ3日目だぞ?」


「だったらさ~、わたし迷宮都市に行きたい!」

 アリサはシュタッと効果音がでそうなくらい綺麗な姿勢で手を上げて宣言する。
 また迷宮か。

「迷宮都市と言うからには迷宮があるんだろう? 蟠り(わだかまり)とかはないのか?」
「う~ん、たしかに嫌な思いでが蘇って来るけど、それよりも! わたしレベル上げしたいの!」

 ゲームじゃあるまいし。
 違うな、ゲームじゃないからこそレベルを上げたいのか。

「レベルを上げてどうするんだ?」
「もうそろそろ魔王の季節だから死なないためにもレベルを上げておきたいの! ついでに強制(ギアス)を解けるくらい魔法スキルも上げられるもの」

 魔王の季節ってキャベツやナスじゃあるまいし……。
 あまりにバカバカしいフレーズだったせいで、うかつにもオレはその単語を聞き流してしまった。
 定住フラグはあっさり叩き折られてしまいました。
 変わりに新しいフラグが幾つか立ったようです。

 「忘却」スキルを有効化しているかのようにサトゥーは4-1の苦悩をあっさり記憶の片隅に追いやっています。理由が描写されるのはけっこう後の話になります。魔王の季節もその時に一緒に記述するつもりです。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ