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デスマーチからはじまる異世界狂想曲( web版 )  作者: 愛七ひろ
第十章

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10-35-2.酒宴とベリアの実[改稿版]

※6/21 誤字修正しました。

※6/22 改稿しました。

 サトゥーです。昔は脱サラして喫茶店を開くのが流行っていたそうですが、最近ではスローライフを求めて、田舎の土地を買って農業を始めるのが流行っているみたいです。





 メリーアン嬢が迷惑を掛けたお詫びという名目で、デュケリ准男爵の屋敷に招かれた。


 宴席にはオレだけでなく、彼が仕切っている迷宮都市内の魔法道具屋や薬屋の店主達も招かれているようだ。

 宴席の前に応接間でドレス姿のメリーアン嬢から、迷惑を掛けた詫びの言葉と救出してもらった感謝の言葉を受けた。彼女は父親に内緒で剣術道場に通っていると囁きを残して部屋を退出していった。

 悪戯っ子のように微笑を浮かべていたのは、見間違いじゃないだろう。





「迷宮都市で探索者をするなら顔繋ぎをしておいた方が良かろう」


 彼はそう告げて、娘の恩人だと言って店主達にオレを紹介してくれた。


 酒宴の席では、自然と迷宮都市での売れ筋商品や不足しがちな商品の話になった。特に回復薬が足りなくて、デュケリ准男爵が迷宮都市の商店を纏め上げ、太守を味方にして値段を吊り上げるまでは、品切れがあたりまえの状態だったらしい。


「しかも、この街で回復薬を作ろうと思ったら、商人達が近隣の街で仕入れた高い材料を買い込むか、あの荒地を掻き分けて狼の出る山まで薬草摘みに出るしかないんだ」

「採算度外視のギルドの魔法薬なんかと、張り合ってた頃は辛かったなぁ」

「あいつらは王都の価格で売りやがるからな」

「まったくだ、薬草の仕入れ易さが違うってんだ」


 なるほど、買い手と売り手の意識の違いがあるのはあたりまえだけど、そんな事情があったとはね。全部、鵜呑みにするのはマズいけど、一方的に暴利を貪ってるわけじゃないのか。


「でも、品切れの頃は、探索者達は回復手段も無しに迷宮を攻略していたのですか?」

「いや、貧乏な探索者達は、ベリアの葉を摘んで持っていってたよ」

「それは今も変わらんだろう」


 ベリアというのは、迷宮都市の周囲の荒地に自生するサボテンモドキの事らしい。

 確かに、街道沿いにもたくさん生えていた。


 ベリアは、サボテンの実の周りにアロエのようなトゲトゲの肉厚の葉が生えた多肉植物で、実は食用、葉は止血や火傷の治療などに使えるらしい。


 中央の実は、それなりに美味しいらしいが、「乞食殺し」という異名があり、食べ過ぎると脱水症状を起こすまで下痢をするらしい。体力の無い子供やお年寄りの場合、そのまま死ぬ事もあるそうだ。


 仕事にあぶれた運搬人達は、都市周辺で摘んだベリアの葉を迷宮門前で売って小銭をかせいで糊口を凌ぐらしい。門前の物売りは数が多いのでスルーしていたが、そんな物まで売っていたのか。今度、色々と注目してみよう。


「ベリアの葉から回復薬は作れないのですか?」

「大昔に賢者様が、ベリアの葉から魔法薬を作ったって伝説はあるんだが、失伝して久しいからな」

「今じゃ『ベリアの葉から作る回復薬』って言ったら、迷宮都市の詐欺師の常套句ってくらい誰も信じないシロモノさ」


 賢者ってトラザユーヤの事かな?

 ベリアで彼の資料を検索してみたけど、該当するのは無かった。


 今度、エルフの里に行った時にでも、錬金術士のツトレイーヤ氏にベリアの葉から魔法薬を作るレシピが無いか聞いてみるか。





 後日、彼らの店を回った時に、秘蔵の品というものを色々と見せてもらう事ができた。


 中でも蟻羽の銀剣というのが、人気の品らしい。銀剣というには灰色の剣だったが、迷宮都市で作られる魔物素材の魔剣の中では一番難易度の低い品だそうだ。迷宮蟻の羽から作る物でトラザユーヤの資料の中にもあったので一度作ってみよう。


 一番期待していた魔法のスクロールは、シーメン子爵が一手に卸しているので公都以下のラインナップだった。


 面白い事に、大抵の探索者達が持っている点火棒だが、近隣の伯爵領や小国では高値で売れるらしい。クズ魔核でも作れるので迷宮都市では半人前の職人によって量産されていて安いのだが、他の領地では他の魔法道具同様に一人前の職人がちゃんとした等級の魔核で作るから高くつくのだそうだ。





 ベリアの実とは関係ないが、侯爵夫人から都市外にある実験農場の再開発を依頼された。

 先代の太守が小さな水源の傍に小麦の実験農場を作ったらしいのだが、実りが悪く放棄された場所らしい。


 ちょうど、クロとして助けた奴隷の子達の就職先を探していたので、渡りに船とばかりに、その農場開発を承諾した。


 農場跡に巣くっていた探索者崩れの盗賊達は、ポチとタマに蹂躙され犯罪奴隷として炭鉱へと連行されていった。


 土地がやせていたので、ここでは傷薬用にベリアの実、食用に豆類とトマトを栽培してもらう事にしよう。特にトマトの量産に期待している。





 ベリアの実で作る回復薬だが、ツトレイーヤ氏に現物を見せて相談したところ、さらさらとレシピを書いて渡してくれた。エルフの里では有名なレシピだそうで、当たり前過ぎてトラザユーヤも資料に残していなかったらしい。


 迷宮都市に戻って早速試作して養成所の生徒達に効果を確認してもらった。

 特別効果が高いわけでもないので、公開しようか。


 せっかくなので、レシピを書いた紙を宝箱に入れて、迷宮のあちこちに隠してみた。新米探索者たちへのちょっとしたサプライズだ。

 レシピはナンバリングして複数のピースに分けて宝箱に入れてある。


 サンプルのベリアの回復薬も一緒に入れてあるので、レシピが本物だと判るはずだ。

 念の為、レシピを1セットだけでなく6セットほど用意しておいた。


 5日後に最初の一枚が見つかってから、迷宮都市は、ちょっとしたお祭り騒ぎになった。


 もうしばらくすれば、低レベル層にも安価な回復薬が広まってくれるだろう。


 そんな事を考えながら、迷宮都市の周辺に自生するベリアを楽しそうに刈る子供達を見守った。


※6/21 割り込み投稿しました。

 話の順番的に矛盾するので、最後の方のピザやオムライスを振舞う話を削りました。

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― 新着の感想 ―
家庭菜園ならともかく、農業って全然スローライフじゃない気がする 農閑期があるからブラックよりマシなのか?
[一言] 良いか悪いかは別として発展途上国では幼い子供も大事な労働力として使われる、普通は締め出されて終わり・・・なわけがない。
[一言] ベリアは、旨味のある値段だと大人、資本がある商人か貴族に横取りされ子供は逐われかねないですね? 再開発に絡め、侯爵夫人と言う大樹の陰に寄せるか、貧困層でないと旨味がない程度に流通価格を抑え…
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