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デスマーチからはじまる異世界狂想曲( web版 )  作者: 愛七ひろ
第十章

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10-16.ギルドの騒動

※9/29 一部修正。

※10/12 誤字修正しました。


 サトゥーです。昔からある迷宮探索ゲームだと、酒場で仲間を集めて、神殿で復活をしたり呪いを解いたり、商店でぼったくられたりしたモノです。





 階下で待っていたアリサ達に、事の顛末を話して赤鉄証を渡す。


「やふー! ギルド長のお墨付きで昇格だー!」

「おかしらつき~?」

「目が怖いのです!」


 アリサが大げさに喜んで、片腕を天に突き上げてジャンプしている。

 タマ、ちょっと違う。ポチは未だに魚の頭が付いていると、目が見つめてくると言って怖がる。2人もアリサの真似をしてジャンプして、天井に頭をぶつけそうになっていた。自分の身体能力を把握しないと危ないよ?


 他のメンバーも控えめな様子だが喜んでいるようだ。


「けっ、探索者ギルドは、いつからガキの遊び場になったんだ?」


 ちょっと騒がしかったかな?

 詫びを入れようと振り返ったのだが、すぐにその気が無くなった。


 男の足が、ギルドの入り口付近に集まっていた子供達を、蹴散らしていたからだ。彼が言っていたのは、オレ達じゃなく入り口を塞いでいた運搬人の子供達の事だったようだ。この男は見覚えがある。たしか、蟻から逃げていた男探索者パーティーのリーダーだ。


 蹴られた子供達は、大怪我こそ負っていないものの動く事もできずに、ギルドの壁際で小さくなっている。前の虎人族といい、大の大人が子供を足蹴にするなんて。


「幼生体への暴力は危険が禁止だと告げます。言語での警告を推奨します」

「なんだテメーは? ほう、えらい別嬪だな。仕事を間違えたんじゃねぇか? 探索者より娼婦の方が稼げるぜ?」


 男の手が無造作にナナに伸びる。

 ナナの普段着ている鎧は、翠絹を裏地に、中敷きにクジラの皮を使い、表面には鎧井守の革を使っている。見た目は柔らかそうな革鎧に見えるし、実際に柔らかいのだが、魔力を通すと鎧井守の革の部分が硬化する。


 名前に「鎧」と付くほどの魔物の革だ。普通の兵士達が使う剣や槍さえ弾き返す。


 そこに胸を掴もうと無防備に指を伸ばしたらどうなるか。

 その答えは、この男が身を以って教えてくれた。


「ゆ、指が、俺様の指があああ」


 男は魂消るような悲鳴を上げて、床に蹲った。


「このアマあ、ベッソに何しやがる」

「ベッソの仇だ!」

「否定。彼は自滅しただけと事実を報告します」


 男達は、蹲っている男の仲間のようだ。2人とも顔が赤い。昼間から酒を飲んでいるようだ。

 その2人は、ありえない事に、街中どころか探索者ギルドの中で、剣を抜いた。


 さて、怪我人が出る前に捕縛するか。

 オレが一歩踏み出すより早く、リザが彼らの横合いから槍の一撃を男の横腹に叩き込む。もちろん、穂先ではなく石突きの方で軽くだ。


 リザは軽く突いたつもりのようだが、ポコンと軽い音をあげて魔物の甲殻でつくったらしき鎧に穴を開けて、そのままわき腹を痛打したようだ。突かれた男は悶絶し、その向こう側にいた男もバランスを崩して地面に転がった。


『おい、あいつらって確か蟻甲殻の胴鎧だよな?』

『ああ、あんなにあっさり壊れるなんて……』


 ギャラリーが何か言っているが、コン少年の仲間に作った甲殻の胸当てと比較しても、遥かに脆いから壊れても仕方ないと思う。


 突き指をしていたベッソが、反対側の手で地面に転がっていた仲間の剣を拾って、ルルに狙いを付けて襲い掛かった。


 オレは滑るように接近し排除しようとしたのだが、結果的に意味がなかった。ルルは、難なくベッソの剣を避け、そのまま地面に組み伏せてしまった。倍近いレベル差と護身スキルがあるせいか、組み伏せられたベッソの抵抗はまるで効果がない。


『メイドさん強ぇえ』

『今の動き見えたか?』

『ベッソ達って、前に酒場で3倍の数の太守の兵隊と殴り合って、勝ってなかったか?』

『メイドさんが、あんなに強いって事はあのチビたちも強かったりして……』


 残る1人も、素手のポチとタマに負けて地面に這いつくばっている。


『チビども強すぎだろ?』

『噂の迷宮門を軽々と開けた獣人の子供って、コイツらじゃ?』

『って事は、あっちの華奢な子供2人も強いのか?』

『ありえるぜ……』


 ギャラリー煩い。


「おい、あまりホールで騒ぐと、ギルドの地下牢に放り込むぞおおお~?!」


 ギルド職員と一緒に奥から出てきた、体格のいい重装備の戦士がオレ達に注意してきた。語尾がおかしい。


 どこかで見た顔だと記憶を手繰って思い出した。前にグルリアン市で魔族に殴られてダウンしていた大盾の探索者だ。


『大盾のジェルだ』

『魔族と戦って生き延びたらしいぜ?』

『さすが鉄壁のジェルだな』


 彼はオレの前に駆け寄って問いかけた。


「失礼ですが、ペンドラゴン卿ではありませんか?」

「はい、たしかグルリアン市でお会いしましたね」


 相手はオレが覚えているのが意外だったようだ。


「ペンドラゴン卿が加勢して下さったお陰で、こうして生き延びていますよ」

「私の仲間達が頑張ってくれたお陰ですよ」


 彼はオレに礼を言いながらもキョロキョロと誰かを探しているようだ。


「ジェ、ジェルのアニキ」


 足元から聞こえるベッソの声で、こいつの存在を思い出した。ルルに彼を放してやるように身振りで指示する。


「ああ、ペンドラゴン卿に絡んでいた命知らずは、オマエらだったのか」


 ジェルは、縋り寄るベッソを素気無くあしらう。なかなかの温度差だ。


「いいか? みんなもよく聴け! この人達は、遠い公爵領の街に現れた魔族を倒すほどの手練(てだれ)だ。しかも! ただ倒しただけじゃない。完勝だ! 傷一つ負うことなく倒して退けたんだ」


 彼はギャラリーに熱くいかにオレ達が強かったか語る。特にポチとタマの2人が安全圏に連れていってくれたのを覚えていたらしく、2人に命の恩人だとお礼を言っていた。


「時にペンドラゴン卿。あの時に素手で戦っていた麗しの女神は、今日はご一緒ではないのですか?」


 あの時戦っていた素手の女性といえば、カリナ嬢しかいない。さっきから、彼が探していたのはカリナ嬢だろう。


「ええ、彼女は領地へ帰りましたから」

「領地ですか?」

「ええ、彼女はムーノ男爵の次女カリナ様です」


 その後もジェルにカリナ嬢の話を色々聞かれる事になった。ついでにムーノ男爵領では、領軍の兵士や騎士が不足していると吹き込んでおく。彼が仕官するとは思えないが、この話を聞いた探索者がその気になってくれるかもしれないからね。





 ベッソ達3人は、ギルドホールで抜刀した罪で、3日ほどギルドの地下牢で反省させられるそうで、ジェルに連行されていった。リザも槍を使ったが、槍の穂先ではなく石突だった事から不問になった。


 さきほど蹴散らされた子供達は、痣ができているようだったが、職員さんに注意される前にギルドの外に移動していた。


「あのカリナが女神って、あのマッチョ頭悪いんじゃない?」

「ん」

「かりな、強い~?」

「ぴょんぴょん身軽なのです!」


 アリサとミーアのカリナ嬢への評価が低い。ポチとタマが擁護しようとしていたが、方向性が間違っていたので、あまり擁護になっていなかった。





 せっかくギルドまで来たので、施設内を見学していく事にした。

 先に探検していたアリサ達に先導されて見学してまわる。


 まずは、ギルドと契約している神殿の神官さんの待機している部屋。


 ルックスで選んでいるのかと聞きたくなるほどに、美形の男女の神官がいる。解毒や解呪、麻痺解除や重傷者の治癒を有料でしてくれるらしい。助手として生活魔法使いもいる。止血したり傷口を消毒したりは彼らの仕事なのだろう。


 地図や迷宮内での情報を売る場所もあった。


 ここでは、未知の区画や知られていない区画間通路などの情報が売れるそうだ。赤鉄以上の探索者しか情報の売買はできないらしい。木や青銅の人間は、迷宮前の地図屋で情報を売買するそうだ。

 ここに来て初めて知ったが、第1区画とその隣接区画の地図は、この部屋の壁に掲示してあった。今も新米探索者らしき男性が、一生懸命に描き写している。


 探索者向けの道具屋もあった。


 保存食や寝袋、包帯などの応急処置グッズ、松明や魔物避けの粉、閃光玉や煙玉、ロープや細い草紐なんかが売っている。珍しいところでは、小さな金属板や鏡なんかが売っていた。

 何に使うのか不思議だったのだが、金属板は警報の鳴子、鏡は物陰から敵の位置を確認したりするのに使うらしい。

 この店は品質が良いらしいのだが、他の個人経営の店より高いそうなので、ここで買うのは裕福な貴族出身の探索者くらいなのだそうだ。


 もちろん、探索者向けの薬や魔法薬なんかを扱う薬局もある。

 そして、その薬局から口論らしきモノが聞こえてきた。


※ルルが組み伏せるシーンなどの順番が変だったので修正しました。どうも最終稿を寝ぼけて古いので上書きしてしまったようです。申し訳ありません。

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