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デスマーチからはじまる異世界狂想曲 作者:愛七ひろ
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9-9.漁夫の利

※8/18 誤字修正しました。
8/18 一部加筆しました。
 サトゥーです。土用の丑の日に蒲焼や冬至にカボチャを食べるとか、普段、食べないメニューを食べる機会ができていいですよね。もっとも、バレンタインのチョコは賛否両論ですが……。





 森の上空から現れたのは、翼竜(ワイバーン)だ。

 ヤツの狙いは、オレ達では無く角蛇(ホーン・スネーク)のようで、オレ達を完全に無視して、角蛇の無防備な胴に向かって急降下している。

 ナナへと執拗に攻撃を繰り返していた角蛇も、空から襲ってきた翼竜に気が付いたのか、攻撃を中断して鎌首をそちらに向ける。

「リザ、こっちはまかせろ」
「はいっ! ポチ、タマ距離を取りなさい。アリサ、ミーア! 角蛇の動きが止まっているうちに攻撃魔法を」

 久々の「短気絶(ショート・スタン)」を横合いから翼竜に叩きつける。

 まさか、オレ達から攻撃されるとは思っていなかったようで、まともに魔法を喰らって森の中に木々をなぎ倒しながら墜落して行った。
 このワイバーンだが、翼長10メートル近くもある。竜というよりは、プテラノドンとか恐竜系に近い体型じゃないだろうか。尻尾の先に毒針があるのは、ファンタジーのワイバーンらしいと言えるかもしれない。

 角蛇の方は、アリサの「空間切断ディメンジョン・カッター」で胴体を半ばまで斬られ、盛大に血を撒き散らしている。少し遅れてミーアの「水刃(ウォーター・ブレード)」が角蛇を襲ったが、そちらはレジストされたのか体表で散ってしまった。

 思わぬ大ダメージを受けた角蛇が逃げに転じようとしている。
 もちろん、リザ達が逃がすはずも無い。

「ナナ、角蛇を逃がしてはいけません」
「了解。蛇よ、カバヤキの準備は完了です!」

 ナナの微妙な挑発と、退路に配置されたアリサの結界壁のお陰で、角蛇に逃げられずにすんだようだ。アリサのつけた傷を狙って、リザの魔槍やポチとタマの小魔剣が交互に襲いかかる。
 そして、血を失い動きの鈍ってきたところを、ナナの「鋭刃(シャープ・エッジ)」で強化された剣に口内を貫かれて、角蛇は活動を停止した。

「えいえい」「おーなのです」

 角蛇の上でポチとタマが勝ち鬨を上げているが、まだ早い。

「ポチ、タマ、気を緩めてはいけません。ナナ、強化魔法を掛けなおして。アリサ、ミーア、魔力は足りていますか?」

 リザが指示をだして、次の戦いの準備を始めている。
 なかなか頼もしい。

 正面を受け持っていた、ナナとリザが少し怪我をしていたので、「軽治癒(ウォーター・ヒール)」の魔法で治してやる。





 それに少し遅れて、森の奥で怪獣のような咆哮が上がった。どうやらワイバーンが、ようやく目覚めたようだ。しかし、魔族みたいに咆哮で魔法を使うのかと警戒したが、普通に鳴き声のようだ。

 ワイバーンの優位性は飛べる事だ。

 だからヤツは、いったん飛ぶための加速の為に、湖岸まで出ると思ったんだが――

「ちょっと、あれってワイバーンだよね」
「さる~?」
「跳ねてるのです」

 ワイバーンは2本の木々を交互に蹴って駆け上がり、そのまま空へと飛翔した。木を駆け上がるときにはちゃんと手の鉤爪も使って加速の足しにしていたようだ。

 ポチ、タマ、ルルの3人にクロスボウを渡してやる。元々、対ワイバーン用の品だ。活用してやろう。

 空中で旋回して速度を溜めていたワイバーンが、高度を下げて湖の向こう側から襲ってくる。中央突破では無く、湖岸に沿って水面スレスレを滑空してくるようだ。

「ミーア、あの潅木の位置にワイバーンが来たら、『急膨張(バルーン)』でヤツを跳ね上げてやりなさい。3人はなるべく翼――そうですね右翼を狙いなさい。アリサは先ほどの切断魔法で同じく翼を。可能ならそのまま切断して構いません」

 リザから、みんなに指示が出る。
 前はアリサが指示をしていたんだが、魔法に集中しだすと指示が途切れるのでリザになったようだ。

 オレも「理力の手(マジック・ハンド)」と「自在盾フレキシブル・シールド」を準備しておく。
 いつもなら手出しをしないのだが、今回のワイバーンは33レベルと、さっきの角蛇の24レベルに比べても強敵なので、いつでもサポートできるようにしてある。

 潅木の位置まで接近したワイバーンが、突然膨張した水蒸気に姿勢を乱される。少しタイミングが遅かったようで体勢を完全に崩すところまではいかなかったようだ。

「むぅ」

 ふくれっつらのミーアの頭をポンポンと撫で叩いてやる。
 そこに遅れてアリサの「空間切断ディメンジョン・カッター」がワイバーンに叩きつけられるが、レベル差のせいなのか抵抗されたのか肩を傷つけただけで、切断までは行かなかったようだ。

 同時に放たれたポチとタマの短矢(ボルト)がワイバーンの鼻先を浅く傷つける。ルルの短矢(ボルト)は明後日の方向へ飛んでいってしまったようだ。まっすぐ向かってくるとはいっても飛行体に当てるのは難しいからね。

 これは、ちょっと格上すぎたかな?

 ナナが自分の前面に展開した「(シールド)」と自分の持つ大盾でワイバーンの突撃を受け止める。ワイバーンも頭突きではなく足から突っ込む辺り戦い慣れしているのだろう。ナナの体力ゲージが急速に減るのを見て、素早く自在盾を間に割り込ませる。ナナの回復はミーアが呪文を唱えだしたので任せよう。

 ワイバーンは、ナナを蹴って再び空に戻る。リザの突きはその足を掠めたようだが、さほどのダメージは与えられなかったようだ。飛ばされたナナは縮地で回り込んで受け止めた。柔らかさが足りない。鎧め。
 ミーアがワイバーンの追撃に参加したようなので、ナナはオレの魔法で癒しておく。

 空に戻って速度が落ちたところを狙ってクロスボウ組の矢と魔法組の攻撃魔法が襲う。ルルの矢も当たったみたいだ。横で小さくガッツポーズを取っていたので、良くやったと褒めておく。

 しかし、多少の怪我を負わせただけで、倒しきれないようだ。

 こちらが思ったよりも手ごわいと判断したのか、弱そうな個体を狙う事にしたようだ。速度を落とさないまま接近してアリサを後脚の爪で捕まえようとしてきた。ナナが挑発するが、その矛先は動かない。

 さすがに犠牲者が出そうな状況じゃ、訓練とか言ってられないだろう。縮地で、アリサの前に移動して、ワイバーンを蹴り上げる。
 頭上を飛びぬけようとしたので、素早く尻尾を掴んで湖岸に叩き付けた。

 対空戦の訓練としては十分なはずなので、素早く接近して「理力剣(マジック・ソード)」でワイバーンの首を落とす。

 理力剣は、術理魔法の盾や防護柵と同じくガラスの様に透明だ。刃の形状は、短剣サイズから刃渡り2メートルの大剣サイズまで自在に変えられる。非常に鋭利にできるが、その分薄く脆くなるので、剣スキルが無いと扱いが難しそうだ。

 この前のクジラ退治の時に困ったので、現在発注している理力剣の後期バージョンでは、最大20メートルの刃を生み出せるように改良してある。刃の強度などに無理があるので、実用性がどの程度あるかは不明だ。

 今回の戦いで、アリサとルルのレベルが上がった。ルルは新しいスキルが増えていないようだ。この間から魔法の入門書を読ませていたのだが、教育が足りなかったのか。残念だ。

「あと、1ポイント、あと1ポイントなのに~~~」

 地団駄を踏むアリサに確認したら、空間魔法のスキルを上げるのに1スキルポイント足りなかったそうだ。





 翼竜の網焼きは苦味が強すぎてイマイチだったが、角蛇の蒲焼は絶品だった。アリサのリクエストで鰻重のようにしてみたのが良かったのかもしれない。ミーアの晩御飯は、豆腐ハンバーグにしてみた。ポチとタマが葛藤に満ちた顔で、ミーアの豆腐ハンバーグと蒲焼を見比べていたが、肉の魅力に負けたらしく蒲焼と翼竜の網焼きを自棄気味に食べていた。
 翼竜の内臓は毒があるという事だったので、穴を掘って埋めておいた。

 そして食後には湖畔に作った露天風呂で汗を流した。
 やはり、満天の星の下の露天風呂はいい。

 風呂上りのアリサが、ポチ達と3人揃って氷で冷やしたフルーツ牛乳を飲んでいる。腰に手を当てて一気に呷るのは乙女としてどうかと思うが、ちゃんとバスタオルを巻いているので良しとしよう。

「ふぅ、美味しい御飯に、星空の映り込む湖畔での露天風呂! おまけに冷たいフルーツ牛乳ときたら、あとは決まってるわよね!」

 ミーアの髪を拭いているオレを振り返りながら、アリサが言う。
 ぐへへ、と笑うのは止めてくれ。身の危険を感じる。10年後とかなら、大歓迎なんだけどね。

「ほい、ミーア。終わったよ」
「ん」

 生活魔法の「乾燥(ドライ)」を使った方が早いと思うのだが、ミーアは首をふるふると振って嫌がるので、未だにタオルで拭いてやっている。

 無視されてご機嫌ナナメなアリサが、酔っ払いのように背中にのしかかってくだを巻いて来たので、抱え上げて寝床まで運んで転がしてやった。

 明日の山脈越えルートは、翼竜の群生地帯がある峰から離れたコースを進む予定だ。山頂付近での気流が心配なので、一度、天駆で見に行ってみようと思う。

 何事も無ければ飛行船、無理なら気球を畳んで「理力の手(マジック・ハンド)」で運んでいこう。

 山脈の向こうのボルエナンの森に思いを馳せながら、オレは一人、野営地を出発した。
※ワイバーンに反撃する所でルルの攻撃が命中したシーンをこっそり加筆しました。

※作中では、プテラノドンの事を恐竜と言っていますが、「厳密に言うと恐竜ではない」そうなので注意してください。間違って覚えないでね。

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