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Tear   作者: 隻原 伽藍
第一章 傷『SCAR』
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第四節 夜

咲夜は、また来た道を戻っていた。さっきは氷のような気分になっていたが、水樹を見つけて助けた(?)時は安心した。

いや、これは不思議ではない。むしろ、そのあとだ。


…久しぶりに会話が楽しく感じた。


あれ以来、他人との会話は苦痛でしかなかったし、業務のようなものだった。

だが、水樹との会話は違った。でも、会話の内容はただいつもと同じように他愛のないものを話していただけだ。最近できたケーキ屋ではこれがおいしいだとか、最近気に入っている曲はなんであるとか、今日こんなことしただとか。

なのに、すごく楽しく感じた。

訳がわからない……理解不能だ…。


そんなことを考えながら歩いていると目的地が見えてきた。それは、丘の頂上にある一つの墓だ。

「………」

禁忌を思い出すかのように立ちすくみ、身体が震え出す。水樹を助ける前に置いておいて、さっき拾った百合の花を落としそうになってしまう。

辺りの見張らしはよく町が一望できる。今日は晴れているから、星もよく見える。

そして、月は煌々(こうこう)とその墓を照らし出した。

『関原家の墓』そして、隣の石碑の一番左に刻まれた、三年前に死んだ彼女の名前…


…関原伽凛 享年14


あのまま気がつかなければ…いや話さなかったら…まだ生きていただろう。 何故?自分のせいだ。…自分が話したから…こんなことになった。

例えば、過去に遡れれば…。

そんなことを幾度となく考えた。でも、そんなことを考えようが叶わないことだ。悲しみは今も消えない。そして、心の傷は癒えないまま広がり続ける。重力で落ちてくる重石を背負わされているかのように心に重く、それでいて刺された傷のように鋭く…。

暗い心を押さえつけて、

「なんでだよ……」

一人、そう呟いた。



  ◆  ◆  ◆



朝日が窓から差し込んでくる。それは暗かった部屋を照らし出し、水樹もそれで起き上がった。

「………?」

(夜に咲夜くんにあってそれから…あぁ、そうだ。なんか明日もあえるよねっていう約束して…)

………。

…背中…大きかったなぁ…

「――ッ?!」

(何を考えているんだ、私は?!まるで…)

咲夜が好きみたいじゃないか。

頭が冴えてきて、昨日の出来事を全て思い直すと顔が赤くなるのがわかる。恥ずかしいことを言った自覚があるから、なおのことだ。

(…ほんと、次に顔会わせられないよ…)


朝のバイトは今日は休みだと言われていた。だから少しゆっくりめに朝食をとり、家を出た。今日は雲ひとつみあたらない晴天だ。そろそろ暑さも引き始める頃だが、残暑はまだまだ続きそうだ。

「おっはよー!」

と、玲音が声をかけてきた。いつもは皆一人で登校するのだが、どういった風の吹き回しだろうか。

「おはよう、どうしたの?」

と、水樹は玲音歩きながらに聞いた。玲音はやれやれ、と言うように首を横にふった。

「昨日いってたじゃん。不審者のやつ。」

なるほど、と水樹は思った。確かに昨日、先生が『最近、不審者が目撃されてるから気を付けろ』とかなんとか。朝も基本、二人一組ツーマンセルで動けと言われたのを守っているらしい。

「あぁ、そういえば言ってたね。うん。」

「もしかして、まだ寝ぼけてるー?ならば……こうしてやるー!」

玲音が何かし始めたと思ったら、左脇の辺りにくすぐったい感覚。

「くくく…あははははははは!ちょっと、こら玲音!」

水樹は鞄を持っているので身を捻る位しか避ける方法がない。左腕は完全に抱きつかれて封じられている。

「うりうりー!目よさめろー!」

と、玲音はニヤニヤしながらこちょこちょをしている。…確実にふざけている。

「ちょ、ちょっと!あははは。ほんとやめて?」

水樹がそういうと、玲音はスッと離れた。相変わらず左腕に抱きついたままではあるが、さほど問題はないだろう。

「じゃ、行こう。」

「う…わっ!?」

玲音が返事しようとしたとき、突然左腕から玲音が離れた。見ると、玲音の背中に何かくっついている。酷く見覚えのある光景を思い出して笑ってしまった。

「おはよう〜玲音ちゃーん。水樹ちゃーん」

やっぱりというべきか、玖未だった。よく、私や玲音の背中にくっついて移動しようとするのが、いつもの光景だ。まさか、こっちまで来ているとは思わなかったが。やはり、不審者のことがあってか見かけると二人以上で登校してきているようだ。

昨日のことは内緒にした方がいいだろう。多分先生も咲夜もいい顔しないだろうから。

「てか、玖未ー?そろそろ降りてくれなーい?」

と、玲音がいっても「気持ちいいなぁ……」と、玖未は聞いてない模様だ。少し玖未がうとうとしているように見えるのは気のせいであってほしい。

「玲音、そろそろ行こうよ。学校に遅れるよ?」

と、水樹はそのまま行こうと促した。だが、なんとか玖未をおろしたいらしく、「くっ……このぉ…降りろぉぉぉおおお!」と、四苦八苦している。

しょうがないので、玖未を玲音の背中から引き剥がし、自分の背中に背負った。

「み、水樹ちゃ〜ん」

「ほら、行くよ。」

抱きつこうとする玲音をいなしつつ、玖未を背負った水樹は学校の方に向かってあるきだした。普段の登校とは違いにぎやかな登校だった。


「久しぶりな感じがするな。こうやって登校するのは。」

声を出して言ってみる。ただ単に気まぐれだった。咲夜はそろそろ学校に行けると言われたことにして今日からまた登校するのだ。『明日会えるよね?』そう言われたこともあって安易に学校を休みたくない。

いつもより早めに出てはいるがあまりゆっくりしていると遅れるのも事実だ。

そして、いつも通りの通学路を見渡すが咲夜は生徒達の様子がおかしいことに気がついた。昔あった小学校の集団登校のように二人以上で登校している。いつもは一人で登校する奴も一律にそうだった。

(昨日の不審者の件か…?にしてはまわるのが早いな。どうしたんだ?)

疑問をもった咲夜は誰かに聞いてみようとしたが、ほとんど話した事がない連中に話を聞くのもなぜか聞きづらい。

「…あの、先輩」

咲夜が振り向くとそこには同じ学校の女子の後輩(名前は知らない)が声をかけてきていた。少し顔が赤い気がするが素なんだろう。

「なんだ?」

と、咲夜は素っ気なくこたえた。あまり人と喋る気分ではないのだが、あまり酷いとよくない。まぁ、『一緒に学校に行きませんか?』とか辺りだろう。

「一緒に登校しませんか?」

ほとんど予想通りに言ったことに咲夜は苦笑した。

(あまり気乗りしないが知らなかったじゃすまないだろうし、この言葉にのっておくか。)

と、咲夜は考え「あぁ。わかった。」と言った。後輩――名前は『一条歩美いちじょうあゆみ』らしい――は、嬉しそうに頷いて一緒に歩いて行った。


次の投稿はまた不定期なります。すみません。

二次創作のほうもほとんどできてないですね……

結構忙しいのでいろいろとあきらめようかどうか迷ってます。読んでくれてる人もいますが、どうしようか……


まあ、この辺で。またあおう。

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