第二節 作戦
不定期な形になり、申し訳ない…
読む人増えてるって嬉しいね
その日の放課後のこと…私、永原水樹は会議となったこの場をゆっくりと傍観していた。バイトは5人で行うことになっている。朝は約一時間程度、夕は3時間程度やることになった。そこまではいいのだが、地域に問題があった。
「いやぁ……本当にまさかだねー」
一真がぐちをこぼすように呟いた。朝の新聞配達…それに今日聞いた咲夜の家の情報…それによると、新聞配達に咲夜の家によらなければならない。しかも、毎日。
「これはちょっと不味いな…」
私が静かに聞いているなか、一真が呟いた。これは計画がばれてしまう可能性が高くなる。だが、これ以上高額なバイトになれば、深夜や朝から、または一日中や、遠出になってしまう。
そしてなにより、時間が足りなくなってしまう。
「仕方ない、やるしかないだろう。」
そう言う宮井は何か考えているようだった。
その日の帰り道…一人であるいていく。暗くはないものの、もう夕日が指してくるころだ。明日から忙しくなりそうだ。水樹はそう思って、がんばるぞー!っとでも言うように無意識に腕を上にあげた。
翌日……
バイト初日。校則違反だが、友人のためだ。
「さて……と」
まだ、ほとんどの人が起きていないであろう時間帯に動き出す。帽子を目深にかぶり、自転車をこぎだした。朝焼けが照りはえるいい朝だ。
新聞配達はわりと楽に終わる。何故なら、基本的にみんなまだ起きていない時間帯だからだ。いつも、これをやっている人の気持ちがわかるようだ。
「うぅ…寒っ」
少し冷え込んで来ている。薄着で来るんじゃなかった。水樹はそう思った。そのとき、前方の少し遠くから足音が聞こえてきた。よく目を凝らすが、少し朝もやで見にくい。だが、自分の学校のジャージ…しかも、男のものであるようだった。
うちの学校の男子体操服と女子体操服は色が少しだけ違い、男子は青で女子は少し薄い青といった感じだ。
走ってきた男子は運動部とかの朝練でも自主トレでもなかった。
その人は、咲夜だった。
早朝走っているとは思わなかった。すれ違ったが声はかけられなかった。元々あまりしゃべらない方だから、そこまできにすることでもない。だが、なぜやっているのかが、気になった。
運動部に入ってるわけでもないし、過去にそうだったと言う話もきかない。
そもそも、咲夜自身の口から過去の話を聴いたことがあったか?
……………。
ない。少しも、耳に挟んだことすらない。
何があったんだろうか……?
そんなことを悶々と考えながら、淡々と仕事をこなしていった。
終えてからサッとシャワーを浴びる。朝に浴びるとたまに眠くなってしまうのだが、少し汗をかいたので浴びることにする。
考えるのはやはり咲夜のことだった。
「何でだろ…」
口の中で反芻する。答えがわからないまま、次の疑問。また、次の疑問…それの繰り返しだった。
簡単に終えて朝食を食べ、家を出た。
雲ひとつない晴れ模様だったが、あまりきれいには見えなかった。心のもちようで景色を見た感想は変わるのだなぁ…と、水樹は思った。
「ふーん……なるほど。じゃあ、朝はあまり入れ替わると不味いな……」
と、水樹から話されたことはある種の意外性を持っていた。咲夜自身は、まだ学校を休んでいる。インフルエンザだと担任から聞いた。それが、朝に走っていたとは少しだが信じがたいことだった。今は昼休みで、屋上に集まりみんなでお弁当を食べながら会議をしていた。
「どうしてさー?私くらいなら変われそうな気がするけど?」
と、玲音が手をあげて先生に質問するような態度をとった。まぁ、ふざけていることは全員が百も承知だ。
「そもそも、お前朝大丈夫なのかよ?」
水樹がけしかけると「うっ……」と、言葉に詰まって視線をそらした。玲音はいつも遅刻はしないものの、遅刻ギリギリに登校してくる。朝に弱いからだと、みんなに言っていたのを玖美は思い出した。
「私は体格が違うから駄目だし、荒谷くんとか宮井くんとかは論外だもんね…」
と自分を見下ろし、そして宮井と荒谷を見て、玖美は話した。
…余談ではあるが、玖美は『チビ』等の言葉に過剰に反応し、怒ることがある。怒ると異常なほどに性格が変わってしまうので、『玖美を怒らせない』は先生の中ですら暗黙の了解であった。たまに宮井がわざと怒らせたりするが、わりと遊んでいるだけかもしれない。
「そうだねぇ…まぁ、朝は水樹ちゃんに任せっきりかな。代わりに夜は来なくても大丈夫だよ。」
と、宮井がいつも通りのニコニコ顔で言った。なんでも高額のバイトを見つけたのだが、器用な人と料理がうまい人でなければならないらしい。
水樹は器用でもないし、料理もそんなにうまくないからなぁ…と、荒谷は思った。
かくいう自分はに、物腰が丁寧なことがあって執事喫茶のバイトをよくやらせてもらっている。そこに、また来てほしいと頼まれたから、ちょうどいいのかもしれない。
「よし。んじゃ、これで日程は決まったな。頑張るぞー」
宮井が持ち前の明るさで皆を励ますかのように言った。
◆ ◆ ◆
LINE トーク
cross shadow「余計なことをしたな。」
零時零分「あなたは無理しすぎです。もう少し休まないといけません。」
cross shadow「オレはそんなのじゃ晴れない。そして、あんたは関係の薄い立場の人間だろ。首を突っ込まれる理由はない」
零時零分「そうですね。ですが、苦しんでいるなら助けを求めたって…」
cross shadow「それで失敗し続けたオレにそんなことをいうのか?」
零時零分「……すいません。そろそろ仕事に戻ります。少しでも休んでいなさい。」
cross shadow「へいへい…」
ひな「何でだろう…」
ライム「どったの?急に?」
カルマ「そーそー。どしたの?」
ひな「ううん。なんでもない。」
ライム「また、お兄ちゃんか。」
カルマ「仕方ないよね。頑張りなさいな。応援するよ?」
道化師「そーそー。頑張ればなんとかなるさ。」
ひな「ありがとう、ございます。」
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◆ ◆ ◆
部屋にはキーボードを打つ音だけが響いている。
「………」
咲夜は久しぶりに小説を書いているのだ。久しぶりといっても、半月ほど前にある程度完成させて後はラストだけだった。それがどうしても、かけない。
「………クソッ…」
とりあえず作ったが、どうしてもピンと来ない。最後の最後で行き詰まっていた。曲作りも小説も行き詰まっていた。
「…歌ってみた作ってみるか…」
多趣味がこうじていろいろとやっている。わりと有名な方だ。流石にじ○さんや、owa○さんなんかとは比べるまでもなく下ではあるが。
そこで、自分で作った歌を自分で歌っていなかったことに気づいた。気恥ずかしい気がするが、やってみようと、咲夜は思った。
「君がいた、世界は今も、心のなかで生きてる…」
こうして考えると、歌うのも久しぶりな気がする。最初に作った曲は好評でミリオンにはいかなかったものの、わりとよかったと思う。
今歌っているのもそれだ。音楽を明るく、詞を少し暗めに設定したものだ。
「最後まで……」
歌い終わるのもはやい、二分弱位の曲だ。
「後はっと…」
書いた絵を並べる。だが、PVのときとは違う絵を使う。後はアップロードするだけなのだが、手が止まった。そういえば、ニコニコとかには学校のやつらもいたはずだ。しかも、俺の作った曲を流している放送部もいた。
「………」
歌ってみたのファイルを保存して、小説を書く作業に戻る。一向に進む気配のないものにイライラしながら書き続ける。
それを見ている者がいた。
咲夜の妹である、日坂成美である。兄がああなったときからずっと傍観者だったことを後悔している。
だが、私ではなにもできない。
私では、お兄ちゃんを慰めることも、話を聞くことも……なにもできない。
自分の無力さを感じながら、無意識に時計を見た。
……18:14。
そろそろ、夕飯の仕度をしないといけない。
成美は、その場からはなれ、台所に向かう。心のなかで何度も何度も…兄を説得する文句をかんがえながら。
次の投稿の話ですが、いつも通り不定期なことはかわりないですが、少しでも早くできるように尽力しますね。
3000~5000字位づつしか書けない携帯さんをお許しくださいw