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三原色信仰の国を追われた無色の花嫁は、帝国で世界を彩る   作者: りっちょまん


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5.国境をこえて


ハッと目を覚ますと、ちょうど夜明け前だった。


慣れない馬車で座りながら寝たせいか、背中や腕も肩もバキバキで、お尻も擦れて痛かった。 けれど、あの家にいた時に感じたことのない、自由を感じた。


誰にも縛られていない、開放感のなんと素晴らしい事か。 もうあの嫌いな男と結婚しなくても済む。


しかしたった一人で生きていくことを考えると、少し怖く、ブルッと身震いした。


「きっと夜明け前の寒さのせい。」


誰にも聞こえないくらい小さな声で、自分自身にそう言い聞かせた。


ガタゴト揺られながら夜明けを眺めていると少しお腹がすき、昨晩もらったサンドイッチを食べることにした。


茶色のごわごわする粗末な紙に包まれたそれは、ライ麦の固パンに薄く切られたハムとチーズ、トマトが挟まれ、薄黄色の酸味のあるソースが塗られていた。


両手で持ってかぶりつくと、ライ麦の香ばしさが広がる。 チーズは舌の上でとろけ、ハムからは甘みのある脂が広がった。


冷え切った公爵家で食べたスープよりずっと美味しく、新しい人生の幕開けの味がした。


しばらくすると、遠くに関所が見えてきた。 寝ていた人達もバラバラと起きだし、興奮気味に隣国について話を始めた。


「ルナちゃん、あれが帝国の関所だよ。白いあの石は、セレニータ石って言って、帝国でしかとれない貴重な石なのよ。」


「そうなのですね。あんなに白い石は初めて見ました。」


アンさんとまたおしゃべりに興じていると、関所はグングン近づいてくる。


「やぁ、ジャン。今日も盛況だねぇ。今日も十二人で間違いないか。」


「よう旦那、いつも通りさ。さ、数えてくれ。」


関所を通る際に、御者と顔なじみらしい騎士が進み出てきた。 いつものことなのだろう、軽く挨拶をして、乗車人数を数えるらしい。


「一、二、・・・十二、よし、OKだ。さぁ通ってくれ。」


「へい、旦那。ありがとうございます。また帰りも乗せて帰りますんで。よろしく頼みます。」


気づかれてはならないと顔を下に向け、身を小さくしていたが、思っていたよりすんなり通ることができた。


知らないうちに拳を握っていたようで、掌に爪の跡がついていた。 ヒリヒリとした痛みが残る。


ホッとして思わず顔を上げ、幌の隙間から外を見ようと身じろぎした瞬間、先ほどの騎士とバッチリと目があってしまった。


眠たげな顔をしていた騎士はハッと目を見開き、信じられないものを見たかのように、ポカンとしている。


しまった!!!


慌てて顔を隠し、ゆっくり十数えてから、もう一度騎士のほうを見てみると、もうその騎士はどこかへ走り去ってしまっていた。


(——もしかして色なしの瞳で驚かせたかしら、ごめんなさい。騎士様。)


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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