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三原色信仰の国を追われた無色の花嫁は、帝国で世界を彩る   作者: りっちょまん


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28.お茶会の終わりに這いよる影

「メイさん、今日はありがとうございました。こんなに早く遊びに来れるとは思っていなかったので、楽しかったです」


メイさんのお店の二階が自宅になっており、お店と違ってシンプルでかわいらしい、一人暮らしサイズのお家だった。

ほんのり薬草と鉱物の匂いがし、落ち着く空間だった。


お茶会の間は、護衛の二人は別室で、私が持参したお茶とクッキーで寛いでいたようだ。

昼過ぎに着いたのに、夢中で話をするうちに、とっぷりと日が暮れてしまった。


(——これじゃ晩餐に遅刻しちゃうかも)


とは言え、あらかじめ予定は伝えてあるし、ベルナールもコスタンツァも何も言わないだろう。

言われてもちょっとしたお小言で、私を心配しているからこそ出る言葉だから、素直に受けとめたいと思う。


「こちらこそ、ルナちゃんとまた会えて嬉しかったわ。ありがとう。またいつでも来てね。次は、マ・クラメについてまた教えてくれない? 今日もあの時のをつけてるのね。かわいいわ」


「ありがとうございます。もちろん、いいですよ。帰ったら、予定を確認してまたお手紙書きますね。新しいデザインも思いついたので、また作りながらおしゃべりしましょう」


「ええ、私はいつでも大丈夫だから! 楽しみにしているわ」


お店の前で大きく手をふるメイさんと別れ、少し離れたところに停めてある馬車へ歩いて行った。


いつもなら後ろから護衛の二人の足音や、剣の鞘が擦れる音がするのに、今日はしない。


おかしいと思い、馬車に走り寄った時だった。

ここに来るときにはジョージが御者だったのに、知らない人間が乗っていた。


夜とは言え、月明かりがあるのに、フードを被っているせいか、顔が見えなくて誰なのかわからない。


「貴方はだれ? ジョージはどこなの? ライト卿とハルト卿は? みんなをどこにやったの?」


いつもなら何も言わずとも後ろに控えてくれる二人がいない。


レオナルド殿下から、護衛騎士からは片時も離れるな、と言われていたのに。

うっかり離れてしまい、不安がよぎり、後ろを振り返った時だった。


「ルナリス様、お逃げ下さい!!」


額から血を流したハルト卿が駆けてきた。

その後ろから、見覚えのある家門をつけた騎士たちがハルト卿を追いかけてこちらに向かっている。


「ハルト卿!」


血が流れている、その姿をみつけた時、心臓がドクンと大きく跳ねた。


ハルト卿のほうへ駈け出そうとしたが、見知らぬ御者に後ろから羽交い絞めにされ、口に布を押し当てられた。

鼻をつくツンとした匂いで喉が痛い。


吸い込んではいけないと思うけれど、


「んんん、んんー!!」


なんとか男の腕から逃れようともがく内に、布に染み込んでいた薬を大きく吸い込んでしまい、ゆっくりと意識が遠のいていく……。


ハルト卿も地面に押さえ付けられ、身動きが取れなくなってしまった。


(——レオナルド殿下、ハルト卿、ライト卿……メイさん……誰かたす……けて)


必死に抵抗して目を開けていたけれど、抗いようのない眠気に襲われ、視界が次第ににじんでいく。

知らないうちに、涙が溢れていた。

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