27.気分転換のお茶会と、自己評価が低すぎる乙女
メイさんとのお茶会の日は、あっという間にやってきた。
お茶会、というたいそうな名前はついているものの、要は友達の家でお茶をのみ、お菓子を食べ、楽しくおしゃべりするだけのもの。貴族が開催するそれとは、全くの別物だ。
「今日はよろしくお願いします。ご迷惑をおかけしないようにいたします。お二人にもクッキーとお茶は用意しましたので、お待ちの間、召し上がってくださいね」
今日の護衛騎士はグレン卿の部下の、ライト卿とハルト卿だ。
何組か交代で護衛騎士がついてくれているが、メインはこの二人になりつつある。
二人とも気さくな人柄で、私が気後れしたり臆したりしないのを見たグレン卿が、気遣ってくれたのだと思う。
「いつもありがとうございます。ラントン様。あとで頂戴します」
顔をほころばせた二人だけれど、任務中には決して何も口にしないし、お手洗いに行かないのも知っている。
適当な理由をつけて休憩に誘ったり、買い物に行った先で口実をつけたりしてから、ようやく態度を軟化させてくれたのだ。
(——私のためとはいえ、外部に無色の乙女のことが知られていない今、私なんかを狙うような人はいないでしょうし、そこまで厳しくしなくてもいいのではないかしら)
レオナルド殿下に、自己評価が低いと言われた後も、やはり分相応なのでは……という気持ちは頭の片隅から消えなかった。
なぜかと言えば、レオナルド殿下と共に力のコントロールや天気の操作などを試しているものの、思ったような成果がみられないからだ。
日光を遮ってみようとごく狭い範囲で試してみても、空が曇るどころか、かえって燦々と光が降り注ぐ有様で。
日が経つうちに「やっぱり私は無色の乙女の紛い物なんじゃ」という気持ちが、どんどん膨れ上がっていった。
顔に出さないように気をつけていたつもりだけれど、レオナルド殿下が私の気落ちに気づいてくれたらしく。メイさんとのお茶会がセッティングされ、今日を迎えた。
「そんなに焦らず、心に余裕をもって。ルナリス嬢は十分がんばっているんだから。ゆっくりでいいんだよ」
レオナルド殿下がそう慰めてくれるけれど、言われれば言われるだけ焦り、惨めな気持ちになった。
(——お優しいから慰めてくださるけれど、そのうち呆れられてしまうかも。嫌われてしまうかも。人違いだったと言われたら……立ち直れる気がしないの。だって私は……)
ハッと、今思い浮かんだ感情をかき消すように頭を振った。
そんな私をみていたライト卿とハルト卿は、不思議な顔でこちらを見ていて、恥ずかしくて顔から火が出そうだった。
「ルナリス嬢、今から出発だね。間に合って良かったよ」
グレン卿を伴ったレオナルド殿下が、見送りに来てくれたのだという。
「わざわざありがとうございます。帰ったら、また練習しますから」
「そんな事は考えず、楽しんでおいで。さ、ライト卿、ハルト卿。安全に気を付けて、無事に行ってくるように」
乗り込んだ馬車の扉を手ずから閉めてくれた後、レオナルド殿下が護衛騎士の二人になにやら囁いていた。
扉越しでよく聞こえなかったけれど、二人の顔がちょっと青くなり、キリリと引き締まったところを見ると、何かのお小言だったのかも。
(帰ったら、二人は何も悪くないとレオナルド殿下に申し上げなくては。二人がかわいそうだわ)




