26.薬草の目利きと、殿下の過保護
メイさんに、紫水晶や鱗片雲母、白磁石などの鉱物や、ヌマハッカ、ミヤマビロード、カバイロクサの薬草の見分け方を教わった。
鉱物によっては混ざりものがないほうがよかったり、薬草によっては色が薄いほうがいい、濃いほうがいい、チクチクがあるほうがいい、とか、色々。
染料になる虫については、なかなか一回では教えられないそうで、また次回ということになった。
先日、私が思いっきり使い込んでしまった分を買い付けして、今日は大満足だ。
久しぶりにエストレラ分院兼研究所を出て、気持ちがよかった。
「ルナちゃん、今日はもうこれで帰っちゃうの? もうこれで今日はおしまい?」
「ええ、その予定です。セシル先輩、もう帰宅だけですよね?」
「そだよー。早く帰らないと、教授にしかられるよ?」
「だそうです、メイさん」
「えーそうなの? じゃあ次は教授に許可とって、お茶しましょ。ダメって言ったら、金輪際、原料は卸さないって言ってちょうだい。そうすれば絶対いいって言うから。あの親父。あ、そうそう、次はコイツを連れてきちゃだめよ、二人でお茶しましょ。待ってるから」
「このババア」
「ん? 何か言ったの? この小僧」
(——喧嘩するほど仲が良いというけど、この二人もそうなのかしら)
一緒にしたらすぐに口喧嘩しだす二人に苦笑しながら、研究所への帰路についた。
◇◇◇
教授の研究室を訪れると、また第一皇子殿下がいた。
教授は席を外しているようで、
「第一皇子殿下、これは失礼いたしました」
「いいよ、ラントン嬢。そうそう、それに呼び方も、レオナルドでいいから。私もルナリス嬢と呼んでもいいかな」
「え、お名前をお呼びするのは恐れ多いですが‥‥。承知いたしました、レオナルド殿下」
「まだまだ固いなぁ。でも受け入れてくれてありがとう、ルナリス嬢」
「今日は原料の買い付けにいったそうだね。どうだったかな」
「そうですね……」
今日の報告をし、メイさんの話をした際、今後は好きなときに好きなだけ滞在してよい、と許可をもらった。
「第一皇子殿下、そんな許可を勝手に出されちゃ困りますよー。もう、ルナちゃんがサボりまくったらどうするんですか」
「そんなわけあるか。お前と彼女を一緒にするな」
レオナルド殿下が苛立ったようにしかりつけた。
「ルナリス嬢はこいつを気にせず、メイさんのところに行ってかまわないからね。ただし、護衛は絶対に連れて行ってね」
(——なかなか素直にはい、と言えない雰囲気……)
「あ、ありがとうございます。レオナルド殿下」
にこっと微笑む殿下に少しほっとした。
「あの、ところで今日はこちらにいらっしゃったのは何か?」
「あぁ、ルナリス嬢がどうしているかと思って見に来たんだよ。元気そうでよかった。それじゃ帰るよ。明日は朝からよろしくね」
手をひらひらさせて王城へと帰っていった。
(——え、私に会いに来ただけなの? それってなんだか……)
頬が赤くなる気がして、慌てて両手で隠すと、セシル先輩がその様子をニヤニヤしながら見ていた。




