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三原色信仰の国を追われた無色の花嫁は、帝国で世界を彩る   作者: りっちょまん


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4.夜行馬車を探して


執事からは、今夜中に出ていくように言い渡されている。 すぐに荷物をまとめなければならない。


私はついに、華やかに飾られたパーティーの主人公にはなれなかった。


「今からどこへ行こうかしら。この国にはいられないし。」


大して多くもない荷物をまとめ終え、旅行鞄一つと、質素なグレーのワンピースと編み上げのショートブーツ姿になった。


メイドに頼み込んで頼み込んでようやくドレスと交換してもらった。 少しごわついていて、擦れているけれど、町に出るならこれくらいのほうがいい。


(——お金は、すこしずつ貯めていたものを持ち出えば、二か月程度はなんとかなるはずよ。)


エントランスに向かうと、フェリシーがアドリアンと腕を組んで、パーティーの会場へ歩いていく後ろ姿が見えた。


フェリシーの薄紫色のドレスは、サテン生地にオーガンジー、シルバーのチュールレースなど複数の素材を混ぜたボリューム感のあるロマンチックスタイルのドレスだった。


金糸で刺繍が施され、宝石がちりばめられたそのドレスは、遠目に見ても豪奢に見えた。


アドリアンはブルーグリーンの2ピースを着ており、瞳の色と相まって色が混ざり合い、目がチカチカして、頭がクラクラした。


これから婚約の解消と結びなおしで、ひと騒動起きるだろうけれど、私にはもう関係ない。


長く苦しんだ屋敷をこのような形で後にすることになるとは思わなかったけれど。 この屋敷を出た瞬間、かろうじてあった公爵家の庇護はなくなることになる。


(——ウェでもこれでよかったの。)


私が出た後で、ゆっくりと閉まってゆく門扉に向かって、小さく礼をした。 今日から自由の身だ。


隣国のセレニータ帝国とは、数十年前からほとんど国交断絶の状況にある。 かろうじて商人や旅行客が行き来するくらいで、国同士の交流は持っていないに等しい。


私はここに目を付けた。


隣国まで、王都から夜行馬車が出ているのだ。 これに乗って半日ほど揺られれば、お昼前には隣国のはずれの街につく。


その馬車の御者は通行証を持っているから、それに乗れば、身分確認はされずに関所を通ることができる。 本当は馬車に乗るときに、御者が身分確認するそうだが、訳アリの客ばかりで、今や暗黙の了解となっているらしい。


不確定の情報頼りの旅となる。 色のない瞳が目立たぬように、帽子を目深に被り、首元にスカーフをして、停留所まで馬車を探しに歩き出した。


「隣国行きの夜行馬車はこれでいいのかしら。」


「あと十五分で出発するよ。当分休憩はないから、ご婦人は前もって用は済ませておくんだな。もし乗るなら、金貨一枚。お、乗るのか。じゃあ、一番後ろの隅っこに座りな。金貨一枚確かに。これは乗車証明書だ。それと、これは夜食用のサンドイッチ。」


まくしたてられるように話され、うんうん、と相槌だけで乗車に成功してしまった。 すごくすごくラッキーだった。


用を足し、飲み水などを売店で購入してから馬車に戻ると、乗客は私で最後のようだった。


(——お待たせしてしまったかしら。)


大きな馬車には幌がかかっており、雨風はしのげそうだ。 荷台には向かい合うように、仕切りのないベンチのような座席があった。


真ん中は通路のようで、左右に分けられている。 ペラペラのクッションで座る場所が決められていた。乗客は全部で十二人だった。


「よろしくお願いします。」


馬車に乗る前に、繋がれた馬の鼻筋をそっとなでると、任せろと言わんばかりにうなずき、大きく嘶いた。


いざ乗ってみると、隣は四十代くらいのおば様でほっとした。


隅の席だったから、そっとスカーフから顔を出して、乗客の様子を伺ってみることにした。


親子連れ二組、夫婦らしき二人連れ、私のような訳アリらしき若者、荷物をたくさん抱えた行商人、おばさま、と揉め事は起こらないメンバーと読み、少し体の力を抜くことができた。


男性が隣だったら、と内心怯えていた。


「貴女はセレニータ帝国に何しに行くの。私は隣国にすむ姪に会いに行くのだけれど。」


馬車が出発してしばらくたった時に、隣のおば様から声をかけられた。


「あ、わたくし、わたしは、、、り、隣国で働きたいと思って家を出てきたんです。」


人に聞かれたときの理由を用意しておらず、しどろもどろになってしまった。 目が合わないように、必死でスカーフで顔を隠す。


「そう、そうなのね、何か訳アリなのだと思ったのだけれど、聞いてしまってごめんなさいね。」


丁寧に頭を下げるおばさまは、アン・ホーエンと名乗った。 茶色っぽい瞳で、カールした黒髪を軽く束ねている。


動きやすそうなブルーのワンピース姿だった。


「私は、ルナリ、いえ、ルナ・ラントレと申します。」


「まぁ、かわいい名前。ルナちゃん、と呼んでもいいかしら。姪と同じくらいの年頃だから、他人と思えなくて。」


「もちろんです。アンさん、とお呼びしますね。」


二人で話すうち、段々と隣国の政治、治安、文化や都市などを聞くことができ、とてもためになる時間を過ごすことができた。


馬車に飛び乗ってみたものの、隣国についてほぼ何も知らない状態だったから、とても助かった。


私のような訳アリはやはり人口の多い、帝都ロミアーナで働くのがよさそうに思った。


カラーリス王国と違い、瞳の色については考え方が違う、というのが私にとって一番の情報だった。


色んなことを考えるうち、一日の疲れが出たのか、ウトウトとまどろんでいった。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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