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三原色信仰の国を追われた無色の花嫁は、帝国で世界を彩る   作者: りっちょまん


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24.緑の淑女と王家の後ろ盾

緑の淑女(ダーマインヴェルデ)とはよく言ったものだわ。」


昨晩は気づかなかったけれど、壁一面に大きなステンドグラスがあった。深いエメラルドグリーンを基調とした森の光のような透け感があり、落ち着きと気品のある女性が描かれていた。背景は森と蔦模様で、女性は金色の差し色が使われ、光が差すと、緑の濃淡がゆらゆらと揺れて見える。長い髪には蔦や花が絡まり、森を守る貴婦人のよう。


大きな窓の外には、ゆるやかにカーブする石畳の小径があり、遠目に蔦が絡むアーチ型の回廊、小さな円形の噴水がある。午後になると緑の光が芝生に落ち、手入れされた自然の森が広がっていた。


(——こんなに素敵なパビリオーネ、きっとなにか目的があって立てられているはずよ。)


そうは思ってもなかなか口には出せなくて。

考え込んだまま、出勤二日目を迎えた。


「こんにちは、ラントン嬢。」


昨日に引き続き、第一皇子殿下が研究室に来られていた。教授と共に、昨日の話の続き、である。


「第一皇子殿下に、ルナ・ラントンがご挨拶申し上げます。」


つい癖でカーテシーをすると、苦い笑顔を浮かべられた。


「そういう堅苦しいのは、今日も今後も必要ないからね。覚えて。」


(——側近のグレン卿も止めないということは、受け入れていいのでしょうね)


「承知いたしました。」


こくんと頷いたのをみて満足したらしい皇子殿下は、さっそく本題に入られた。


「それで、早速昨日の話の続きだけれどね…」


この日も無色の乙女について話をし、明日以降は、第一皇子殿下と教授と共に文献を読みながら、私の能力でできることを試していくことになった。ただ、能力の高さゆえ、何か後ろ盾がないと危ないかも、と。


(——一瞬実家をと考えたけれど、あそこは、私の家じゃないし)


「いざとなれば王家が後ろ盾になるから、大丈夫。だけど、念のため、外出時は、護衛を連れて歩くように。一人で出歩くことはしないように、気を付けてもらいたい。ベルナールとコスタンツァにはよく言っておく。専属の侍女もつけるように言ってあるから。」


微笑んでサラリとおっしゃったけれど、話の内容はとても重たいものだ。


(——王家が後ろ盾?それに護衛に専属侍女。身に余りすぎるわ。)


「恐れながら、平民の身では過分の待遇で、王家の後ろ盾は…私に釣り合うような待遇とは思えず。今でも過分によくしていただいていると思うのですが…。これ以上は不釣り合いにはならないでしょうか。」


「ラントン嬢、無色の乙女は稀有な存在だよ。コントロールできなければ、国を簡単に傾けることができる恐ろしい力だ。だから、謙遜せずに受け取ってほしい。これは国を守ることでもあるが、君を守ることにも繋がるのだから。ほかに存在が知られたら、一生幽閉されて力のみ搾り取られるようなこともありうるからね。怖がらせてしまったかな。下手に隠すより真実を告げたほうが、賢い君は客観視できるのかも、と思ったのだけれど。」


それに、と皇子殿下は続けた。


「君は自分の評価が極端に低いようだから、それもゆっくり向上していこう。」


「ありがとう存じます。ただ、もし思ったような結果が出なかったり、やりすぎたと思われたときは、速やかに今の待遇は返還させていただきます。それだけは譲れませんわ。」


(——まだすべてを受け入れられないの。これくらいの抵抗はしておかなくちゃ。言われるがままに全て決められるのは、嫌だわ。)


「強情だな。だがわかったよ。さ、ラントン嬢、話は終わったから、あとはセシルに聞いて、仕事を教わっておいで。無色の乙女の訓練も大事だけれど、ここの仕事も覚えてもらわないとね」


「はい、第一皇子殿下、ガスパール教授、お時間取っていただき、ありがとうございました。」


一礼して研究室を出るとき、また二人が話し込んでいるのを目の端でチラリととらえた。けれど、首は突っ込まないほうがよさそうだ。なぜなら二人とも、とても難しい顔をしていたから。



その後は、セシル先輩について、日常業務や、日誌の付け方、溜まっている資料整理などを教わった。昨日先輩が思いついた面白い事とは何だったのか、教えてもらえずじまいだった。


(——この不思議な力の悪用方法とかじゃないといいんだけど)


一抹の不安があるけれど、そこは先輩の良識を信じたかった。


業務後の晩餐には、当たり前のように皇子殿下が参加していて、ガスパール教授が苦い顔を隠せていなかった。

私も驚いてしまったから、教授のお気持ちは分かるような気がした。


(——ちょっとやりすぎな気がするのよね。それとも、なにか別の意図が…?)


かといって直接訊ねるわけにもいかず、もやっとした気持ちが残った。

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