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三原色信仰の国を追われた無色の花嫁は、帝国で世界を彩る   作者: りっちょまん


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22.色が失われる時、その先にある黒

一国の皇子からの謝罪を受け、慌てる余り、立ち上がってしまった。


「あ、頭をお上げください、皇子殿下。このような真似をなさってはいけません。謝罪はお受けいたしますので、どうかおやめ下さいませっ!」


グレン卿も教授もセシル先輩も慌てているみたい。


「寛大な心で許してくれてありがとう、ラントン嬢」


目が合い、にこりと微笑まれ、心臓がドクンっと脈打った。


(――皇子殿下、すごく整ったきれいなお顔立ち。目の色も私に近いかも)


嫌な感じではなく、なにか別の感情が生まれたような気がしたけれど、次の会話に気を取られて霧散してしまった。


「それでその、第一皇子殿下、ラントン嬢が無色の乙女だっていうことは分かったのですが、このハンカチはつまり、その能力を使ったから、こんなに純粋無垢な青が作れた、ということなのでしょうか」


無意識にしわができるほど握りしめていたハンカチに話題が移った。


「セシル、まぁそういうことだと思うよ。その青さは尋常じゃない。それに、さっきの工房内でふわふわ漂っていた黄色の光も、もしかしたら関係があるんじゃないのかな」


ちらっと私に視線を送ってきた皇子殿下に軽く頷き、口を開いた。


「そうです。光の中から純粋な青色を抜き取って、布になじませました。何度洗濯しても落ちませんし、色あせる事のない、ピュアブルーです。それから光の事ですが、光から色を抜き取ると、あのようにふわふわと漂うのです。一定時間が経過すると自然と消えて無くなりますので、害はありません」


「ふむ。いつも黄色い光なのですかな。それとも、抜き取る色を変えると、漂う光の色も変わるのでしょうかな」


教授が、ベストについたボタンを忙しくいじりながら、声を発する。


「そうですね、赤色を抜くと、明るい水色になります。緑を抜けば、鮮やかな赤紫色になります。あとは、抜く色の組み合わせ次第で、何色にでも変えることもできます」


子どもの頃に遊んだ記憶を引っ張りだしながら、教授の質問に答える。いろいろ実験していたのが役経って嬉しい。


「ちなみに、すべての色を抜くとどうなるんじゃ?」


「黒になります。黒というと御幣がありそうですが、真っ暗になります。光がすべて失われる、ということになりますので……」


「ん? あれ、もしかして、うん、ちょっと面白いことに気づいたかもです、僕」


きふふと笑って立ち上がったセシル先輩は、サッと立ち上がると第一皇子殿下に一礼し、研究室を出て行った。


「アイツは全く。まぁ、今に始まった事じゃないか」


「申し訳ございません。皇子殿下」


「いや、いいよ。アイツに関してはもう諦めてる」


第一皇子と教授が二人とも頭に手を当てて、ハァーとため息をついた。


(――セシル先輩ってもしかしてかなり問題児なの?)


「それでね、ラントン嬢はどう思う?」


「どう? というのはええと、今後の身の振り方についてでしょうか。それとも、現状の受け入れができたか、ということでしょうか。それとも、全く別のことをお聞きになりたいとか、申し訳ございません。私の理解が及ばず」


「僕の言い方が悪かったようだね。今までの話を聞いていて、疑問に思ったこととか、はないのかな、と思ってね」


「そう、ですね。まだ私の中であまり実感が湧かないというのが、事実です。もう少しお時間をいただいて、ゆっくり自身について考えるたいと思います。無色の乙女、というのが本当なら、私にも光を操ることができるのですよね。それがまだできませんし。それにそれに」


「まぁまぁ、ラントン嬢。そんなに考え込まなくても大丈夫だよ。時間はたっぷりあるし、今日のところはこれでお開きにしよう。また明日、今後の事を話し合おう。昼前くらいにまたお邪魔するよ」


「かしこまりました。では、殿下。また明日。研究室にてお待ち申し上げます」


ボウをする教授の後ろで、カーテシーをして、殿下とグレン卿を見送った。


研究室から殿下たちの姿が消えたあと、ドッと疲れが押し寄せてきた。

一日中染色に明け暮れ、私のことを聞かされて、一国の皇子殿下と直接言葉を交わすなどして、疲労が蓄積されていたようだ。


「ガスパール教授。失礼ながら、本日の晩餐は欠席させていただいてもよろしいでしょうか。なにやら疲れてしまって。それに、ワンピースも汚してしまいましたから。せっかくご用意いただいたのに申し訳ございません」


「あぁ、構わないとも。ワシも少々疲れた。夕餉は部屋に運ばせよう。侍女に案内させるから、今日は部屋に言って休むとよい。ワシも今日は休むとしよう」


気づけば、日はとっぷりと暮れている。

侍女がいるの? と思ったけれど、お言葉に甘えて、休むことにした。


研究室から侍女に案内された自室、という名のパビリオーネに腰を抜かすほど驚くのは、今から十五分後の話。

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