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三原色信仰の国を追われた無色の花嫁は、帝国で世界を彩る   作者: りっちょまん


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21.語り継がれる伝説

 昔々あるところに、小さな心優しい女の子が住んでおりました。

 女の子の家はとても貧しくて、両親が朝から晩まで働いても、ほんの少しのパンが食卓に並ぶだけ。女の子はいつもお腹がぺこぺこに空いていました。


 ある日、女の子はお日様に祈りました。

「お日様、毎日お腹が空いてお腹が背中にくっついてしまいそうです。どうかお助けください」


 すると、どうでしょう。お日様から声が聞こえてきたのです。

「かわいそうな女の子。その願いを聞き届けましょう。私の姿が見えるように、触れるように、私をその身に宿してあげましょう。そうして、困っている人々を助けるのですよ」


 その声が聞こえた瞬間、真っ黒だった女の子の瞳は、きれいな川のせせらぎのような無色透明な瞳になっていました。


 次の日から、女の子は光を触って色を作り出したり、光から色を自在に抜いたりできるようになりました。

 女の子はボロボロだったお家を、素敵な虹色に塗りました。さらに、光も操れるようになりましたから、暗くて明かりのなかったお家に、お日様を集めて明るく照らしました。


 雨が多くて作物が育たない時には雲を割ってお日様の光を注ぎ、雨が欲しいときには、優しく光をさえぎることもできました。


 そうしているうちに、国中の噂になり、皇子様が女の子の家にやってきました。皇子様は、女の子の不思議な無色の瞳と、温かな力に心を惹かれました。

「どうか僕と結婚してくれますか?」

「はい、喜んで、皇子様」


 二人はお城で盛大な結婚式を挙げ、お日様の光に見守られながら、いつまでもいつまでも、幸せに暮らしたということです。


「これ、これは……」


(——私の事なの?)


 にわかには信じられなかった。ハッハッと呼吸が荒くなるのが自分でもわかった。


(——私は光の中から色を作れるし、抜き出せる。光を操ることもできるわ。お天気を変えるような大きいことは試したことがなかったけれど。もしかして、もしかしたら)


「突然理解してくれ、という話が無理なことはよくわかっているつもりだよ」


 皇子殿下が口を開いた。


「これは我が国の初代王妃のことを、子ども向けに書かれたものだ。この初代王妃以降、わが国では無色の瞳をもつ乙女が生まれると『無色の乙女』として、昔から大切にしてきたんだよ。しかし、五十年前ほど前、先々代の帝王の時だね」


 皇子殿下は一度言葉を切り、静かに続けた。


「せっかく生まれた無色の乙女を大切に慈しんで育てていたというのに、隣国の貴族が嬲り殺しにしてね。国同士の争いに発展したんだ。その結果、知っての通り、国同士の付き合いをまるでしていないんだ。ほら、隣国は我が国とは全然ちがう価値観を持っているだろう? 国ごとに文化が異なるんだから、その違いを受け入れないと国交など結べないしね。それで、それ以降は無色の乙女は生まれてこず、人々の記憶からも忘れられてしまったというわけさ」


 第一皇子殿下は、苦いものを食べているかのような顔をしていた。

 教授やセシル先輩、グレン卿も神妙な顔をして黙っている。


「でも、私はこの国の生まれではありません。無色の乙女とは、この国で生まれた方のことなのではないのでしょうか」


「それは僕にもわからないんだ、すまない。でも、ほかの国から迎え入れた記録も残っているから、君が例外というわけではないだろう。本来ならわが国で手厚く保護するべきところ、このような遅い出迎えとなり、僕からも謝罪させてほしい。申し訳なかった」

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