19.純粋すぎる青
窓から燦燦と降り注ぐ陽光に、そっと手を差し入れた。
温かなせせらぎに手を入れたときのような包み込まれる温もり、張りのあるサテンを触るようなパリッとした感触。刺すように冷たい雪の温度、それでいて柔らかな赤子の肌のようなしっとりした質感。
幼いころはよく光に触れて遊んでいた。
みんなできることだと思っていたけれど、私が遊んでいる姿を見た妹の嫉妬は凄まじく、あの頃から触るのを一切やめてしまった。無茶なことをやらされていた事も思い出し、ブルっと背中が寒くなった。
久しぶりの感触で、いつまでもこの不思議な感触を楽しんでいたいけれど、そうもいかない。
私の目には光が見える。何も映さないはずの無色の瞳に、無限の色が煌びやかに明滅していた。
今欲しい色は、純粋な青。
混ざりものの一切ない青は、色見本にもなかった。
「ここだわ」
差し入れた陽光の筋を指でつまむように引き抜いた。
とたん、青を失った光が黄色く瞬き、あたりを漂い始めた。
色を抜いた光は、オーロラのように、しばらくあたりをふわふわと漂う。指には、キラキラときらめく無垢な青の一筋が絡みついている。一度に抜ける量は、そう多くはない。
「きれいに抜けたわね」
ハンカチを広げて、そっと青の一筋を置き、丁寧に指で伸ばした。
少し置くと、すっと布になじみ、純粋な青色に染まった。光で染めた場合は、定着材はいらないし、洗う必要もない。
これを、ハンカチが染まるまで何度も繰り返す。
3度繰り返したところで、ハンカチが出来上がった。
混ざり気なしの光の青のハンカチは、ほかに数多のハンカチが干されている工房内でも、異質に思えた。
外では、日が傾き始めている。そろそろセシル先輩が迎えに来るころだろう。
そして、ハッと気付いた。
(——新しい色でハンカチを染めたこと、それ自体は大丈夫よ。ただ、レシピを教える、この部分はどう説明することもできないし、周りを漂うこの光の説明もできないわ。もしかしたら、とても愚かなことをしてしまったかも。また公爵家にいた時のように、利用されてしまうの?)
「ラントンさん、そろそろどう?」
ひょっこりという感じで、セシル先輩が工房内にやってきた。
「え、そのハンカチ、青すぎない? この光はなに? どういう。え?」
「セシル先輩、これはその……あの……!」
慌てふためいていると、工房の扉が開く音がし、ガスパール教授が現れた。
淡い金髪と金灰色の瞳を持つ、麗人を伴って。




