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三原色信仰の国を追われた無色の花嫁は、帝国で世界を彩る   作者: りっちょまん


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3.裏切りと手に入れた自由

十八歳の誕生日当日、夜が明ける前から、母付きの侍女達に乱暴にゆすり起こされた。


成人の日だからか、朝からお風呂に入れられ、入念なマッサージと、髪の手入れをされた。 こんなことは生まれて初めてで、夢かもしれない、と何度も顔をつねってしまった。


「いい香り。」


香油が肌に刷り込まれ、きめの細かい肌が整えられていく。 乱暴な手つきで引っ張られ、時折痛かった。


けれど、鏡の中の自分が魔法のように美しく作り上げられていくことが見慣れず、何度も見てしまった。


銀髪に色のない瞳、コルセットなど必要のない位細い腰に、つつましやかな胸、ほっそりとした長い手足。 少々けばけばしい化粧を施された私は、成人の日にふさわしいエンパイアラインの白いドレスに身を包み、普段の私とは似ても似つかない姿になった。


さすがに色なしとはいえ、公爵家の長女の成人の日にあたり、恥はかかない程度のギリギリのラインで、すべての用意をしたようだった。


ドレスはサイズの合わない既製品で、通常ならばブルーダイヤモンドのついた家門に受け継がれるパリュールを付けるはずだけれど、それは我慢するしかないようだった。


色ガラスのついたネックレスをグッと押し付けられたので、仕方なくそれをつけた。 ネックレスについているガラスの数は思いのほか多く、十二個ついていた。


(——遠目から見たらガラスだって気づかれないかもしれないわ。)


成人の儀が始まるまでは、控室にいなければいけない。 そろそろアドリアンが来る頃なのに、と気もそぞろになっていると、少しだけ開いた扉から、かわいらしい声が耳に飛び込んできた。


「アディ様、今日もかっこいいですね。リシーはアディ様大好きです。お姉さまの婚約者なんて、おかわいそう。今日も早くお会いしたかったです。」


「あぁリシー、なんて美しい瞳だ。リシーは優しいね。私も色なしの婚約者で、陰で笑われて本当に辛いよ。あいつは勉強だけはできるから、何かにつけて鼻につく。リシーは無邪気で、本当にかわいいよね。」


心が凍る気がした。 そんな、まさか、こんなこと。


「リシーが力になって差し上げます。家同士の繋がりのためなら、リシーとの結婚でもいいじゃないですか。お父様に話せば、絶対賛成してくれます。アディ様、ダメですか。」


クスっと笑う声がする。これはどちらの声だろう。


「リシー、本当かい。リシー、なんて優しい子なんだろう、愛してるよ、アイツの不吉な瞳と違って、本当にきれいだね。もう私だけのものだ。」


「あっアディ様、ここではダメです、んんっ」


水音をさせながら二人が立ち去る瞬間、扉の隙間から、アドリアンと目が合った気がした。 彼は、薄く笑っているように見えた。


(——あぁ、これからどうしたらいいの)


身体の震えが止まらない。 両手で肩を抱いてみたけれど、なんの足しにもならなかった。


この地獄から抜け出そうとアドリアンに希望を持っていたのに、打ち砕かれてしまった。 フェリシーのお願いならば、父はなんでも聞くだろう。


「部屋から出なさい。」


少しして、執事が呼びに来た。 あぁ行きたくない。ここから出たくない。


どこに連れていかれるのかと思ったら、父の執務室だった。


「——お呼びでしょうか。」


「お前とモントローズ侯爵令息との婚約を解消することになった。そして、リシーが令息と新しく婚約することになった。」


婚約解消、それはつまり


「私が、私が色なしだからですか。」


「令息とリシーから話はすべて聞いている。月に一度の交流の場所にも現れず、遊び歩いているそうじゃないか。少しばかり勉強ができるからと、令息に対し、偉そうに小言も言っていると。」


「それは私ではありません、私はそんなことしたこともっ!」


必死に言葉を紡いだが、


「黙れ、色なしの分際で、今日まで育ててやった恩を忘れおって。お前の存在は我が家の恥だ。ずっと疎ましく思っていた。モントローズ侯爵たっての希望でしょうがなく、令息と婚約を結んだが、いい機会だ。お前なぞ出ていけ。除籍だ。だが、せめてもの情けで貴族籍だけは残しておいてやる。」


「お前なぞ、産まれてこなければよかった。私の娘はリシーだけよ。顔も見たくないわ。」


両親にそう吐き捨てられた後、反論する事も出来ず、執事に執務室から追い出されてしまった。


扉の向こうでは、お父様の声がわずかに聞こえる。


「今日のパーティ…はリシーとモ…トローズ侯…令息の婚約の…披露目に変えよう。」


愉快そうに笑う母の声が小さく聞こえた。


なんて、なんて惨めなのか。 成人の儀にも出られず、この家を追い出され、あまつさえやってもいないことで責められるなんて。


必死に息を止めて涙をこらえたけれど、とめどなく溢れてしまった。 ぐいっと手の甲で涙を拭ったけれど、拭っても拭っても頬を伝い落ちてくる。


しばらくして落ち着いた後、今後のことを冷静に考えることにした。


(——いいほうに考えるの。これから私は自由ってことよ。何をしても、どこへ行こうと自由。きっと、私らしく生きられる国を見つけられるわ。)


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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