10.涙の別れと王都の朝。いいことがありそうな予感
インフルエンザでダウンしておりました。申し訳ございません。今日から投稿再開いたします。皆様もお気をつけて。
ここまで一緒に旅をしてきたアンさんとも、ここでお別れだ。
産まれて初めて私を受け入れてくれた人。たった数日しか過ごしていないのに、私にとってとても大切な存在になってしまった。
「ルナちゃん、ここまで楽しく旅ができたのも、貴女のおかげよ。何かあったら、遠慮なく家を訪ねてきてね。はい、これ」
そう言って、アンさんのおうちの住所の書かれたメモを手渡してくれた。
「今日は、ゆっくり休んで、明日から職探しをするといいわ。さすがに夜行馬車の乗り継ぎは、体にこたえるから」
お別れするのが辛くて、泣いてしまいそう。鼻をすすっていると、そっと手を握ってくれた。
「アンさん、いろいろありがとう、ござい、ました。お世話になりました。お元気で」
涙声でようやくそれだけ伝えることができた。
小さく手を振りながら、小さくなっていくアンさんを最後まで見送った。
さて、と鼻をすすって、顔をぱしっと叩き、気合を入れた。ここからは本当に一人だ。
(——とりあえず今日の宿を探さないと)
さっきの御者が宣伝していた『薔薇の雫亭』に泊まることにし、歩きだした。
今日はもう遅いから、明日は職探しも兼ねて街も歩いてみることにした。
***
「はぁー、よく眠れた」
昨夜は、お風呂に浸かって、久しぶりにベッドで眠ることができた。
公爵家のベッドよりもカチカチなマットレスだったけれど、信じられないくらい熟睡してしまった。
(——やっぱり座りながら眠っても、思っていたより疲れていたみたい)
うーんと伸びをして、胸いっぱいに息を吸うと、すがすがしく、気持ちがよかった。
『薔薇の雫亭』という名の通り、お風呂は紅花石で作られた湯船だった。
(——あぁ、王都にいるのね)
としみじみと感じさせてくれた。リマントンの開放感ある日帰り温泉施設とは一味違ったお風呂だった。
今日はアンさんの選んでくれた、サーモンピンクのワンピースを着てみた。ちょっぴり恥ずかしいから、馬車でいただいたストールも羽織ってみることにする。
アイスブルーのふんわりしたストールを羽織ると、爽やかで華やかな装いになった。
『薔薇の雫亭』には、一週間くらい滞在することを伝えてある。
私は部屋の鍵をフロントに預けて、外に出た。
今日もよく晴れていて、柔らかな風が吹いている。
いいことがありそうな、そんな予感がした。




