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三原色信仰の国を追われた無色の花嫁は、帝国で世界を彩る   作者: りっちょまん


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1.私は「色なし」の公爵令嬢

初の連載です。

完結までプロットはできているので、 ぜひ最後までお付き合いいただけると嬉しいです!

今日も鏡に写る自分の瞳の色は変わらない。 それは当たり前のことなのだけれど、私は毎日祈っている。


私の住むこのカラーリス王国は、瞳の色に強い価値観をもっている国として、有名である。


この国では赤・青・緑、この三原色に近い瞳の色を持つものは、自身にこの上のない価値を持つことになる。神に愛されしもの、祝福を多く受けて生まれたとされ、色が薄く、濁るほどに評価が下がる。


平民などはほぼ茶色か、黒のような濁りもっているため、陰で濁色民などと蔑まれている。


今この国で最も三原色に近い瞳は、オリエンタルブルーの国王陛下の瞳である。人々は美しいと賞賛する瞳だけれど、私にはどこか冷たく見えて、少し苦手だった。


私は、この国唯一の公爵家の長女、ルナリス・ド・ロルモン。十七歳で、もう数日すると十八歳の成人の誕生日を迎える。


「ねぇ見た?あの色なしときたら、薄気味悪い。」


窓を開けていたため、部屋の外の使用人の話し声が聞こえてきた。


「公爵令嬢なのに恥ずかしいこと。屋敷の中を歩き回らないでほしいわ。私まで呪われたらどうするの。」


聞きなれているはずなのに、鋭利な刃物のように胸に深く突き刺さった。


私の瞳の色は無色。神に見放された、不吉の象徴。家の恥。濁色民よりも蔑まれる、色なしである。


こんなことを言われるのは、今に始まったことではなかった。


生まれた瞬間から人の価値が決まってしまうこの国で、色なしの私がここまで成長できたのは、ただ公爵令嬢だったから。


私をとりあげた産婆は、当時あまりのことに失神し、父は眩暈を起こし、母は生んだその日から泣き暮らしたらしい。


物心がついてからも、両親は私の存在を無視するように、最初からいないもののように扱った。


小さいときは両親が恋しく、大声で泣いたり、わざと気を引くために食器などを割って見たが、そんなことをすればするほど煙たがられていくのがわかった。


誕生日など、祝ってもらえるわけもない。


自室やドレス、日用品など、必要なものは最低限与えられたが、それだけだった。乳母もおらず、食事は使用人と同等、またはそれ以下のスープに形のある野菜や肉の欠片が入っているのは、運がいいほうだった。


そのうちに自分の透明な瞳が人からどのように呼ばれているのか、使用人の陰口を耳にしてからは、息をひそめて、自分の存在を消すように暮らした。


そうして、五歳の誕生日の日、妹のフェリシーが産まれた。


桃色の髪の毛、赤に近い桃色の瞳を持つ、愛くるしい妹。この日から、すべてが変わった。


お葬式のようだった屋敷に活気が戻り、妹のそばには両親の笑顔が溢れ、人の出入りが絶え間なかった。妹一人に乳母が三人も雇われ、生まれて一か月の記念日には、盛大なお披露目パーティーが催された。


大広間がリボンやキラキラした装飾で美しく飾られ、妹の瞳の色の桃色のお花が咲き乱れていたのを、今も覚えている。


色なしの私は当然はいることは許されず、使用人がバタバタしている中をコッソリ忍び込み、幼い心をときめかせていた。


お祝い当日は、メッセージカード、お手紙、大きいくまのぬいぐるみ、大きなケーキ。かつての私が欲しいと思っていたものが、ここにはあった。


いいな、私も欲しいな、と思うけれど


「私は色なし。価値なんてない。」


色があるだけでお祝いされる妹と、誕生日なのに誰にも声をかけてもらえない私。突然、ひどくみじめな気持ちになって、ぽろぽろと涙が零れ落ちた。


(——色が違うだけで、どうしてこんなに差があるの。なんて理不尽なのだろう。)


自分ではどうしようもない美の価値観の前に、なにもできなかった。


その日は、心がじくじくと傷み、なかなか寝付くことができなかった。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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