愛を知りたかった少女の話
初めて小説に挑戦しました。拙い文章ですが、是非とも読んでいただきたいです。
私は、貧民街の住人。ここでは、大人も子供も平等で、誰もが日々のご飯を得るためだけに動いている。勿論、優しい人もいるにはいる。現に、子供を育てるのはそういった優しい人だ。ただ、優しい人ほどすぐ消えていくのだけれど。そんな風にならないために、貧民街では子供でも大人を出し抜き、逆に大人は子供相手にも容赦しない。早い話が、誰もが自分本位、自分勝手。
ここの人間は、皆愛を知らない。無論、私も。
だが、
「ねぇあなた?ここまで来ておいてなんだけれども…流石に帰らない?こんな汚いとこ、長居したくないわ。」
「まぁそう言うな。一刻も早く帰りたいのは俺もそうだ…が、これが1番手っ取り早い。だろう?」
「えぇ、えぇ、そうでございますとも。足もつきませぬし、ご自分で選べますからの。」
だが、
「…………お前はイマイチ信用できんな。本当にバレ……む。おい!こいつなんてどうだ!」
「あらあらあら!そっくりじゃないの!いいわ!この子にしましょう!」
だが、
「では、コレでよろしいですかな?」
「あぁ。悪いが事後処理はよろしく頼むぞ。」
「そんな話後でいいから!早く帰りましょうよぉ!!」
「くくくっ…全くご愉快な家族だ。では、私はこれで…。」
だが、愛を知りたいと思ってしまった。願ってしまった。
「やぁキミ。急で悪いが、ついてきてくれ。なぁに悪いことはしない。ただ幸せな生活と、…愛をキミにあげるだけさ。」
そして私は、彼の手を取った。
——彼の言う愛が偽物なのだと、知りつつも。
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その後私は、彼らの車に乗って貧民街を発った。私が車に乗る時後ろに数人貧民街の人間がいたのだが、酷い顔をしていたな。絶望?羨望?嫉妬?何やら分からないが、今まで散々辛酸を舐めさせられてきたんだ。ざまぁみろ。私はお前らとは比較にならないほど幸せになるからな。
「なぁキミ。名前はあるのかい?」
急に男が聞いてきた。そっちが先に名乗れよ…と思いつつも、流石に大人しく答えた。
「……ニーナ。」
「う〜〜〜ん…ニーナか…。なるほどね。ぃよし!分かっているとは思うが、キミはこれから僕らのもとで生活する。心機一転ということで、改名だ!これからキミの名前は、ノアだ!」
「………………分かった。」
「そう不機嫌そうにしないでよ〜。いい名前だろ?で〜〜、次。年齢は?」
「たぶん、9。」
「誕生日は?」
「わかんない。」
「好きな食べ物」
「きれいな食パン。」
「なんかちょくちょく回答が重いね!?」
そんな問答を暫くしていた。うるさいやつだったが、敵意は無いのだろう。割と楽しい時間だったと思う。もうそろそろ都市に着くという頃合いで、最後の質問をされた。
「え〜〜〜ともう粗方聞いたかな…?あ、そだ。一応、一応聞いておくけどさ。性別は?」
「女。」
「「えっ。」」
は?なんだこの反応。今まで会話に入ってこなかった女の方まで急に来たし。
「いや、すまない。ちょっと驚いただけだ。」
「えぇ、そうよぉ…。あ、そろそろ着くわよ!」
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彼らの家に着くと、まず銃が数個目に入った。
………まぁ大方、男の方の趣味とかだろう。大丈夫だよね?私撃たれないよね?
「さて、キミは見たところ体が大分弱そうだ!あと汚い!と、言う事で。まずは風呂に入ってきてくれ。その間にご飯を準備しておくよ。」
「ゆっくり休んできてちょうだいね!こう見えても、料理の腕には自信があるのよぉ!」
「……ありがとう。」
……大丈夫そう。だね。ウン。
さて、その後風呂に入ってきたわけだが。デカい。暖かい。良い匂いの三拍子。生まれて初めて風呂に入ったし、贔屓目なしに見ても綺麗になりすぎてヤバかった。ヤバいわ風呂。なんかもうもはや天国だわ、天国。
そしてその後はご飯を食べにダイニングへ戻った。一目見ただけで分かる。アレめっちゃ美味いわ。絶対美味い。かつて一回だけ食べたことあるマーガリン塗りパンを遥かに上回るほど美味そう。あっ涎出ちゃった。きたな。
「お〜い、何してるんだ?来いよ〜!もう出来てるぞ〜!」
「はい。今行きます。」
席についてすぐ、我慢できずに料理を口に入れた。やはり美味しかった。美味しいし、温かくて、それになにより
「はっはっはー。沢山食えよ〜?今日はノアの歓迎会みたいなもんだしな!」
「こんなに食べてもらえると作った私も嬉しいわぁ!もっと作ろうかしら!」
彼らと一緒に食べているということが、大きいのだと思う。気づけば涙が出ていて、私はそこで気づいた。多分私はもう、彼らのことが好きなんだ。
「おいどうした!?大丈夫か!?」
「なにか苦手なものでもあったかしら?それとももうちょっと休みたかったり…?」
今だって、2人揃って私の事を心配してくれている。その気持ちが嬉しくて、むず痒くて。色々考えているうちに、口から言葉が出ていた。
「あのっ!えーと、その…。これからよろしくお願いします…。えっと、パパ、ママ…?」
そう言った直後、2人から抱きしめられた。急で驚いたが、力強く抱きしめてくれて私は愛されているのだと、私は幸せになれるのだと、実感できた。
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それから7年後。
「ノアん家はさー、いいよねほんと。」
「急にどしたん」
ショッピングしに友達と歩いていると、そんな事を言われた。
「いやさぁ〜、なんかずっと家族と仲いいじゃんね。ノアって。なんか愛されてる感強いし。あたしなんかお父さんと口聞いたの何週前よ!って感じだし。反抗期来てないとギクシャクしなくて済むからいいよねぇ〜〜。」
「あ、そーゆー話?まぁね、私とパパとママめっちゃ仲いいからね。夏休み入ったらもっかいハワイ行くし。」
「げっ自慢された。」
「ンーでもね。最近というか高校入ってくらいからちょっとギクシャクしてる?かも?」
「はいはい。あんま気を使わなくていいから。」「別にそういうわけじゃ…。」
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今日は、2人はデート!
良い年して何やってんだとは思うがデートくらいさせてやろう…。ふふふ、私はなんていい娘なのでしょう。
ま、そんなのは建前で。
「前々から気になってたんだよね〜、コレ。」
私は『アルバム』と書かれた分厚い本を手に取った。なんてシンプルなタイトル…。と思ったが奇をてらってもダサくなるだけだもんな。そう考えれば英断ですか。あれ、もう一冊あるじゃん。見たところこっちのが古いかな?じゃこっちから読みますかぁ。
「ん?私…?か?コレ……。」
その写真には昔の私たちが写っていた。それにしても、人とは変わるものですな…。写真に写ってるのと今の私じゃ大分印象が違うもんね。
など考えながら、ページをいくつか捲った。
「ん?あーこれお風呂かな。こんなのも残してるの…?ワンチャンセクハラで訴えられるんじゃない……か……。」
その写真の〝私〟には、あった。
私にあっちゃいけないものが。私…いや、女にあってはいけないものが。
「は?」
その写真に写っていた〝私〟は、男だった。
いやいや、おかしい。普通に私は女だし、兄弟がいたことなんて…、あっ。
気づいてしまった。自分の察しの良さを呪いたくなった。
「私が来る前の…パパとママの子ども…?この子が死んだから、私を拾いに来た……?」
思えば、私が高校生になるくらい…、要するに、その、言いにくいのだが胸部の主張が大きくなり始めたあたりから、2人は露骨に私と距離を置き始めた…と、思う。デートだってそうだ。私が付き添うことも多かったのに、最近は2人で行っている。高校生を気遣っているのかと思っていたけれど…。そこまで考えて、私は恐るべき可能性を思いついてしまった。
「私が女なせいで…もう愛してもらえないんじゃ…!!」
突飛な結論だったけれど、その時の私は慌てていて嫌なことから目を背けるという器用な真似が出来なかった。
「そう言えば…、子供の頃、スパイごっこで車に盗聴器と監視カメラ仕掛けてたな…。まだ生きてるのかな…?」
ただ、安心したかったんだと思う。私はまだ愛されてるって。もっともっと幸せになれるって。
ザザッ
「!!ついたっ!」
だから、車で私の話題を出して、それで話が盛り上がるだけでいい。ただ私の事を嫌っていなければ疎ましくも思っていないことが分かればそれで…。
『ところで、ノアの事なんだが。』
『あぁ…。分かってるわよ。独り立ち出来そうな物件でしょ?ちゃんと探してあるわよ。あとは本人に聞くだけね。』
『ごめんな…。貧乏くじ引かせちまって。』
「え?」
貧乏くじ?って何?まさか私?なんで?
事態を飲み込めず、事実を受け入れられず、私はもう泣きそうだった。
『いいのよ…。最初に代わりでもいいからノアを返してくれって、願ったのは私ですもの。巻き込んでしまったお詫びくらいちゃんとするわ。』
『悪い…。俺は…、もうノアと面と向かって話せねぇんだ…。アイツがどんどん、女になっていくのを見て…、俺達の息子はもういないんだって…。』
両親の口から、聞きたくないような言葉ばかり出てくる。私はそれに、弱々しい声で言い返すことしかできなかった。
「………ねぇパパ、何言ってるの?ママも…え?何行ってるの!?代わりってなに?そりゃあ私は息子じゃないけどさ、娘だよ?あなた達の娘だよ?巻き込んだって、代わりって…なんなの……!?」
『俺はもう……!息子でもないアイツを愛せないっ…!!』
泣きそうな声で、いや泣きながら父はそう言った。
泣きたいのは私も同じだった。でも泣けなかった。
ただ漠然と、あぁ私は愛を失ったのだと、その空っぽな実感だけが残った。
車のエンジン音が聞こえる。ちょうどそろそろ帰ってくるのだろうか。
ガチャッ
「「ただいま〜〜!」」
私は、玄関の銃を手に取った。
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銃を手に取り、撃った。父は怯えた顔をして、母は何が起きているか理解できていない様子だった。
両親は、あっけなく死んだ。
「ねぇ!!!なんで!!?」
あなた達は、覚えていますか?私が10歳の頃スパイモノのアニメにハマって、皆で真似をして遊んだことを。
「愛をくれるって!!言ってたじゃん!!ねぇ!!!」
覚えていますか?小学校の卒業式で、泣いてくれましたね。それがとても嬉しくて、私が嬉し泣きして困らせちゃいましたね。
「ふざけんなよ!!!今更愛せないだぁ!?遅いんだよ!!もうとっくの昔から私はアンタたちを愛してたってのに!!」
ごめんなさい。こんな事が言いたいんじゃないんです。……私は、あなた達を愛していました。あなた達がどうかは知りませんが、少なくとも私は、心から。
「ふざけんな!!ふざけんな!!ふざけんな!!!」
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心ゆくまで両親を蹴り、叫んだあと私は意外と落ち着いていた。まぁ、死体相手とは言え全部吐き出したからだろう。両親の死に何にも感じてないのは驚いたが…。思い返せば私は貧民街の生まれだ。あそこは人死にが当たり前の場所だったし、慣れてたのかも。
「あ〜〜、自首するかぁ〜…。」
人を2人も殺したんだ。しかも親を。まぁ、暫くはニュースのおもちゃだろうな。仮に釈放されても日常生活とか無理だし、うまいこと死刑になったりしないか…とか考えながら、私は銃を持って外に出た。
「自首する前に休憩だけしたいな…。銃は…うん、いちおーね。」
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公園に向かって歩く。気分転換と言うか、スッキリしたいときは公園で一発遊ぶのが最適ってわけで。
「あーー!!!ノアだ〜〜!」
「お〜うガキども元気してるぅ〜?」
コイツラはいつも私が遊んでやってるガキンチョ共。年上の私を舐め腐ってるのでいつも痛い目見せてやっているのだ。周りには私もいっしょくたにされてる節があるが、まぁそれはいい。ちなみに質問しといてなんだが私は全く元気じゃない。
「お〜〜い!!もう帰るわよ〜〜!
…………ヒッ!」
アレはー…ガキの母親かな?こっち見て何怯えてるんだ…?と思ったけれど、私今血まみれじゃんね。そりゃ怖いわ。
と、いうか。このガキいっちょ前に親に世話焼かれてんじゃん。心配されてんじゃん。愛されてんじゃん。
なんだかイライラが止まらなかった。私は愛されなかったのに、なんでこのガキは愛されている…?あぁ、ムシャクシャする…!
「お前死ねよ。」
私はガキを撃った。肉が弾けた。顔面を撃ったので眼球が飛び出してきた。私はへーグロイな〜眼球ってこんな感じなんだ〜みたいな薄い感想を考えながら
「ダニエル!?ねぇダニエル返事して!!………イヤァァァァァァ!!!!ダニエルを!ダニエルをかeエ゛ッ」
母親とその他ガキどもを撃った。幸い、弾は多くあるからムカついた奴は撃ち放題らしい。
「あーコレ、死刑確定かなぁ…?だといいなぁ…。こんだけ殺したらそうかもなぁ…。うーん、喜ぶべきか哀しむべきか…。」
今日気づいたのだが、私は割と独り言が好きらしい。今まで親にべったりだったから気が付かなかったな…と、なんかゾロゾロ来たぞ…?おっ、見覚えある顔があるな。
「友達じゃ~ん。何用?」
「ノア…!なに、してるの…?ねぇ、嘘だよね?ノアはさ、こんな事しないよね…?」
「シちゃうんだよなぁ〜、これがなぁ〜。えーっと、残念でした…、で合ってる?」
「アンナ!!近寄っちゃダメだ!撃たれるぞ!!」
父親らしき男がアンナを牽制した。はぁ…。アンナ、愛されてんじゃん。
私はアンナを撃った。
「あはっ!!あっははははは!!!!」
アンナを撃ったら周りの奴らがキレてきたからそいつらも撃った。
「あはははははははは!!!あーははハハハッ!!!!アハハハハハッ!!!」
あっちも銃で撃ってきた。何故だか分からないけれど、私には当たらなかった。天運っていうのかな。神様も私の味方みたい。
「あは、あっははは、あははははは…。
はぁ…。終わりかぁ…。」
そう思ってたんだけど、もう駄目みたい。誰かが呼んだであろう警察が、流石というべきかしっかり私に銃弾を当ててきていた。
………血が止まらない。死ぬのかな…。
『むぅ…凄腕スパイノア…!またしても奴のせいで…!』
『我が国の秘密計画が全て筒抜けですわよぉ!!くっ…ノアめ…!覚えていろ…!!』
あぁ、楽しかったなぁ…。
『ノアちゃん。小学校卒業、おめでとう。あなたみたいな立派な娘を迎えることができて、私たちは世界一幸せよ。』
『ノア…。私たちと共に生きることを選んでくれて、私たちを愛してくれて、ありがとう…!』
こっちの台詞だよ。でも嬉しかったな、これ。
『志望校合格!!?凄いじゃないか、ノア!!オマエは世界1だなぁ!!』
『今夜はお祝いしなくちゃね!好物の天ぷら、めっちゃ気合い入れて作っちゃうわよぉ!!』
好物が食パンから変わったけど、ちゃんと覚えててくれたんだよね…。と言うか、ちゃんと祝ってくれてたんだな…。覚えてなかったや…。
こう見ると、楽しい思い出ばっかりだったね。私はあなた達に愛されて幸せだったけど、あなた達は…まぁ、そうだよね。
私とあなた達の間にあったのは偽りの愛だったけれど、私がそれを信じられていたら、変わったかな?偽りでも突き詰めれば本物になれたのかな?………なんてね。困らせるだけだよね。ほら、息子さん待ってるよ、速く行ってあげなよ。
………ごめん。最後に1個だけ、いい?
「ごめ゛ぇ゙……っざ……」
私は死んだ。
読んでくださり、ありがとうございました。




