『日本改造計画外電』その弐拾壱『多夫多妻』ドラマ(8)夫が一杯
今日は、結婚相談所の紹介で出会った二人の男女の物語だ。
* * *
正直、私は年齢49歳。収入も貯金も大したことない。
それでも、二十代前半の美女からデートの申し込みがあった。
正直どんな裏があるのか、そればかりが気になって仕方ない。
自分で申し込んだにも関わらず、重い足取りを引きずった。
* * *
「私は、ビッチなんですよ。同居中の夫が、既に三人います。
あなたは、四人目。それでも私とヤリたいですか。」
開口一番切り出す彼女。
「あぁ……そういう事でしたか……では、私からも。
私の両親は、両方とも70代、介護が必要です。
あなたには、介護並びに家事育児全て担当して頂きます。」
こちらも遠慮なく言わせてもらった。
「大丈夫です。その件、既に手を打ってあります。」
話によれば、かなりの大家族らしい。
彼女、彼女の両親、三人の夫、三人の夫の両親。
更に三人の夫の二人目以降の妻、彼女らの両親。
彼らに担当させればよい。と言う事らしい。
「しかし、両親の年齢から考えても、介護の手が不足していませんか。」
「では、今度皆さんに紹介しましょう。で、今日ヤリませんか。」
「今日は、時間がありません。また今度にして下さい。」
* * *
今日のリモート会議参加者は、後で語るとしよう。
「えーー……本日は、お悩み相談です。が、私は他人の相談を受け付けません。何故かと言うと、私は総統と言う支配者です。そんな人間が、相談を受け付けると、その答えが『命令』になる可能性があります。そこで、回答者を別に用意しました。」
「どうも、ご紹介に預かりましたピロユキです。」
「そう言う訳で。本日は、お悩み相談の回答をお願い致します。」
「はい。で、質問の内容はなんでしょう。」
「はい。私は、ミスター・フー。49歳の会社員、年収三百五十万円です。
将来の不安などの理由で、結婚相談所に通っています。
そこで、知り合った女性との交際方法で悩んでいます。
ここまでは宜しいでしょうか。」
「成程、ミスター・フーのプロフィールと悩んでいる対象ですね。
分かりました。問題ありません。」
「では、続けます。えーー……彼女は、24歳、美人で、家事も上手です、
多くの長所を持つ一方、大きな欠点も抱えています。
彼女は、『ビッチ』です。既に同居夫が三人います。
他にも、外にセフレが、二十人以上います。
私は、年齢もあり、考え方が古いのです。
一緒に添い遂げる女性が欲しい。
しかし、彼女にほれ込んでいる自分もいます。
一体どうすればよいでしょうか?」
「成程、々々、々々。一見深刻そうにみえますね。
では、私の回答に入ります。」
「宜しくお願いします。」
「まず、問題を切り分けましょう。この問題は四つに分割可能です。
一つ、あなたは彼女を好きです。
一つ、彼女は、あなたの事を左程好きではない。これは、
嫌悪感を抱く程ではない。だから性行為くらいいいよ。
そう言う意味です。
一つ、彼女は、性行為できれば、相手は誰でも良い。
こんな所ですね。」
「分かります。続けて下さい。」
「で、現状『多夫多妻』制度が、あります。何人と結婚しようが、
何人と性行為しようが、自由。そう、憲法で保障されています。
間違いないですね。総統閣下。」
「仰る通りです。」
「なら、彼女の言い分は、『合憲』です。何も言えません。
そこで、先程問題は三つに分割可能ですと言いました。
これら、三つは、全て『合憲』です。何も言えません。
ここまでは、問題ないですね。総統閣下。」
「問題ありません。続けて下さい。」
「僕の意見は、結婚すべきではありません。が、同居すべきです。」
「それで、何か変わりますか。」
「まず、先程。この問題は四つに分割可能です。
が、未だ三つしか説明していません。ここで、説明します。
最後の問題点は、件の彼女が、『一番』であることです。」
「? 『一番』ですか。それは、『共同体』の中でですか。」
「はい。同居夫が三人いるそうですが、彼らにも両親がいるでしょう。
そう言った集団をコミュニティと呼びます。で、現状、このコミュニティ内部で、彼女が一番だと言う事です。夫達は、彼女に『ヤラせてもらっている』立場であり、両親は、住ませてもらっている。人を集めた彼女中心にならざるを得ない。
違いますか。総統閣下。」
「あらほらさっさぁーー。」
総統閣下の「……成程、確かにそうですね。これでは、独裁者の彼女と手下達。そうと説明せざるを得ない。では、どうします。」は、「あらほらさっさぁーー。」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。
某アニメとも無関係に相違ない。
「ずばり、対抗馬を用意します。」
「つまり、ミスター・フーは、次の女を連れ込むべき。
そう言いたい訳ですか。」
「ええ。そうすれば、今までの彼女を彼女A、新しい彼女を彼女B
と呼びますよ。で、今は彼女Aの独裁なんですよ。
ですが、そこにミスター・フーが、自分の妻と称して彼女Bを連れ込む。
すると、二人の女が、互いの夫を奪い合う。そんな構図になります。」
「成程、四人の夫を繋ぎ止める事に必死になる二人の妻がいる。そうすれば、彼女Aは、ミスター・フーを繋ぎ止める事に必死になる訳ですね。」
「まさにその通りですよ。コミュニティ内部の勢力図も刷新されます。
これが、『多夫多妻』制度の最大の利点、『競争原理』です。」
「しかし、それでは最大の問題を解決できていませんね。」
「分かっていますよ。ミスター・フーが、新しい女を口説く方法ですね。
大丈夫ですよ。だから結婚する必要はありませんが、同居すべきです。」
「ならば、具体的にお願いしますよ。」
「つまりですね、女性の習性にあるんですよ。『他人のものを欲する。』
例えば、ミスター・フーが、婚活を続けて、自己紹介します。
『同居妻が一人います。あなたは二人目です。』とね。
これは、憲法で保障されている『多夫多妻』制度に則っています。
すると、女性はどう思うか分かりますか。総統閣下。」
「ミスター・フーの外見は分かりませんが、年齢から『冴えないおじさん』だとしましょう。すると、『この男には目に見えない魅力があるはず。』そう解釈される筈。」
「まさしく、その通り。そこで、一回くらいデートに応じます。
その時、自宅に招き入れ、彼女Aや彼女Aの両親の料理を振舞います。
そして、自分は彼女Aに負けていない。こいつから寝取ってやる。
そう思ってくれる事でしょう。で、同居夫も同様になるでしょう。」
「成程、そうすれば、当初言っていた『競争原理』が、働く訳ですね。
私も考えましたが、一人の年収が三百万円台でも三人揃えば、一千万。
多夫多妻とは、チーム一丸となって協力し合う事です。
やはり、人間たるもの、チームプレイが、重要です。」
「それに対し、一夫一妻とは、『チームプレイなどと言うお題目は存在しない。ただ、スタンドプレイの積み重ねが、結果としてのチームプレイに繋がる。』訳です。
総統閣下。」
「おひおひ……おまいは、何処の公安九課課長だよ。」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。
「では、そろそろ〆て頂けますか。総統閣下。」
「はい。そう言う訳です。彼女Aの若さや美しさは、必ず色褪せます。が、あなたのキャリアや、収入は色褪せません。頑張ってくださいミスター・フー。」
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