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最終章:約束と観測者の道

翌日、シニェデが目を覚ますと、リビングからは、楽しそうな話し声が聞こえてきた。リビングへ行くと、テーブルには、温かいコーヒーと焼きたてのパンが並んでいる。父親と母親は、向かい合って座り、笑顔で話していた。


「ママ、お父さんと、仲直りしたの?」


シニェデの問いかけに、母親は少し照れくさそうに微笑んだ。

「仲直り…というよりは、私たち、これから、もう少しコミュニケーションというものを、深く考えていこうって、話してたのよ」


母親の言葉に、父親も静かに頷く。

「そうだ。私たちは、お互いの概念を、ただぶつけ合うことしかできなかった。しかし、シニェデの演奏は、私たちに、概念は、衝突するものではなく、共鳴し合うものだという、新しい概念を教えてくれた」


シニェデは、二人の言葉に、胸が熱くなった。両親は、まだ完璧に理解し合ったわけではないだろう。それでも、二人の間に存在していた、頑なな壁は、確かに取り払われ始めていた。


学校へ向かう道すがら、シニェデはマップリンに会った。マップリンは、いつもより少し明るい表情で、シニェデに話しかけてくる。


「シニェデ、あのね、私、お母さんと話したんだ」


マップリンの言葉に、シニェデは静かに耳を傾ける。

「うん?」


「私、演劇部を辞めようかと思ってたんだ。オフィーリアの役を演じることが、なんだか、自分の人生を生きている感じがしなくて。みんなの期待に応えなきゃって、そればかり考えてたの」


マップリンの言葉は、まるで固く閉ざされていた扉が開いたかのようだった。

「でも、シニェデと話して、気づいたんだ。演劇って、色々な人の人生を生きられる、素晴らしい芸術なんだって。私はただ、みんなが期待する『正しい』オフィーリアを演じようとしてただけで、オフィーリアという人物そのものと向き合ってなかったんだ」


マップリンの声は、どこか晴れ晴れとしていた。

「だから、もう辞めない。演劇部には残ることにしたの。これからは、誰かの期待に応えるためじゃなく、もっとたくさんの役を演じて、色々な人の『概念』を体験してみようと思うんだ。それが、私の新しい『楽しい概念』なんだって」


マップリンの言葉に、シニェデは、感動で胸がいっぱいになった。マップリンは、誰かの期待という「つまらない概念」から解放され、自分だけの「楽しい概念」を創造する道を選んだのだ。それは、シニェデ自身が、両親の不協和音の中で見つけた、光と同じものだった。


「マップリン、すごいね!」


シニェデが満面の笑みで言うと、マップリンも、満面の笑みで答えた。

「うん。シニェデのおかげだよ。ありがとう」


二人は、手を取り合って、学校へと向かう。それぞれの心の中には、まだ見ぬ、新しい概念が芽生え始めていた。シニェデは、もう、箱の中に閉じ込められた猫ではない。未来の自分からのメッセージを胸に、自らの手で観測し、創造する道を選んだ、一人の「観測者」から「創造者」へと変わった少女だった。そして、その道は、孤独な道ではなく、愛する人たちと繋がり、新しい「量子もつれ」を生み出していく、温かな道だった。


量子とは概念を物理的に観測したものであるという仮説を衝動的に物語にしたものです。考察は自由ですし、同時多発的にみなさまにも起きた事だと思うので、批評はしていただいても構いませんが、批判はご自身でなんらかの概念でしていただければと思います。(優しく見守ってください。概念の二次創作は二次創作とも思いませんよ。恐らく私が思いついた事も何かの積み重ねで二次創作的な出力に過ぎないのです。)

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