第二話 内乱1
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頑張って回避したはずの内乱が発生した。
その衝撃のニュースを持って来たカルミア様に連れられてやってきたのは、生徒会室でした。
いくら王立学園でも、学生に過ぎない生徒会が国を揺るがす内乱への対応を行うはずがありません。
生徒会室は内乱に対する対策本部として接収されたのでしょう。
現在この学園には王族が在籍しています。
内乱に対してどう対応するにしても、王子という立場はキーパーソンになります。
学園も、王都内で警備厳重な公共施設であり、非常時に立て籠もるには適した場所です。
生徒会室には既にこの非常事態に対応するために集まった大物の面々――何だか見た顔が多いのですが――が揃っています。
まずは、在校生のアイビー殿下。
前生徒会長のアイビー殿下は生徒会室に馴染んでいますが、今は生徒会関係者ではなく王族としてここにいます。
次に、教師のアスター先生。
この人は身分や立場というよりも、治癒魔法の使い手として召集されているのでしょう。
荒事になれば回復役は必要とされます。
私が呼ばれたのも同じ理由からでしょう。
それから、私とカルミア様と同様研究生のニゲラ殿下とローレル。
既に学園を離れたガザニア先輩とケールもいます。
他にも何人かよく知らない顔もいますが……あれ?
何でニゲラ殿下とアイビー殿下が両方ともこの場にいるのですか!?
ニゲラ殿下の内乱は頑張って防いだつもりだし、正式に王太子が決まっていない現在、ニゲラ殿下もアイビー殿下も内乱を起こすほどに追いつめられていません。
だから、二人とも今動く必要はありません。内乱に加担していないことは納得できるのですが……では、誰が?
王位継承権を持つ人は他にも何人かいますし、以前のテロリストのように王家そのものを否定する勢力も存在します。
けれども、それらはみんな小勢です。
後押しする大きな勢力を持つ第一王子と第二王子――ニゲラ殿下とアイビー殿下が内乱の旗印として担ぐには最も成功率の高い人間です。
他の弱小勢力では、武力で政権を奪取することも困難で、たとえ成功しても維持することはまず無理です。
国政の実権を握る大貴族を味方につけなければ、国は立ち行きません。
大貴族を排して新しい体制の政府を作ったとすれば、大貴族を完全に敵に回すことになります。
大貴族ともなると、王都に攻め上れるだけの領兵を保有しています。
この国で最大の兵力を保有するのは、国軍を指揮する王家ですが、国軍は国王またはその代理と認められる王族の命が無ければ動きません。
つまり、国軍を動かせる人物を担ぎ上げるか、複数の大貴族を味方につけなければ最終的には軍に攻め滅ぼされることになります。
大貴族は基本的に第一王子派か第二王子派に分かれていて、今更第三勢力に鞍替えするとは考えにくいです。
それに、本気で寝返ったのだとしたら、ニゲラ殿下とアイビー殿下を放置するとは思えません。
王家直系の王子のどちらか一人でもいれば、反抗勢力の大義名分が整います。
ことを起こす前に二人を亡き者にする、とまではいかなくても、しばらくは介入できないようにどこかへ隔離しようとするはずです。
せめて二人が王都の外にいてすぐには駆け付けられない状態でなければ内乱なんて起こせないでしょう。
大貴族ならば、その程度の段取りは付けられるはずです。
だから、大貴族を引き入れた線は薄いです。せいぜいが、静観する約束を取り付けたところまででしょう。
ならば、有力な王族を取り込んだのでしょうか?
ただ、一番有力な王族がこの場にいる王子二人です。
他にも王位継承権を持つ者はいますが、この二人に比べるとだいぶ見劣りがします。
例えば、公爵家の子息であるガザニア先輩やナルシス君も一応王位継承権はありますが、普段は忘れていても問題ないほどに低いです。
彼らが国王の代理を名乗ることは、よほどの非常事態でない限り不可能です。
よほどの非常事態とは、王族不在の時に王都を攻められた場合などで、王族が戻るまでの一時的な代役です。
つまり、無理やり国軍の指揮権を主張しても、ニゲラ殿下かアイビー殿下が出て来た時点で指揮権は奪い返されます。
王位継承権第一位のニゲラ殿下に対抗して王の代理や新王を名乗ることができるのは王位継承権第二位のアイビー殿下くらいなのですが、他にいるとすれば……
王弟殿下でしょうか。
王弟殿下ならば、年若い王子には王の責務は務まらないと主張すれば、王位継承権を飛び越えることも可能でしょう。
でも、国王陛下が即位後は政治の表舞台に立つことは無かった王弟殿下が、今更内乱に加担するものでしょうか?
うーん、王弟殿下に関しては情報がほとんどないので判断が付きません。
ゲームでも、遊び人の王弟がいる、という程度にしか触れられていない人物で、名前すら出てきません。
考えても分からないのだから、無駄な憶測は止めておきましょう。
この部屋にこれだけの面子が集められたということは、状況を説明して打開策を考えろということなのでしょう。
おとなしく説明を待ちましょう。
そんなことを考えているうちに、また一人部屋に入って来……って、お義兄様!?
そう言えば、ゲームでは皆殺しルートでニゲラ王子の内乱を制圧するために活躍していましたが……
ニゲラ殿下が首魁ではなくても登場するのですね。
そして、お義兄様の後からもう一人。
あれは……カランセ?
そうです、情報屋のカランセです。
似合わない軍服を着ていたから、一瞬誰だか分かりませんでした。
市井の情報屋を王族貴族の前に連れ出すために軍服を着せたのか、元々軍の諜報部員が一介の情報屋のふりをして市政に潜んでいたのか。
いずれにせよ、この状況でお義兄様が頼る程には有能なのでしょう。
「それでは始めよう。まずは状況を教えてくれ。」
ガザニア先輩が進行役を務めるようです。
この場には王子二人を含めて立場が上そうな人もいますが……必ずしもトップが司会をする必要もないし、先輩が適任なのでしょう。
さて、聞かせてもらいましょうか。
私達が三年間の学生生活を費やしてどうにか成し遂げたニゲラ殿下による内乱の阻止。
その努力を踏みにじってくれた奴は、何処のどいつじゃあー!




