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花咲く王国で恋をしない ~乙女ゲームの世界のヒロインに転生した元男ですが、何をすればよい?~  作者: 水無月 黒
第三章 三年生編

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第十七話 二学期

・2025年12月14日 誤字修正

 誤字報告ありがとうございます。


ブックマーク登録およびリアクションありがとうございました。

 夏休みが終わり、二学期に入りました。

 臨海学校や林間学校の騒ぎが無かったかのように学園は平常通り……

 いえ、すみません、嘘を吐きました。

 私に限ってはさすがに何も無かったことにはなりませんでした。

 分かっています。あれはやり過ぎました。


 収束陽光撃(ソル)


 魔法が効かない強力な魔物三体を一撃で屠った超強力な魔法。

 そう見えます。

 そうとしか見えません。

 国が放っておくはずがありません。

 色々と聞かれましたよ。

 ちゃんと説明してきましたよ。

 魔物を倒した光は、太陽光を集めたもので、晴れた日中でないと使えないこと。

 広範囲から光を集めてこないと威力が出ないので、要求される魔力と魔力制御の技術がとても高いものとなる(たぶん私以外使えない)こと。

 正確に光を対象に集めるために時間がかかるので、動き回る相手を狙うことは難しいこと。

 まあ、色々と使い勝手が悪い魔法であることを強調しておきました。

 ですが、威力が威力です。

 多少の欠点があっても、利用したいと思う人はいるでしょう。

 下手をすると攻城兵器扱いで軍に所属させられる可能性もありました。

 けれども、私の魔法は極秘扱いになりました。

 緘口令が敷かれ、私の魔法については誰にも話してはいけないと厳命が下りました。

 この魔法は知られるだけで危険と判断されたのです。

 現在私しか使うことのできない魔法ですが、既存の光魔法を応用して私一人で開発してしまった魔法です。

 概要を知れば同じ魔法を独自に作り出す者が現れるかもしれません。

 そして、光魔法の使い手を多数抱えているのは教会です。

 ただでさえ影響力の大きな教会が、これ以上強力な武力を持つことを国としては望みません。

 魔物対策と信者を守ることが目的で国同士の争いには関わらないと宣言している聖騎士団(テンプルナイツ)でさえ潜在的な脅威と見なされています。

 その上強力な攻撃魔法まで所持したら何が起こるか分からない、と危惧するのは当然の事でしょう。

 教会が絶対に悪用しないと宣言しても、暴走する狂信者が何時現れるか分かりません。

 そして、暴走するのは狂信者に限ったことではありません。

 国内の貴族や軍関係者の中にも、切り札となる強力な魔法をなりふり構わず欲しがる者が出てきます。

 光魔法の使い手は希少なのでまず成功しませんが、偶然にでも成功して大きな力を手に入れた者が増長しないとは限りません。

 さらに、多くの者が関わればそれだけ秘密は洩れやすくなります。

 光魔法を独占する教会だけでなく、他国が似たような攻撃魔法を開発してしまう恐れもあります。

 だから、魔法の存在そのものが秘匿されました。

 私に対しても、今後は許可なく使用してはいけない魔法に指定されました。

 在学中にその許可を出せるのはニゲラ殿下になるのでしょう。

 さすがに、そんな機会はないでしょうけれど。

 それにしても、大事になってしまいました。

 まさか、国王陛下に拝謁することになるとは思いませんでした。

 でも、後悔はしていません。

 あの魔物は、そこまでして倒す必要がありました。

 元々強すぎて倒し切れずに封印したと謂れのある魔物です。

 長い封印で弱体化していたとしても、あの場で倒せなければどれほどの被害が出ていたか分かりません。

 その点については、陛下からもお褒めの言葉をいただきました。

 なんだかんだで丸く収まったので、まあ良しとしましょう。


 マキシマムレーザーは禁止されていませんよ。まだ見せていないので。


 表面上は私も日常生活に戻ったので、二学期が始まれば学業優先の通常の学園生活に戻ります。

 まあ、三年生になってからは授業少なめなので、その分部活やダンジョンや裏工作を頑張っています。

 将来の事を考えるならそろそろ就活も始めたいところですが、こちらは一時保留です。

 前世の学校と異なり、この学園では学生の卒業後の進路に関して力を入れていません。

 なにしろ、貴族の学園です。

 貴族の就職は、本人の希望ではなく家の都合で決まることが多いです。

 嫡男ならば家を継がなければなりません。

 女子ならば嫁ぎ先が決まっていることも珍しくありません。

 貴族の嫁は専業主婦ではなく、立派な、そしてかなりハードなお仕事です。

 他にも代々国の要職に就く人材を送り込んでいる家系とか、上級貴族や王家に仕えるような使用人を輩出する家系などもあります。

 その一方で、お義兄様のように家を継ぐ前に社会経験を積もうと一時的な仕事をする者もいれば、家督を継げない次男三男が軍人や役人となって一旗揚げようとする場合もあります。

 そのような、家に頼らずに働き口を探そうとする者のために、学園では就職支援も行っています。

 この世界では貴族に限らず、特に堅気の職業では、縁故採用が一般的です。

 信用の問題もありますが、仕事に関する知識と技術は親から子へと伝えられることが多いのです。

 何もできない新人を一から教育するよりも、仕事のできる親に子供の頃から仕込まれた若者の方が即戦力として役に立ちます。

 けれども、主に都市部では新規事業を立ち上げたり、規模を拡大しようとして人手不足に悩まされることもあります。

 また、何らかの事情で家業を継続できなくなったり、家業と無関係な方向に特異な才能を見せる天才が現れることもあります。

 そうした人材のミスマッチを、幅広い人脈を利用して解消することも貴族の務めの一つです。

 ただ、さすがに地方の下級貴族が、国の要職とか、王家や上級貴族の求人とかに人材を押し込むことは困難です。

 そこで、学園が就職先を斡旋します。

 学園の目的の一つが、国に貢献する優秀な若者の育成です。

 当然、育成された若者の受け口もあります。

 王立学園なので、政府、関連機関、軍部、王宮や上級貴族などあちこちにコネがあます。

 実家のコネで就職できない人は、学園のコネを使えば選択肢が広がります。

 特に成績優秀な学生は売り手市場で選びたい放題です。

 私は学年主席なので就職先は選び放題……なのですが、女子と言うだけで門前払いになる職場も少なくないようです。

 成績さえよければ実家の伝手よりも学園を通した方が確実な場合もあるそうです。

 それでも学園の就職支援を利用する学生は少ないそうですが。

 私の場合も、基本的にチャールストン伯爵家の方針に従う必要があります。

 幸い、血統的には平民の私は政略結婚の必要はありません。

 私はあくまで才能を買われてチャールストン伯爵家に迎えられたのですから、バリバリ働いて成果を上げなければなりません。

 チャールストン伯爵領に戻って領地のために働くか、王都に残って国のために働くか。

 この辺りはお義父様としっかり話し合う必要があります。

 冬休みにでも話し合う時間を貰うことにしましょう。

 ただ、気がかりなことがあります。

 チャールストン伯爵家の方針に横槍が入る恐れが出てきました。

 普通ならば、他家の家庭内の事情に直接口出しするような不作法な真似は許されません。

 たとえ相手が格下でも、大義名分も無しに他家の内情に干渉したら顰蹙ものです。

 大貴族ほど体面を気にするので、無茶な要求はできないのです。

 ただし、大義名分さえ用意できれば無理も押し通しますし、直接の口出しはしなくても間接的な圧力ならばかけてくることはあります。

 今回、私は国王陛下に目を付けられました。

 悪い意味で注目されたわけではありませんが、ニゲラ殿下に目の敵にされるのとは違って学園を卒業したらそれで終わりとはなりません。

 私の魔法を利用したいと考えるならば、いきなり軍に入れるようなことは無くても、国や王家の目の届く場所に私を置こうとするでしょう。

 今現在私の光魔法を戦力として何かに利用しようとは考えていなくても、有事の際にはすぐに呼び出せるように国や王家の命令が届く場所にいることが求められるはずです。

 チャールストン伯爵領に引き籠るような仕事は選べないかもしれません。

 まあ、チャールストン伯爵側に何か落ち度があるわけでもありませんし、お義父様の意向を無視して勝手に話が進むことは無いでしょう。

 それでも、あらかじめ落としどころを考えておけば話は早くなりますし、突然の話に慌てて不本意な結果に終わるリスクを抑えられます。


 考えてみれば、元々私は非常時に教会に頼らずに治癒魔法による治療が可能な人材として学園で光魔法を習っています。

 何処で働いていても、何かあれば呼び出されて国のためにその能力を行使する必要があること自体は変わりません。

 呼び出される目的が増えただけで、実質何も変わりない……のでしょうか?

 治癒魔法に関して言えば、本来ならば教会にお布施をして治療してもらえばそれで良いのです。

 教会は治癒魔法を独占していることを利用して国に不当な圧力をかける意志がないことを示すために治癒魔法の技術を提供しました。

 それが、アスター先生や私が習得している治癒魔法です。

 教会が誠意を示している以上、国としても誠意を見せる必要があります。

 だから、教会に支払うお布施をケチるために私やアスター先生に治癒魔法の依頼が来ることはありません。

 教会との関係が悪化するか、教会だけでは手が足りなくなるほどの非常事態にでもならなければ私にまで出番が回って来ることは無いはずです。

 攻撃魔法はどうでしょうか?

 私の見せた光の攻撃魔法、収束陽光撃(ソル)は強力ですが制限が多くて使い勝手が悪い事を説明してあります。

 戦場で軍隊相手に使用するには向かない魔法です。

 治癒魔法のように、政治的に利用するつもりならば、どこかで魔法の存在を他国に知らせる必要があります。

 この国にはこれほど強力な魔法が存在する、と知らしめて戦争を躊躇わせる抑止力としての利用です。

 本気で抑止力として使うつもりならば、そのうちデモンストレーションとして魔法を使うことを要求されるでしょう。

 ただし、あまり詳細に知られると同じような魔法を開発される恐れが出てきます。

 教会勢力だけでなく、他国にも光魔法の使い手がいても不思議ではありません。

 完全に秘密にするのならば、私は完全に秘密兵器扱いです。

 秘密兵器は秘密にしているからこそ威力を発揮します。頻繁に使用して存在が知れ渡れば敵も警戒するし対策も考えます。

 その代り、呼び出された時にはかなり危機的な状況になっているということですが。

 まあ、抑止力にしても秘密兵器にしても、そうそう出番はありませんし、あったら困ります。

 一生出番がないことを祈りつつ、なるべく平和な仕事を探しましょうか。


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