表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花咲く王国で恋をしない ~乙女ゲームの世界のヒロインに転生した元男ですが、何をすればよい?~  作者: 水無月 黒
第三章 三年生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/87

第五話 ローレルの休日3

評価設定、ブックマーク登録およびリアクションありがとうございました。

 得られた情報から分かったことは、この治安の悪化は一時的なものだということです。

 原因を作ったのは影の薄いどこかの侯爵ですが、私兵の増強を行っただけで、街の治安までは気にも留めていないでしょう。

 治安の悪化した街のならず者を私兵で制圧して功績とする自作自演(マッチポンプ)を行うことは考えられません。

 その程度では侯爵が名を上げるには弱く、解決することで名声が上がるほどの大問題になる前に王都の治安を守る衛兵が本腰を入れます。

 それ以前に、イントリーグ家が黙っていません。

 王都の悪の総元締めとも呼ばれるイントリーグ家は、裏社会の主要な組織のほとんどに強い影響力を持っていると言われています。

 街のチンピラはだいたいが、イントリーグ家とつながりのある組織、その下請けとなる下部組織のどこかに属しています。

 つまり、ほとんどの悪党がイントリーグ家の支配下にあり、その結果としてある種の秩序が出来上がっています。

 けれども、王都の外から来た者達は、同じ悪党でもイントリーグ家の影響下にありません。

 少数のお上りさんなチンピラが何かやらかす分には大した問題にはなりません。王都のどこかで日常的に発生するトラブルの一つに過ぎません。

 ですが、王都の外から大挙してやってきて、我が物顔で好き放題やられては困ります。

 裏社会の人間としては、自分たちの縄張り(シマ)で好き勝手されたらメンツが立ちません。

 また、王都の治安が悪化すると、イントリーグ家の表の顔である貴族、および商人としての活動にも支障が出ます。

 だから、これ以上悪化して表通りにまで影響が出る前に、イントリーグ家が裏社会の人間を動員して問題を起こしている人間を確実に排除します。

 たとえ侯爵家に雇われた人間が混じっていても関係ありません。

 落ち目の侯爵家よりもイントリーグ家の方がよほど影響力は大きいのです。

 ローレルは運がありませんでした。

 今が一番治安が悪化している時なのです。

 もう少し前か後ろに時期がずれていれば妙なトラブルに遭う危険もずっと低かったはずです。

 ローレルは自分で自由時間を選べないので、ただ不運なだけです。

 それでも、表通りだけならば問題はなかったのです。

 ガイドブックに載っている「穴場情報」とか「隠れた名店」といった記事を見て裏路地に入り込むと、チンピラと遭遇します。

 遭遇したチンピラが、王都在住の地元の者ならば面倒なことにはならないでしょう。

 制服を見れば学園の生徒であることは明白で、貴族とのトラブルを避けようと変なちょっかいはかけてきません。

 ところが、今裏路地に出没するのは王都の外からやって来たチンピラです。

 学園の制服も知らないだろうし、知っていてもすぐに王都を出るから大丈夫とか短絡的に考えています。

……あれ?

 もしかして、これってケールのイベントにも絡んでいませんか?

 ケールルートに入った場合、この時期に発生するイベントは誘拐です。

 二年生の時にも何度も発生する誘拐イベントですが、ケールルートに入ると再び誘拐されます。

 ちょっと攫われ過ぎではないでしょうか。

 ケールルートに入ってから発生する誘拐イベントも、二年生の時のケールの誘拐イベントと流れは一緒です。

 まずヒロイン(フリージア)が営利目的で誘拐されて、それをケールが助け出します。

 ルートに入った後の誘拐イベントの特徴は、巻き込まれて誘拐される点です。

 このイベントで誘拐されるのは、一年の時にケールをボコった騎士科の落ちこぼれ男子たちです。

 ヒロイン(フリージア)はその場に居合わせたために、ついでで攫われてしまいます。

 そして、ヒロイン(フリージア)のついでに救出された落ちこぼれ達を脅すケールの言葉と後に明かされるイントリーグ家の裏の顔から、ケールの意趣返しのためにイントリーグ家の指示で落ちこぼれたちの誘拐が行われた。

 作中で明示的に示されることは無いものの、前世の人はそう解釈していました。

 ですが、この世界で暮らしているうちにその解釈に違和感を覚えるようになりました。

 王都の悪の相元締めと呼ばれるイントリーグ家ですが、表の顔は信用第一の商人と、面子を重んじる貴族です。

 誘拐された貴族やその関係者を身代金を払って取り戻す仲介をすることはイントリーグ家のビジネスですが、自分で誘拐して自分で取り戻していると思われたら信用も面子も全て失います。

 だから、イントリーグ家の傘下にある王都の悪人は、貴族相手の悪事を避ける傾向にあると言います。イントリーグ家の面子を潰すと大変なことになるからです。

 実際、王都は貴族にとってかなり安全な街です。

 だから、ケールの意趣返しだとしても、王都でイントリーグ家傘下の悪人が貴族を誘拐すると言うのは不自然なのです。

 けれども、犯人が王都の外から来た者達だというのならば話は別です。

 イントリーグ家と無関係のならず者ならば裏社会の秩序など気にしないだろうし、王都を去る手土産にと考えれば後先考えない大きな事件を起こしかねません。

 例えば、高額の身代金を要求できる貴族の子弟を王都で誘拐するとか。

 イントリーグ家としては看過できることではありません。

 事が大きくなる前に事件を阻止し、外から来たならず者を排除しようとするでしょう。

 つまり、騎士科の落ちこぼれたちはイントリーグ家の配下にある犯罪組織が誘拐したのではなく、王都で貴族の誘拐を企む連中をおびき出すための餌として利用されたのではないかと言うことです。

 そう言えば、イベントの最後の方で、背景に誘拐犯の物と思われる大型の馬車が描かれていました。

 裏通りからさらに奥に入った、普段は衛兵も立ち寄らない秘密の隠れ家に人質を連れて行くには大き過ぎる馬車です。

 貧民に混じって犯罪者が隠れ住む裏町は、馬車が通れるほど大きな道はありません。

 あれは、王都の外へと攫った人を連れ出すための馬車だったのでしょう。そこまで設定して描かれたのかは知りませんが。

 すると、今頃どこかに誘拐された人がいるのかも知れません。

 ケールのイベントでは、ヒロイン(フリージア)と騎士科の落ちこぼれ以外にも何人か捕まっていた人がいて救出されています。

……ま、まあ、イントリーグ家が動いているのならばそちらでどうにかしてくれるでしょう。

 場所も分かりませんし。

 ケールのイベントが発生するのは繁華街の裏路地と言うことでこの近くです。

 ただし、それは誘拐が行われた場所で、攫われた人たちが集められる場所は別にあります。ゲームの知識から特定することは困難です。

 わざと誘拐されて犯人に案内してもらう手もありますが、それでは時間がかかります。特に犯人を制圧した後の処理を一人で行うと一日潰れてしまいます。

 今日の主眼はイベントで危険な目に遭うかもしれないカメリアさんを陰からサポートすることです。

 私はこの世界で、可能な限り不幸な悲劇を防ぎたいと思っていますが、あくまで手の届く範囲までです。

 できないことはできないのだから、そこには優先順位が存在します。

 もしかしたら存在するかも知れない被害者よりも、親友の安全を優先します。

 ただ、それでも迷ってしまうのは、今回のカメリアさんについてはあまり心配していないからです。

 今、カメリアさんの隣にいるのはローレルです。

 日常生活では時々考えの足りないこともありますが、戦闘においてローレルは一流です。ニゲラ殿下の護衛を任されているのは伊達ではありません。

 チンピラが束になってもローレルには敵いません。

 イベントの都合でヒロイン(フリージア)がピンチになりますが、チンピラが人質を取ったくらいでローレルを止められるはずもありません。

 一瞬の隙を突いて人質を取り戻すくらいのことは、ローレルならばやってのけます。

 むしろ、ローレルに余裕が無くなれば、敵の命が危険です。

 相手が人質に危害を加える前に、一瞬で確実に無力化しなければなりませんから。

 私が行おうとしていることは、本当に万が一のための用心です。

 カメリアさんが怪我でもしたら、私の身代わりになったみたいで嫌じゃないですか。

 一方で、誘拐されてしまった人は大変なことになります。

 身代金を払って解放されればよいのですが、それでも解放されるまでの間は不自由で恐ろしい思いをすることになります。

 そして、何らかの事情で身代金が支払われなかったり、支払われても賊が約束を反故にしたら、人質は解放されません。

 そうなると、被害者は奴隷として売られるか、最悪殺されてしまいます。

 若い女性の場合だと、その前に慰み者になりかねません。

 想定される被害は、カメリアさんの比ではないのです。

 気が付いてしまったからには何とかしたいのですが、現状何とかする手段がありません。

 ゲーム知識による推測でしかありません。実際にどこで何が起こっているのか確かなことは分かっていません。

 情報不足に準備不足。これでは何もできません。

 ここは、イントリーグ家の配下が誘拐を阻止してくれることを期待して、私は私のやるべきことをやりましょう。

 そうと決まれば、ローレルのイベントの現場に向かうことにします。

 場所は判っています。

 イベントの背景に描かれていた特徴的な建物を見つけた時は驚きました。

 あんな珍妙な建物が本当に実在するなんて、異世界侮れません。

 近くには隠れた名店的な店もあるので、イベントの現場で間違いありません。

 あの辺りのチンピラ一掃すれば、カメリアさんの安全も確保できるはずです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ