第二話 三年生の授業事情
・2025年8月25日 誤字修正
誤字報告ありがとうございました。
・2025年8月24日 誤字修正
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学園も三年生になると授業の受け方が少し変わってきます。
三年生は必須科目が少なく、学生が授業を選ぶ幅が広くなっています。
貴族の卒業後の進路は人それぞれです。
家を継ぐ者、嫁あるいは婿として他家に入る者、家臣や使用人として他の貴族に雇われる者、役人になって国政を担う官僚を目指す者、国軍や騎士団に入って武勲を狙う者。
お義兄様のように領主を継ぐ前に社会勉強として国の仕事を行うこともあれば、ガザニア先輩のように学園に残って研究や勉強を続ける場合もあります。
生徒によって卒業後に必要となる内容が異なるため、最終学年の授業は自由度が大きくなっているのです。
就職先が既に決まっている者はその職に役立つ知識や技術を学びます。
これから就職活動を行う人は就職に有利になるように成績を上げようと頑張る場合もあります。
人によっては、授業を最低限にして人脈作りに専念することもあります。
卒業後の準備に余裕のある者は、進路に関係の無い趣味的な活動を行う場合もあります。
逆に、必須の教科が不合格になっていたり、卒業に必要な単位数が足りていない人は必死になって授業を受けることになります。
私は就活を行う組になりますが、学年主席は伊達ではありません。既にいくつかの国の機関からオファーが来ています。
回答期限には余裕があるので、じっくりと考えることにしましょう。何なら学園に残って光魔法の研究をする手もあります。
卒業に必要な単位は二年生の時点で修得済みなので、空いた時間はゲームのイベント対策に回します。
個別ルートに入らなかったから危ないイベントは発生しない、となればよいのですが、発生してしまえば危険極まりないイベントがあるので対策を考えないでいるのは怖いです。
それから、ルートに関係なく発生する断罪イベントがどうなるかも分かりません。
ゲームと同じ罪状はこの世界では通用しません。そんな理由で断罪したら私が潰します。
問題は、別の罪をでっちあげて断罪する場合ですね。誰がどのような罪をでっちあげるか予測がつかないので防ぎようがありません。
そして、断罪を避けたとしても、その後カルミア様が暗殺される危険性は残ります。
カルミア様の護身術もだいぶ様になってきましたが、所詮付け焼刃です。プロの暗殺者相手に正面から撃退すると言うのは無理です。
もう少し対策を考えたいところです。
状況を見定めて、追加の対策を考え、準備する。そのための時間の余裕を確保しました。
私を含めて、成績上位者の中には三年生の授業をほとんど受けない生徒は多くいます。
授業を受けなくても卒業できるからと言うだけでなく、成績にもほとんど影響しないからです。
卒業に必要な単位を全て修得済みと言うことは、標準的なカリキュラムでは三年生で受ける授業の単位も修得済みと言うことです。
三年生の成績には、そうして前倒しで修得した単位も加味されます。
それに、最終的な成績は、三年分の成果を総合して付けられます。二年間の蓄積で開いた差を最後の一年で覆すことは容易ではありません。
三年生の授業を前倒しで終わらせている成績優秀者はほとんどの成績を確定済みなので、いまさらじたばたする必要は無いのです。
ただし、毎月発表される成績順位には、二年生までに履修した授業の成績は考慮されません。
去年のニゲラ殿下が経験したように、毎月の成績では高い順位なのに、学期末の成績で順位を落とすといったことがより極端に発生します。
月毎の成績上位には、卒業に必要な単位を確保するために必死に授業を受ける生徒、最終的な成績を少しでも上げようと最後まで足掻く生徒、特に必要はなくても知見を広めるためや趣味のために授業を受ける生徒などが並びます。
逆に下位に並ぶのは、必要な単位を前倒しで修得して授業を受ける必要が無くなった生徒と、色々と諦めて足掻くのを止めた生徒、頑張っても点数の取れない生徒になります。
こうなると、順位が当てになりません。
毎月発表される順位は、学期末や卒業時の成績とはほとんど関係なくなるからです。
もう、三年生に対しては毎月の順位を発表しなくても良いのではないでしょうか?
ゲームでは月毎の成績はそのまま学期末の成績に直結していましたが、まあゲームではヒロインのパラメータだけで成績を決めていましたからね。
Aクラスには三年生になってほとんど授業を受けなくなった生徒も多数います。
もちろん、卒業とは関係なく授業を受ける生徒や、三年生の授業を前倒しで取らなかった生徒もいます。
ですが、多くの学生は余裕があれば前倒しで単位の修得を行います。
そうした方が後々楽になるだけでなく、教科によっては授業を免除されて試験の結果だけで合格を貰うことができます。
全部知っている内容の授業を受けなくて済むのはメリットです。
卒業に関係の無い授業を受ける生徒は少なく、人脈作りも貴族の重要な仕事なので余裕があれば社交に力を入れる生徒も多いです。
……優等生のはずのAクラスでも、空いた時間を遊び惚ける人もいますが。
この傾向は魔法科でも普通科でも似たような状況で、授業をほとんど受けずに園芸部を優先しているカルミア様もさして目立ってはいません。
騎士科はちょっと特殊なので別です。
騎士科では優等生も落ちこぼれも時間があれば剣を振っています。
座学は卒業できる最低の成績があれば十分で、実技の成績こそが全て。
生徒だけでなく、騎士科の教師がそんな考えです。
騎士科でも毎月成績順位は発表されるのですがほとんど気にされることは無く、それよりも実技の試合の結果による順位の方が重視されます。
学園の卒業生は一兵卒ではなく士官とか武官とかになるのだから個人の武芸だけでなく頭の良さも必要になると思うのですが、これで良いのでしょうか?
騎士科の特殊な事情は置いておくとして、三年生になると成績優秀者の多くが授業をあまり受けなくなる傾向があります。
つまり、これまで成績が低迷していた者でも毎月発表する順位だけならば上位に躍り出るチャンスです。
最終的な成績にはほとんど関係の無い意味の無い順位なのですが、一時だけでも優等生の気分を味わおうと挑戦する人もいるそうです。
当然、最初から成績の良いものが授業を受けまくれば確実に上位、そしてトップも狙えます。
学年主席に拘るニゲラ殿下ならば、一時の栄華を求めて不要な授業を受け続けて仮初の学年一位に……なっていませんね。
さすがに去年で懲りましたか?
去年の殿下は成績を上げようと興味の無い授業まで数多く受けていました。一年生の時は小ばかにしていた教科にも手を出していました。
たぶん、ニゲラ殿下は学園の授業を舐めていたのではないかと思うのです。
王族であるニゲラ殿下は入学前から高度な教育を受けています。Aクラスに入れられた生徒はだいたい似たようなものでしょう。
一年生の頃には退屈に思える授業も多かったことでしょう。
ただ、各家で行われる教育は、一般教養+その貴族家で重視している分野に偏ります。
王族であるニゲラ殿下は、将来国王となって国を治めるために必要な教育を幅広く受けてきたはずです。
そうした王家の教育に含まれない内容の授業を、取るに足らないものと考えたのかもしれません。
事前に教育を受けていた授業と同様に、簡単に好成績を修められると考えていた授業で、予想外に苦戦することになったのです。
二年生の後半、ニゲラ殿下は低下した成績順位を取り戻すために、興味も無く卒業後に使うこともない勉強を必死になって頑張ったのです。
それに懲りたら、無差別に授業を受けることは止めるでしょう。
それでも、学年主席に拘りを見せていた殿下ならば、少しでも成績を上げようと卒業には不要な授業を受けると思っていました。
成績をさらに向上するために授業を多く受けているのならば、毎月の順位は上位になるはずです。
ですが、そんな様子は見受けられません。
ニゲラ殿下は、何か心境の変化でもあったのでしょうか?
ニゲラ殿下の動向は、断罪イベントに関わってきます。
私から殿下に近付かない方針を変えるつもりはありませんが、ニゲラ殿下の動きには注意する必要がありそうです。




