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花咲く王国で恋をしない ~乙女ゲームの世界のヒロインに転生した元男ですが、何をすればよい?~  作者: 水無月 黒
第二章 二年生編

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第三話 ダンジョン演習1

・2025年1月5日 誤字修正

 誤字報告ありがとうございました。


ブックマーク登録および「いいね」ありがとうございました。

 魔法科では一年生の間は基礎となる魔力制御の訓練を徹底的に行います。

 基礎訓練に合格して、二年生に進級するとそれぞれの系統の魔法を実際に教わることになります。

……私は一年生の時から治癒魔法を習っていましたが、これはかなりの例外です。

 二年生になって、魔法を習ってから一定の実力を認められると、正式に魔法を使用する許可が下ります。

 この際、生徒には『杖』が授与されます。『杖』と呼ばれていますが、魔法の制御を補助する手のひらサイズの小さな器具です。

 去年の臨海学校の騒動で、ガザニア先輩が使っていたあれです。

 杖を授与された学生は、学園内での魔法の使用制限が緩和されると同時に、魔法を使った際の責任が重くなります。

 杖を持たない生徒は原則として学園内での魔法の使用が禁止されています。危険性の無い初級魔法は黙認されているようですが。

 私は一年生の間も結構魔法を使っていましたが、ほとんどが教師の指示に従って使用していました。何かあれば責任を取るのは教師になります。

 ですが、教師の指示や許可を得ず、やむを得ない事情もないのに魔法を使うとお説教が待っています。

 実は、林間学校の時のカメリアさん達を覗いた……いえ、遠くから見守った魔法も、ばれたら叱られました。実害の無い魔法なので注意程度でしょうけど。

 競技関係でしばしば風魔法で()()をしていたケールは何度か見つかって説教を喰らっていました。

 けれども、杖を授与された生徒は、魔法の行使が自己責任になります。

 私の場合、教師の指示を待つことなく怪我人の治療を行うことができるようになります。

 そして、治癒魔法を誤って悪化させたり、治療を行わないことで問題が発生した場合も責任を問われることになります。

 特に、危険な攻撃魔法の扱いは厳しく、騎士科の抜剣と同様に正当な理由なく攻撃魔法を放とうとしただけで最悪退学になることもあります。


 杖を授与されるには、魔力制御の基礎訓練――滝行に合格することと、中級以上の魔法が使えるようになることが条件です。

 魔法を習うのは二年生になってからだから、杖を授与されるまでには時間がかかりそうに思えますが、既に杖を受け取った生徒は何人かいます。

 学園で魔法を習うのは二年生になってからですが、入学前から何らかの魔法を使えるようになっている生徒は珍しくありません。

 火魔法を使うニゲラ殿下、土魔法に覚醒したローレル、風魔法をこっそり使っていたケール他何名かが杖を受け取りました。

 もちろん私も杖を受け取っています。一年生の時から散々治癒魔法で治療を行って来たのです。実績は十分です。

 この、杖を持つ魔法使いは、基本的に戦闘要員です。

 元々、戦闘に利用できる魔法を習得した者に与えられるのが『杖』なのだそうです。

 だから、戦闘用ではない初級魔法が使えるだけでは杖を与えられませんし、杖を持たずに研究や生産に携わる魔法使いもいます。

 カルミア様の植物魔法は戦闘に使用できない系統とされているので、魔法科に入学していたとしても杖を持たないまま卒業したでしょう。

 私の場合、治癒魔法が使える時点で戦闘要員です。

 治癒魔法の使い手はほぼ教会にしかいませんが、教会保有戦力である聖騎士団(テンプルナイツ)には治癒魔法の使い手が組み込まれていて、戦えばとてもしぶといと評判です。

 国同士の戦争には加担しないことを宣言している教会ですが、魔物討伐目的では戦闘用の治癒魔法使いを派遣することもあります。

 回復要員がいれば少人数の部隊でも高い継戦能力を維持できることが知られており、治癒魔法もまた戦闘用の魔法と認識されているのです。

 さらに私は、騎士科の剣術の授業も受けて合格しているので、帯剣も認められています。

 剣と魔法を使いこなす、どこの勇者様だというスペックに私は近付いています。

 私、乙女ゲームのヒロインですが、何か?

 この世界は危険に満ちています。人間同士の争いだけでなく、魔物の脅威もあります。

 貴族は有事の際には国と民と王家を守るものとされています。

 それが建前であっても貴族の義務であり、貴族は戦う力を身に付けることが推奨されています。

 だから、魔法に関しても攻撃魔法などの戦闘向きの魔法が尊重される傾向があります。

 戦闘向きの魔法使いに杖を与えることもその一環です。

 また、剣士が剣を抜くことで戦闘モードになるように、魔法使いは杖を構えることで戦闘用に意識を切り替える意味もあるそうです。

 魔法は使い方次第で戦局を一変する可能性を秘めた強力な武器です。

 だから、有事に備えて戦闘技術を磨いておく必要があります。

 同時に、その高い戦闘能力を不用意に振るってむやみに人を傷付けることのないように自制する必要があります。

 その一環として、今後は魔法を使用する際には杖を持ちます。

 魔法使いが戦闘を行う際には杖を持つ。杖を持たない時には魔法を使わない。

 そのように訓練することで、魔法を放つ際にまず杖を手に取る習慣を付けます。

 平時は、頭に血が上ったとしても魔法を放つ前に杖を取る。ワンクッション入れることで冷静さを取り戻す。

 有事には、杖を手にすることで戦う覚悟を決める。

 そんな使い方もする杖です。


 さて、杖を授かった生徒は特別な実戦訓練を受けることができるようになります。

 それは、ダンジョン探索です。

 この学園には、なんとダンジョンがあります。

 正確には、ダンジョンの入口が学園の敷地内にあるのです。

 元々は、王都の真ん中に見つかったダンジョンを管理・研究するために作られた研究施設がブルーローズ学園の始まりなのだそうです。

 ダンジョンは、その内部に多数の魔物を抱え、時にその魔物がダンジョンから溢れ出してくることもある危険なものです。

 王都の内部から魔物が湧き出してきたら大変なことになります。

 だから、ダンジョンを監視し、時には魔物が溢れないように間引きを行い、万が一の時には溢れ出ようとする魔物を食い止めるための施設が作られました。

 また、ダンジョンは危険なだけでなく利益ももたらします。

 魔物を倒して得られる素材、珍しく有用な草木、魔力を含む希少な鉱物、なぜか設置されている宝箱から現れる不思議な魔道具(マジックアイテム)

 そう言ったダンジョンから得られる物を有効に活用するための研究施設が併設されました。

 さらに、ダンジョンを探索したり魔物と戦う者や研究者を養成するための教育施設が追加されました。

 その教育施設が拡張され、ダンジョンと関係なく貴族全般の集合教育を行うようになったのが今のブルーローズ学園です。

 実は、このダンジョンは未踏破で最深部に何があるのか誰も知れません。

 けれども、このダンジョンから魔物が溢れ出したことは一度も無く、特に浅い階層では弱い魔物しか出てこないこともあって、比較的安全なダンジョンだと考えられています。

 今では学生の戦闘訓練に利用されるほどです。


 この、ダンジョン実習はゲームにもありました。

 育成パートで、二年生に進級した後に追加されるのが「ダンジョン探索」です。

 ダンジョンに入ってランダムエンカウントするモンスターを倒せばパラメーターが上昇します。

 ダンジョン探索では、攻略対象を誘って一緒に探索することが可能で、一緒に探索すれば好感度が上がります。

 また、探索に誘った相手のパラメータも上がるため、戦力の底上げのためにも利用できます。

 ゲームでは攻略対象の育成は直接はできません。

 恋愛イベントのボーナスでパラメータが上がるのと、好感度が上がるとヒロインの授業に現れてパラメータの加算があるだけで、それ以外ではパラメータの上昇はゆっくりしたものになっています。

 だから、好感度を上げず、恋愛イベントも起こさなかったり失敗させたりしているとパラメータが低くて弱いままになってしまいます。

 ですが、バトルパートでは攻略対象の五人と共に戦闘を行うことが多いので、仲間が弱いと戦闘が大変になります。

 特に、狙った相手以外は見向きもしない「一途な愛」プレイをしていると、戦闘(バトル)イベントが増える後半戦で苦労します。

 ぬるいゲームなのでバトルで負けても死にはしませんが、勝たなければ見れないエンディングもあります。

 一度にパラメータを大きく上げることのできるダンジョン探索はその救済措置も兼ねていました。


 このダンジョン演習ですが、チュートリアルがあります。

 ゲームでもありましたが、この世界でもダンジョン演習の最初の一回はチュートリアルです。

 学校側で決めたメンバーに教師も同伴して、決められた範囲内でダンジョンを探索します。

 今回のメンバーは、ガザニア先輩、ニゲラ殿下、ローレル、ケール、そして私。同行する教師は、アスター先生。

 何だか、見事に生徒会メンバーです。いないのは非戦闘員のカルミア様だけです。

 このうち、アスター先生は引率というか付き添いで、想定外の事でもなければ基本的に手出しはしません。

 ガザニア先輩はダンジョンの経験者として指導を行います。

 指導を受けるのが私達になります。

 別に、狙って生徒会役員を集めたわけではなく、成績優秀者で早期に杖を授与された者を集めたら生徒会役員だったということです。

 優秀な生徒を早目に育てて、他の学生の指導に当たらせようという考えです。

 今のガザニア先輩の役割です。

 ダンジョン探索の成績が良ければ、来年の後輩や早ければ後発の同級生の指導を私達が行うことになります。

 ダンジョンは魔物との戦闘を実体験し、実戦経験を積むことのできる場です。積極的に探索したいと思います。

 確実に指導する側になると思うので、ガザニア先輩の指導法をしっかりと覚えさせてもらいます。


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