閑話 悪役令嬢の憂鬱
・2025年11月17日 誤字修正
誤字報告ありがとうございました。
ブックマーク登録および「いいね」ありがとうございました。
みなさんごきげんよう。
カルミア・ラバグルトです。
ほとんど何も手を打てないままに二年生に進級してしまいました。
本当に小説の世界なのかと疑うほどに、小説通りの出来事が起こりません。
状況、人物、世界背景など完全に一致するのに、物語だけが同じように進みません。
そもそも、私が前世の記憶を思い出した時期が遅すぎました。
そのため、小説では入学前に行っていた準備が一切できず、最初から行き詰ってしまいました。
それでも、どうにかしてここから挽回しないと私の命がありません。
別に、何から何まで完全に小説の通りに行う必要はないのです。
小説のエピソードの中には失敗に終わった試みや生存には関係ないサブストーリーも幾つも存在します。
ただ、最も有効な方法が使えないことが痛いです。
それは、イチゴ大福を配ることです。
私の取り巻きになるような人は、権力におもねる者です。
あくまでニゲラ殿下の婚約者であり、ラバグルト公爵家の令嬢である私に寄って来たのです。
婚約破棄され、公爵家からも見放されたら皆私から離れて行くでしょう。
多少の友情を育んでいても、親の意向には逆らえません。
ところが、ここにイチゴ大福が加わると話が変わってきます。
前世の、つまり異世界の知識で作ったイチゴ大福は、他では手に入らないスズラン商会だけの独占商品です。
こうした独自の商品を武器に、スズラン商会は王都でイントリーグ家と直接取引をする大商会にまで成長しました。
特にスズラン商会の代名詞となったイチゴ大福はその人気に生産が追い付かず、大貴族でも入手困難なほどに品薄になっていました。
そのイチゴ大福を学生に手土産として持たせることで「さすがはラバグルト公爵家」と感心されるのですが、目聡い者はそれがラバグルト公爵家ではなく、カルミア個人のコネであることに気付きます。
その結果、断罪イベントの後も味方となって協力する者が現れた……と言うのが小説の流れです。
ですが、現状イチゴ大福はおろか、スズラン商会そのものがありません。
たとえ今からイチゴ大福を作ることができたとしても、私の後ろ盾になる組織としてのスズラン商会が存在しないため意味がありません。
美味しくできたイチゴ大福を配っても、「珍しい食べ物を貰った」以上の感想は出ないでしょう。
無いものをねだっても仕方がありません。
今は、小説のストーリーに囚われることなく生き延びる道を探さなければなりません。
そのためにまずは現状を確認しようと情報収集に努めていたのですが、私の関わっていないところでも小説と食い違っていました。
小説との食い違いの中心は、間違いなくフリージアさんでしょう。
フリージアさんが問題を起こさないのです。
普通ならばそれが当たり前です。誰だって好き好んで問題を引き起こしたりしません。
しかし、小説の中の彼女は、ゲームのヒロインとして振る舞います。
ご都合主義な偶然も合わさって、ニゲラ王子や他の攻略対象と急速に親しくなります。
けれども、それは貴族としての作法やマナーに反した行為を繰り返した結果です。
貴族の作法や礼法はわずらわしいだけの無駄で無意味なものではありません。ちゃんとした意味と由来があります。
マナーやエチケットは互いに不愉快な状況を避け、不要なトラブルを防ぐための指針です。守らなければ不快に思う人が現れます。
それを無視するヒロインは、よく言えば貴族の慣習にとらわれない自由な存在、悪く言えば非常識で傍迷惑な人物です。
小説では当初、極力ヒロインと接触しないように行動します。
ゲームで悪役令嬢が断罪される理由は、「ヒロインを虐めたから」です。
断罪されないようにヒロインと関わらない作戦ですが、これは失敗します。
ヒロインの非常識にニゲラ王子が乗っかって問題を起こすからです。
立場上、ニゲラ王子が何かやらかしたら後始末をしなければならないので、必然的にヒロインに対しても注意や指導を行わざるを得ないからです。
そうした小説の知識を基にして考えると、フリージアさんが何も問題を起こさない状況は異常です。
いえ、私としてはとても助かるのですが。
小説と同じ騒動が起これば多くの人が迷惑を被ります。王族の影響力は多大なものがあります。
そして、その後始末は私に回ってきます。小説で描かれた以外にも面倒な後片付けをする必要がありそうです。
また、小説で行われた断罪は冤罪でしたが、その理由とされた「ヒロインに対する虐め」は実際に行われたことになっています。
小説のヒロインは一部の男子以外の多くの生徒から嫌われていました。
彼女が元平民だから、ではありません。
元平民だからと貴族の作法を無視し、一方で伯爵家の娘になったのだからと貴族扱いを要求する。
そんな良いこと取りをやっていれば嫌われもするでしょう。
その上、ニゲラ王子を唆して迷惑な騒動を引き起こした張本人です。
虐めなどしない品行方正な人でも、敬遠したり、嫌味を言ったりくらいはしたくなります。
悪役令嬢が裏から指示しなくても、彼女の言動に腹を立てた誰かが軽率な行動に出ても不思議はありません。
ですが、この世界のフリージアさんはそうした問題行動を起こしていません。
ニゲラ殿下を煽って問題行動を起こさせることもありませんし、貴族に列せられたことに驕ることもありません。
貴族としての作法や言動に不慣れなことは確かですが、不慣れなことを自覚して真摯に学ぶ姿勢には好感が持てると、周囲からはおおむね好意的に受け止められているようです。
フリージアさんが嫌われておらず、虐めも受けていないのならば断罪の理由が無くなります。
とても良いことなのですが、小説の物語から離れすぎていて、ちょっと不気味です。
それに、良い事ばかりではありません。
実は、私の考えていた対策のほとんどがヒロインの暴走を止める方法だったので全て不発に終わりました。
結局、何もしていないのと大差ない状態です。
そして、小説の知識に基く予測が外れるので、対策自体がやり難くなってしまいました。
事前に行った準備が無駄になってしまうので、あまり目立つことはできません。
小説通りに問題が発生したら、事前の準備を利用して早期に問題に対処することができます。
そうして実績を上げて行けば、多少目立つ対策を講じても許容される程度の信頼は得られる予定でした。
そうした予定がすべて白紙に戻ってしまいました。
そして何より、このままではバジル様が登場しません!
小説において悪役令嬢を助けるキーパーソンとなるバジル・チャールストンは、義妹の非常識な言動に疑念を感じて調べ始めるところから物語に関わってきます。
暗殺者から逃げる際に助けてくれるバジル様が、フリージアさんが普通に良い子であるために登場しないとなると少々不安です。
それに、断罪は悪役令嬢を排除するために行われたことで、「ヒロインを虐めた」ことは口実に過ぎません。
ヒロインが虐められていなくても別の罪をでっちあげて断罪されるかもしれませんし、断罪無しで暗殺者が送り込まれてくるかもしれません。
小説では、断罪の後王都のラバグルト公爵邸で自宅謹慎となったところで暗殺者がやって来る流れになっています。
自宅よりも学生寮の方が安全と言うのはちょっぴり悲しい現実ですが、断罪されない方が殺され難いことは確かでしょう。
それでも、悪役令嬢カルミア・ラバグルトは「ヒロインがどのルートを選んでも必ず死亡する」という設定なのです。
どういった経緯で殺されるか分からないので気が抜けません。
春が過ぎ、夏が過ぎ、秋が過ぎ、大きな事件も起きないままに年が明けました。
小説のエピソードは大部分が不発に終わりました。
ヒロインの巻き起こす騒動は、本人がおとなしいため起こらないか規模が小さくなりました。
一年生の時点で発生するトラブルは致命的なものはありませんが、後始末に奔走する必要が無くなって助かりました。
死亡エンド回避のための行動は、失敗に終わるものと今の私では実行不可能なものが多く、ほとんど進んでいません。
小説では最初の頃は試行錯誤をしているので、失敗した試みも多くあります。
それと、外部協力者と十分な資金が存在しないことは行動を縛る枷となりました。
小説内で語られたゲーム知識に基く対策は仕方ないとして、まずは信頼できる味方を作りたいのですが、なかなか難しいところです。
ラバグルト公爵令嬢という立場上、近寄って来る者はそれなりにいます。
ただ、いかにも「取り巻きです」といった風情の令嬢や、下心が隠れていない殿方といった方々ばかりで、いざという時に頼りになるかと言えば微妙です。
長いものに巻かれに来るような人達なので、断罪イベントが発生したら他人のふりをするか、私に罪を押し付ける証言をするでしょう。
それでもいざという時までは協力してくれるので、小説の知識とも照らし合わせて、なるべく害のない人を選んで確保しています。
そんなこんなで、小説の物語から外れまくった学生生活は、一年生の終わりにとびっきりの想定外が起こってしまいました。
それは、生徒会長選挙です。
この学園の生徒会長は、原則として先代の生徒会長が指名した人物が就任します。
ただし、指名された人物に不満があるか、自分が生徒会長になって何かしたい人が立候補して候補者が複数人になれば選挙が行われます。
この生徒会長選挙のエピソード自体は小説にも存在します。
ですが、対立候補として立候補する小説のヒロインと、今のフリージアさんの行動が違い過ぎて、生徒会長選挙は起こらないのではと思っていたことが一つ。
そして、もう一点。対立候補の一人として、なぜか私の名前が挙がったことです。これは完全に予想外でした。
本当に、どうして?
詳しく聞いてみると、推薦による擁立が行われていました。
想像以上に評判が悪化していたニゲラ殿下が生徒会長に就任することを危惧した一部の生徒が、対立候補を立てたのです。
魔法科の生徒を中心に、魔法科の学年主席であるフリージアさんを。
普通科の生徒を中心に、普通科の学年主席である私を。
それぞれ、推薦したのです。
この学園の、次期生徒会長を推薦する制度には問題があるようです。
推薦を受けた側には拒否権が無いのです。
元々は現生徒会長が次期生徒会長を指名するための推薦制度でした。ただ、生徒会長以外の生徒でも正しく手続きを踏めば推薦することができたのです。
生徒会長不在の年を作らないために、指名を受けた者は選挙で落選しない限りは生徒会長に就任する義務があります。
その同じ義務が、同じ制度を利用して対立候補として推薦された者に対しても適用されました。
こうして、ニゲラ殿下、フリージアさん、そして私の三つ巴の選挙戦が始まったのです。
正直、ニゲラ殿下の評判がここまで悪いとは思いませんでした。
小説でも色々とやらかして評判を落としていましたが、王族相手に正面から反対を表明するほどではありませんでした。
しかし、この世界では「学年主席の成績優秀者が生徒会長になる」という慣習を大義としていますが、ニゲラ殿下に否を突き付けています。
この差は、フリージアさんの言動に原因があると思います。
小説では、ヒロインとして破天荒な言動をする彼女が近くにいるため、ニゲラ王子のやらかしが霞んでしまっていたのでしょう。
王子の問題のある言動も、非常識な元平民が原因と言えば納得する貴族も大勢います。
ですが、この世界のフリージアさんは非常識な言動で問題を起こしていません。
その分、殿下のやらかしも小説よりもおとなしくなっていますが、殿下自身に問題があることが明白になってしまいました。
この生徒会長選挙は、ニゲラ殿下に勝ってもらわなければなりません。
理由はいくつかありますが、基本的に貴族社会は身分が高いものが上に立たないと何かと支障をきたすのです。
特にフリージアさんが生徒会長に就任した場合、様々な場面で生徒会の意向に逆らう生徒が現れるでしょう。
学園の多くの行事に関わる生徒会が機能しなくなると、多くの生徒の学生生活に支障が出ます。
私が生徒会長になる分にはそこまでの心配はありません。まあ「女の言うことなど聞けるか!」と思っている殿方はそれなりの数いますが。
けれども、一番の問題はその気になっているニゲラ殿下が落選することです。
最初から殿下にその気がないのならば問題にはなりません。
ですが、生徒会長就任を自分の実力を示す実績のように考えている殿下が落選すると、間違いなくごねます。
何かを為そうとするときに頭になるべき身分の高い人間を置く理由は、反対派の貴族の妨害を退けるためです。
ニゲラ殿下が生徒会の方針に反対の意向を示せば、他の生徒にも反対する大義名分ができてしまいます。
そうなると、フリージアさんの場合はもちろん、私が生徒会長になった場合でも生徒会の運営が厳しくなります。
物事を成功へと導くことは困難を伴いますが、失敗させるための方策ならば幾らでも考えられるものです。
最悪、生徒会活動の失敗を理由に私の断罪が行われるかもしれません。
ニゲラ殿下の行動に不安があるからこそ、生徒会長に祀り上げる必要があるのです。
生徒会のトップにニゲラ殿下がいれば、実際に動くのは他の者、それこそフリージアさんであっても他の生徒は従い、正常に運営されます。
私はニゲラ殿下に生徒会長になってもらった上で、私も生徒会に入って殿下の方向修正を行う覚悟を決めていました。
ここで問題になるのが、フリージアさんの動向でした。
小説と比べれば別人のようにまともなように見えるフリージアさんですが、まともなだけにニゲラ殿下が生徒会長に就くことに反対するかも知れません。
私が当選することを回避できても、フリージアさんが生徒会長になってしまったら、次の一年間心休まる時はないでしょう。
私はこれまで控えていた、フリージアさんへの直接接触に踏み切りました。
「率直にお聞きします。貴女は生徒会長になる気はあるのですか?」
「生徒会長にはニゲラ殿下、副会長にカルミア様がふさわしいと思います。」
実際にあって見ると、フリージアさんの認識は私と一致していました。
とてもまともで、現状を理解しています。
小説における頭のねじの緩んだヒロインどころか、ニゲラ殿下や下手な貴族の子弟よりも正しく理解しています。
利害の一致した私達は、その場で協力関係を結びました。
どうにかして、ニゲラ殿下を当選させること。
ニゲラ殿下を会長とする生徒会に二人とも入り、殿下の無茶を見張って方向修正すること。
そうした私達の行動を、ニゲラ殿下に気取られないこと。
基本方針を決めて、即座に行動を開始しました。
既に選挙活動を始めているニゲラ殿下は、対立候補を擁立した人達が危惧したような発言を気楽にしています。
このままだと殿下が勝手に自滅しかねないので、急いで手を打ちます。
まず、私を推薦した人のところへ行って殿下を当選させなければならないことを説明しました。
なかなかに難航しました。
殿下を役職に就けずに放置する危険性を説き、私も生徒会に入って殿下を抑えることを約束してどうにか納得してもらいました。
後は少しでも殿下に入る票を増やすために、人脈を駆使して影響力のある人から順にお願いして行きます。
この手の裏工作は元庶民のフリージアさんよりも、公爵家令嬢の肩書を持つ私の方が広範囲に行うことができます。
ただ、ニゲラ殿下に気付かれてはいけないという縛りはきつく、根回しは難航しました。
それでも、私とフリージアさんとニゲラ殿下自身、それに間違いなく現生徒会長の兄様もニゲラ殿下を生徒会長に当選させようと動きました。
無事ニゲラ殿下が当選しました。
ですが、フリージアさんが本気で生徒会長の座を狙っていたら危なかったかもしれません。
選挙は終わりましたが、忙しいのはそれからです。
新生生徒会のメンバーが選ばれ、予定通り私とフリージアさんも生徒会入りしました。
生徒会でも殿下の尻拭い役ですが、それは生徒会に入っていなくても同じことです。
殿下の近くで見守って、何かやらかす前に手を打つこともやり易くなります。
入学してから学科が分かれて、殿下の行為に対するフォローが後手に回って大変でした。
フリージアさんが問題を起こさないことと合わせて、だいぶ負担が減ったと思います。
……このままフリージアさんが問題を起こさなければの話ですが。
ニゲラ殿下は当選したことで満足してしまっていますが、すぐに生徒会の仕事が始まります。
三月中はまだ正式には生徒会が発足していませんが、現生徒会の手伝いの形で仕事をします。
殿下に代わって生徒会の仕事を覚えなければなりません。
兄様は私のことを嫌っていますが、公私混同は行いません。生徒会の仕事はしっかりと教えていただきました。
現生徒会の最期の仕事である卒業式と卒業記念パーティーが終わると、そのまま入学式の準備に入ります。
卒業記念パーティーまでは現生徒会の仕事を手伝う形でしたが、入学式の準備からは新生徒会が中心となり現生徒会(既に旧生徒会といった感じですが)はそのサポートに回ります。
実際に仕事をしてみて分かりましたが、この生徒会で実質的に動くのは私とフリージアさんになりそうです。
ニゲラ殿下は実作業よりも意思決定が仕事になります。生徒会長という立場としても、王族という身分からしてもそれを求められます。
殿下は頭は良いのだから、普通に生徒会長をやっていれば大過なく務まると思います。ただ、変な企画を立ち上げたり、思い付きで既存の行事に手を加えようとしたら厳しくチェックして駄目出しをしないと大変なことになります。
ローレルさんは殿下の護衛なので、殿下と離れて一人で作業を行うことはできません。
殿下の仕事を手伝うことも難しいでしょうから、かなりの戦力外になります。
力仕事があればかなり頼りになるのでしょうけれど、生徒会の仕事ではありません。
ケールさんは、商人貴族と名高いイントリーグ家の令息だけあって、金勘定は得意だそうです。予算関係の仕事では活躍しそうです。
ただ、お金の絡まないことに関してはあまりやる気は出ないようです。
……イントリーグ家は王都の悪の相元締めと言われることもある名家なので、あまりやる気を出されても不安になります。
消去法で、私とフリージアさんが作業することが多くなります。
私は殿下の監し……いえ、支援をしなければならないので、各所を回って連絡や調整を行うのはフリージアさんの役目になります。
フリージアさん個人では、元平民と言うこともあり言うことを聞かない生徒もいるでしょうが、ニゲラ殿下を会長とする生徒会の一員としての彼女を蔑ろにできる者はこの学園にはいません。
それだけに、フリージアさんの言動が正しく生徒会の意を酌むものでなくてはなりません。彼女の不手際は最終的に殿下の責任になります。
だから、彼女とはよく話し合いました。
そして、話しているうちに妙な違和感を覚えました。
フリージアさんの言葉の中に、時々ちょっと変な言い回しが入るのです。
他の人ならば、「元平民だからたまに変な言葉が混じるのだろう」と納得したでしょう。
ただ、そのちょっと引っかかる言い回しを日本語に訳してみると……前世の日本で使用されていた表現になるのです。
試しに、こちらからも日本で使われていた言い回しを交えて話してみると、日本語での意味に対応する答えが返ってきます。
上手くすれば他人には分からない秘密の会話ができそうです。ただ、私はあまり変な言い回しをすると不自然になってしまいますが。
フリージアさんが私と同じ転生者であることは間違いないでしょう。
私は、生徒会の仕事が一段落したころを見計らって二人きりになる状況を作り、直接聞いてみることにしました。
「フリージアさん、貴女は転生者なのですか?」
「はい、そうです。」
あっさりと認めました。
彼女は自分以外にも転生者がいないか探すためにあのようなことをしていたそうなので、まあ当然の反応です。
予想通りと言えば予想通りなのですが、予想外のこともありました。
フリージアさんの認識では、この世界は小説ではなく、乙女ゲームの世界だというのです。
架空の乙女ゲームである『花恋』が実際に作られた別の日本からの転生者!? と、驚きましたが、『死嬢』を元に作られた乙女ゲームだそうです。
私の記憶では、ゲーム化もアニメ化もされていなかったはずなので、たぶん私の死後に行われたのでしょう。
あー、前世の私は長生きできなかったのねー、と改めて思います。
死んだ時の記憶はないのですが、過労死とかでしょうか? そこまでブラックな会社ではなかったと思うのですが。
今生では、どうか長生きさせてください!!
しかし、私の運命の鍵を握っているのはフリージアさんです。
フリージアさんがゲームの展開を知っていると聞いて、私は少し身構えてしまいました。
彼女がその気になればゲームのシナリオ通りに進めることも難しくないでしょう。
ニゲラ殿下狙いではないことは間違いないでしょうが、ゲームで追加された隠しキャラ狙いとかになると私には全く分かりません。
そして、ゲームのシナリオ通りに進めば、どのルートに進んでも私は死にます。
それを警戒していたのですが、どうやら杞憂に終わりました。
フリージアさんはゲームのシナリオを進める気はないそうです。それどころか、学園で恋愛する気もないのだとか。
乙女ゲームのヒロインとして生まれて、それでいいのかと思わないでもないですが、私の生き延びる可能性が増えるのだから有難いことです。
フリージアさんの協力を得て、少し希望が見えてきました。
何としても、生き延びましょう。




