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花咲く王国で恋をしない ~乙女ゲームの世界のヒロインに転生した元男ですが、何をすればよい?~  作者: 水無月 黒
第二章 二年生編

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第一話 進級

掲載再開します。

二年生編からは戦闘も増えるので念のためR15を設定しました。


ブックマーク登録および「いいね」ありがとうございました。

 四月になりました。

 私達は無事進級して二年生になりました。

 入学式も終わり、後輩となる新入生も入ってきました。

 新生生徒会の初仕事、入学式も無事に終わりました。

 新入生を迎える祝辞は、生徒会長となったニゲラ殿下の仕事です。

 王族だけあって、こういう場ではなかなかに様になっています。

 祝辞の内容はカルミア様が頑張って添削したので、去年のガザニア先輩の祝辞よりも無難です。

 ニゲラ殿下の祝辞に対して、新入生からの答辞を行ったのはアイビー・フラワーガーデン殿下。ニゲラ殿下の弟君です。

 図らずも兄弟対決が実現してしまいました。

 いえ、別に闘っているわけでもありませんが。

 ただ、ニゲラ殿下はアイビー殿下を妙に意識しているように見えました。

 アイビー殿下には私のような異物がいなかったので、何の問題も無く事前(プレ)試験で学年主席になっています。

 私とカルミア様に抜かれて三位だったニゲラ殿下にとっては気に入らない点なのでしょう。

 そのうち、「兄より優れた弟など存在しない!」とか言い出さないでしょうか?

 それにしても、王族は大変です。

 生徒会長にしても、こういった場面での生徒代表にしても、王族であるというだけでその立場を求められます。

 ニゲラ殿下も、アイビー殿下も、主席になれるようにたくさん勉強したのでしょう。

 まあ、私だって将来がかかっています。学年主席を譲る気はありませんよ。


 さて、今年はどう過ごしましょう?

 二年生になると、戦闘(バトル)イベントも増えます。

 去年のチュートリアルバトルと異なり、相手は魔物だったり武装した賊だったりするので油断ができません。

 幸い魔法の実技は色々とすっ飛ばして進んでいますので、このまま攻撃魔法まで習得しておきましょう。

 恋愛イベントの方はこれまで通りスルー出来る限りスルー、潰せる限り潰します。

 学内で道に迷って攻略対象に送られるイベントはきっちり潰しましたよ。

 そろそろ好感度が足らずに発生しないイベントも出て来るはずです。

 ただ、今年はルートを確定するイベントが発生します。

 間違えて誰かの個別ルートに入らないように気を付けましょう。

 特にアスター先生は好感度だけは上がりまくっていますから要注意です。

 一方、ローレルルートはカメリアさんが爆進しています。

 私が何かしなくてもカメリアさんが勝手に進めてくれるのでとりあえず静観します。

 私自身もシナリオを引っ掻き回していますし、カメリアさんが進めていることもイレギュラーです。もうゲームのイベントに合わせなくてよいでしょう。

 ローレルはカメリアさんに任せます。

 可能であれば、ローレルがニゲラ殿下の言いなりから脱却できるように誘導したいところです。


 生徒会に参加したことで、生徒会活動に時間を取られることになりました。

 ただ、そこまで負担にはならないと思います。

 生徒会は、関連する学園行事の無い時にはそこまで忙しくはありません。

 四月は入学式と各部活への予算配分くらいです。

 特に決まった仕事の無い時期は、週に一度の定例会で生徒会として対処する案件がないか確認するだけです。

 学生から生徒会への要望が上がってきたり、学園側から生徒会に対して要請があったり、時には生徒会が自主的にイベントを企画したり。

 そう言った案件が無ければ、議論らしい議論もせずに定例会は即座に終わります。

 ニゲラ殿下が無理に実績を作ろうとして変な企画を押し通そうとかしなければ、忙しい時期は限られています。

 まあ、ニゲラ殿下についてはそこまで問題にならないと思っています。

 殿下は生徒会選挙に力を注いだ結果、三学期の成績が落ちていたそうです。

 年間の成績しか発表されないので、私に次いで次席をキープしていますが、三学期の試験結果だけを見ると魔法科で三位に落ちていたということです。

 アスター先生からの情報なので間違いないでしょう。相変わらず口の軽いことで……

 生徒会長に就任した殿下は、しばらくは学業に集中して学年主席を目指すのではないかと思います。

 無理に生徒会活動を忙しくしなければ、そのくらいの余裕はあります。

 いくら成績優秀者を集めた生徒会でも、生徒会活動が負担になって学業が疎かになってしまっては本末転倒です。

 生徒会活動だけにそこまで時間を取られないように考えられています。

 去年の生徒会メンバーには、生徒会と掛け持ちで部活動も行っていた人もいるそうです。

 私も余裕があったら何か部活動をやってみましょうか。

 一年生の時は学業を優先して部活動は行っていませんでしたが、先輩後輩を含めた繋がりを作る上で部活動は有益です。

 幸い、二年生になった私は多少時間に余裕があります。

 一年間学業を頑張ったので、いくつかの科目が二年生や三年生で習う部分も含めて免除されています。

 この学園では、飛び級制度はありませんが、授業の内容を習得済みと判断されれば授業への出席を免除されたり、上の学年の授業や試験を受けることも認められています。

 貴族は入学前から家庭教師を付けて高度な教育を受けている場合もあり、学力の差が大きいためこのような制度があるそうです。

 実技はともかく、座学は試験を受けられるだけ受けて、合格をもらいました。

 これで二年生で受ける授業を減らすことができました。

 空いた時間は他学科の授業を受けるか、三年生の授業を受けるか、時間割を見ながらあれこれと考えてしまいます。

 ただ、授業を入れない完全に自由な時間も確保しておきます。

 これまでの自由時間であった放課後には、生徒会活動が入ります。

 何も無ければ暇な生徒会ですが、何か学園行事がある時には一気に忙しくなります。三月中は大変でした。

 ゲームでは二年生の時点ではまだ共通シナリオです。危険なイベントも多くはゲームの選択肢の範囲内では避けることができません。

 可能ならイベントの発生そのものを防ぐ、無理ならばせめて被害が最小限になるように備える。

 そのために暗躍する時間の確保です。

 何も無い時は剣術の訓練か、魔法の練習でもしていれば良いのですし。


 二年生の予定は四月の間に考えるとして、今は目の前の問題に集中しましょう。


「フリージアさん、貴女は転生者なのですか?」

「はい、そうです。」


 カルミア様の直球の問いに、私は真正面から即答します。

 ここは放課後の生徒会室。

 他の生徒会メンバーはすでに引き上げていて、カルミア様と二人きりです。

 生徒会の雑用係である私とニゲラ殿下の尻拭い担当のカルミア様は、遅くまで残っていても不思議ではありません。

 そうしたことを利用して、この状況は私が作りました。

 転生者云々に関しても、突拍子もない話ではありません。

 実は、私の他にも転生者がいないかと思って、時々「日本人ならばわかる言い回し」を会話の中に交ぜていたのです。

 それに反応したのがカルミア様でした。

 しかも、カルミア様からも同じように「日本語を知っていると分かる言葉」を返していただきました。

 一時期、お互いに噴き出すのをこらえるのに大変でした。

 まあ、ともかく、私とカルミア様は互いに転生者であることを認識していたのです。

 今は、答え合わせの時間です。


「それでは、この世界が物語の世界であることには気付いていますか?」

「はい、この世界は――」


「『花恋』の世界!」

「『死嬢』の世界!」


「え?」

「え?」


 いきなり認識が食い違っていました。

 まあ、小説かゲームかで大した違いはないと言えばないのですが。

 ですが、ここはぜひとも……


「すこし、情報を共有しておいた方が良さそうね。」



 私はカルミア様と意見交換を行いました。



「私の記憶では書籍化とコミカライズまでは知っていましたけれど……アニメにゲーム化までしていたなんて。」

「コミックがヒットした後で、アニメと並行してゲームの作成が始まったのですが、数年の差があるようですね。」


 カルミア様は「花恋」がゲーム化されたことを知りませんでした。

 前世でこの世界を描いた作品は、まず「死嬢」――「死亡エンドしかない悪役令嬢に転生したので、どんな手を使っても生き延びます」がネット上で公開されたことから始まります。

 ネット上で好評を博した「死嬢」は、加筆修正の上で書籍化され、その後コミカライズも開始されました。

 それから三年ほどしてアニメ化企画が立ち上がり、同時にゲームの作成が開始されました。

 カルミア様の前世の記憶ではコミック版までで、アニメ版の企画そのものを知りませんでした。

 私の方は、ゲームが発売された後まで記憶があります。

 おそらく前世での亡くなった時期が異なるのでしょう。

 ゲームの存在を知らなければ、小説の方の世界と思うしかないでしょう。

 カルミア様にとっては、「花恋」は小説の中の架空のゲームだったのです。


「ニゲラ殿下たちの声がゲームと同じでした。ゲームか同じキャストのアニメ版のどちらかです。ゲームオリジナルのイベントも発生したので、ゲームの世界で間違いないと思います。」


 Web版、書籍版、コミック版、アニメ版、多少の差異はあっても悪役令嬢(カルミア)視点で進む一本のストーリーです。

 ゲーム版だけがヒロイン(フリージア)視点で話が進み、選択肢次第で発生したりしなかったりする多数のイベントで成り立っています。

 このため、ゲーム版のイベントの多くが小説やコミックスには存在しないオリジナルのイベントなのです。

 頑張って発生させなかった恋愛イベントもありますが、ゲーム用に作成されたイベントが複数発生していることを確認しています。


「確かに私の方は『死嬢』の物語(ストーリー)通りに進まなくて不思議に思っていましたわ。一番違っていたのがフリージアさん関係でしたけど。」


 私が目指しているのは「死嬢」にも「花恋」にもない結末です。そのためにシナリオを破壊してきました。

 カルミア様から見てもシナリオ通りでないのならば上出来です。


「それで、フリージアさん。貴女の目的は何なのですか?」


 カルミア様がやや警戒しながら問います。

 無理もありません。

 私が「せっかく乙女ゲーの世界に転生したんだから、王子様を攻略しなきゃ」とか言い出したら、カルミア様は命の危機です。

 心配しなくても、ニゲラ殿下はこちらから願い下げですけど。


「私の目標は、平穏な生活です。内乱とか、人が大勢死ぬ大事件とかが起こらないことが理想です。」


 そもそも、カルミア様と二人きりで話すこの状況を作ったのは私の方です。

 カルミア様が受け入れられないような話をするつもりはありません。

 当然カルミア様もそのことは分かっていたのでしょうが、私の返事に安堵した様子を見せます。

 たぶん、カルミア様が恐れていたことは、この世界でもヒロインを目指すお花畑な私が宣戦布告することだったのでしょう。


「そのためには、ゲームで設定されている危険なイベントの発生の防止、できなければ被害を最小限に抑えるために可能な限り準備を行います。」

「全てのイベントを回避することは可能なのですか?」

「ゲームシステム的には不可能ですが、小さなイベントならば幾つか発生させないことに成功しています。」

「なら、問題は私達の行動とは関係なく発生するイベントですね。それ以外でも回避に失敗した場合に備える必要はありますが。」

「既に色々とシナリオを逸脱していますから、ゲームの知識に頼るのは危険かもしれません。それでもニゲラ殿下の内乱だけは防がないと。」

「それは止めないと最悪国が滅びますわね。」

「それ以前に、カルミア様が生きて卒業できるようにしないといけませんね。」

「それは、私にとっての最優先課題ですわ!」


 どうにかカルミア様の協力を取り付けました。

 これで、私一人よりも選択の幅が広がりました。

 他にも頼れる友達を作ろうと頑張ってきましたが、前世の記憶とかゲームのイベントとかを説明することはできません。

 まだ起こってもいない事件に危機感を共有し、備えることができるのは同じ転生者であるカルミア様だけです。

 直接的な戦闘力はありませんが、ラバグルト公爵家令嬢という立場は私よりもずっと人を動かすことができます。

 カルミア様個人としては公爵家の力をほとんど使えないそうですが、学園内ならば生徒会を動かすことも可能となりました。

 また、カルミア様側の情報も知ることができます。

 これから、去年よりも厳しいイベントが起こるでしょうが、何とか乗り越えて行きましょう。


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