想い想われ、、
Prrrrrr...
その日の夜、登録していない番号からの着信に私は戸惑いながら出た
楓「はい」
黒「俺だけど」
楓「なんでこの番号を?」
黒「裕樹さんに無理言って教えてもらった
てかなんで裕樹さんと連絡先交換してんの?」
楓「だめなの?」
黒「だって、楓は俺が好きでしょ?」
楓「彼女いるくせに何言ってんの」
黒「とにかく、この番号登録しといて
あと勝手に帰らないで」
楓「別に黒木さんに会いに行ったわけじゃないし」
黒「ほーんと可愛くない、まぁまた連絡するわ」
プチッ
あぁ、まただ
ついつい強気になってしまう私の癖はこれまでの経験で
いい思いをしたことがない
必ずと言っていいほど後悔をする
懐かしい夢を見た
黒「ねぇ、バレンタインないの?」
楓「だって振られたし」
黒「好きなんでしょ?ちょーだい?」
甘い声、なんでも許せちゃうその微笑みに私は何度負けたことか
楓「……はい」
黒「ありがとっ」
付き合っているわけでもないのに、告白をして振られてから
黒木さんは私によく構うようになった
授業前の休憩時間、外に出ると煙草を吸いに黒木さんもついてくる
そして、帰りは一緒に途中まで帰ったり
今日のバレンタインだって、渡したら嬉しそうにしながら
私のおでこにキスをした
黒「卒業までもうすぐだね」
楓「うん」
黒「卒業したらさ、連絡先交換しよっか」
楓「…いいの?」
黒「うん、塾辞めても会いたいし」
楓「はぁ…」
朝からまたしんどい思いをしている
コップに常温の水を入れて朝日を浴びながら背伸びをする
メイクをしながら、今日会うかもしれないという淡い期待を心に秘めこの先に起こる出来事を考えた
楓「おはようございます」
裕「おはよ、こっちおいで」
裏に案内されると裕樹さんも隣に座った
裕「あれからどう?ごめんね黒木に連絡先教えて」
楓「正直びっくりしました」
裕「俺も断ったんだけどしつこくて」
楓「そんな気はしてました」
裕「なんか顔色悪いね、ほんと大丈夫?」
楓「すいません心配かけてしまって、、」
裕「面接、店長とだけど心配だから俺もいるわ」
黒「裕樹さん、俺が代わりにいますよ」
来たばかりの黒木さんは、裕樹さんに冷たい視線を送りながら言う
裕「いや、俺が楓を誘ったから」
黒「楓ねー、、でも社員だし前にいた方がいいんじゃないですか?」
裕「…楓また後で話そう」
楓「はい、ありがとうございます」
それから面接が着々と進みその場で採用となった
黒木さんは結局隣に座ることもなければ顔を出すこともなかった
楓「帰りますね」
キッチンに立つ裕樹さんに声をかける
裕「一緒に働けるの楽しみにしてるから」
楓「ありがとうございます」
黒木さんは何も言わず黙々と作業をしていたのを横目に
私は帰路についた
その日の夜、黒木さんから顔を出してくれと言われ
家の近くの公園に向かった
黒「ん」
温かいココアを渡してくれた黒木さんに軽く会釈をする
黒「働くの知らなかった」
楓「裕樹さんが人足りてないって」
黒「ふーん」
楓「なんでそんな不機嫌なの」
黒「いや、俺の方が前からの知り合いなのになんで
裕樹さんの方が関わってんだろと思って」
楓「…」
黒「ねぇ、覚えてる?楓が俺に好きって言ってくれた日のこと」
楓「…あったね」
黒「あの時俺、好きだったんだ」
楓「嘘つき」
黒「年齢が年齢だったし、楓にはもっと色々見てほしいと思った」
楓「今は何をどう聞いても響かないし言い訳だと思う」
黒「今の彼女さ、付き合って2年なんだ」
楓「知ってる、だってあの時付き合った人でしょ」
黒「覚えてんじゃん笑」
塾を辞めてから何度か黒木さんに会っていた
ご飯に行ったり、好きだった英語を教えてもらったり
そんなこんなでいい感じの雰囲気が続いて半年経った頃
私はまた彼に伝えた
楓「好き」
黒「……ごめん、付き合う人ができてさ」
楓「え」
黒「楓のこといい子だと思ってるし特別だと思ってる」
楓「…2番目だったってこと?」
黒「ごめん」
深く傷を負いながらも、私はただただ彼が好きで
楓「会わないとか嫌だ」
その一言で、身体の関係へと昇格し辛い日々を送ることになる
黒「最近会ってなかったから久しぶりに楓に触れたくて」
楓「彼女とよろしくやってよ」
黒「それは無理かな笑
今の彼女にそういうの求めてないし」
軽く笑いながら煙草を吸う黒木さんを見て
楓「他にもいるんだ」
直感的に思ったことを口にした
黒「まぁ何人かは。でも楓を超える人いない」
楓「私はする気ないよ」
黒「まー別にいいけどさ」
軽く手を握られていることに拒否をしなかった私はきっと
彼が恋しかったのだろう
そのまま別れて、
また過去のことを思い出しながら私は浅い眠りについた