127『【3D配信】IQ300くらい上がった記念配信【宵あかり/秋風紅葉】part1』
「──本っ当にすみませんでした!!」
秋風さんに正直に謝ることを決意したあの配信から数日が経ち、今日。オンライブ本社のお勉強用&その後の配信用に用意してもらったスタジオの一室では、オレの高らかな謝罪が響き渡っていた。
「…まぁ、この間の配信は私も見させてもらったからな。一応、ある程度事情は分かっているが…」
「えっ、あ、み…見ちゃったんですね…?」
「本気で隠すつもりだったならアーカイブはちゃんと消しておくべきじゃないか…?」
そういえばあの日はママ特製のカツ丼食べて満足して、配信を終えた後は歯磨きだけしたら即寝てしまったのだった。このメッセージは消去されるとか言っといてオレのあほあほ!!
うう…秋風さんの「えっ、あれ本当に隠すつもりだったの?」みたいな、怪訝? な眼差しがとても痛い…。
「実のところ、ひかるがどんな点数取ったとしても今回は怒るつもりはなかったんだがな」
「あっ、そ、そうだったんですか?」
「ああ。…クリスマスにはあんなことがあった訳だし、それに年明けからも配信が忙しかったしな。点数が落ちてしまうのも仕方ないさ」
こちらを安心させるような笑顔で秋風さんは言う。よ、よかったぁ…! さすが秋風さん! いや橘さん! やっぱり余裕のあるかっこいい大人な女の人は違う! こう…何かオーラからして根本的に違う気がしてきた。ただ年下にオギャってるだけじゃない…ん??
「怒るつもりはなかった…?」
橘さんがにっこりと微笑む。先ほどのそれとは違う、初めて見るタイプの笑顔だ。圧がとてもとても凄い。
「悪い点の言い訳を考える? 私はお酒を飲みに行っているから大丈夫?? …ひかる、その通りだ。私は怒るつもりはなかったんだ。あの配信を見るまではな!」
「ひ、ひぇっ…」
あまりの圧にじりじりと後退りしてしまう。逆に橘さんは容赦なく、どんどん距離を詰めてくる。
「いいか、ひかる。人には口がついていて、話すことができる。だが発言には常に責任がついて回るものだ。…このスクショを見ろ!!」
「は、はいぃっ!!」
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10・トレンド ・・・
#泥酔委員長
2,758件のツイート
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叩きつけられるかのごとく机に置かれたタブレットには、泥酔委員長というトレンドが輝く、SNSのスクリーンショットが写っている。
「これではもう真面目な委員長キャラは終わりじゃないか!」
「そ、それはオレに甘えまくってオギャってる時点でだいぶ終わりなような…ひっ!?」
更に距離を詰められ、ソファに座り込んだオレへと、橘さんが覆い被さるようして顔を覗き込んでくる。顔がいい。匂いもいい。それはそれとして怖いっ!!
「さて。二時間、私がひかるに全力で甘えてオギャりまくるのと、真面目に勉強するのではどっちがいい」
「に、二時間勉強頑張りますぅ…!」
「違う!! 二時間勉強を頑張って、その後二時間私を甘やかすんだ!! ひかるは二つ罪を犯したのだから二つで贖うのは当然だろう!!!」
「は、はいっ!! 勉強頑張ってそれから橘さんを甘やかします!!」
「よろしい! ではペンを持て! まずは返ってきた答案の解説からだ!」
「はいぃ…!」
怒涛の解説が始まり、さらに橘さんが作ってきてくれた問題を使った、ちゃんと理解できたかどうかの確認作業が幕を開ける。やる気がなくなりそうになる度に視界の隅にそっと置かれるタブレット、そしてそこに映るスクリーンショット…凄まじい疲労感と引き換えに、人生で一番の集中力を発揮できたオレだった。
◇
【3D配信】IQ300くらい上がった記念配信【宵あかり/秋風紅葉】
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宵 あかり
チャンネル登録者数 67.1万人
30,101 人が視聴中・0分前にライブ配信開始
#アカリウム #紅葉の部屋 #オンライブ
▼ オンライブ メタルステッカーコレクション コンプリートセットが予約受付中!
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◇
¥50,000
【】
¥8,888
【配信タイトルからしてもうあほあほそう】
¥4,141
【くらいって部分が最高におばか】
¥50,000
【参考IQ:ノイマン(コンピューターを作った人)IQ300、アインシュタイン(現代物理学の祖)IQ160〜】
【はえ〜…】
【功績がデカすぎる】
¥1,000
【世界を作った偉人たちに謝れ】
『だからなぁ…私は本当に、自分なりに頑張ってるつもりでなぁ…!』
『よしよし…秋風さんは本当の本当に頑張ってまちゅねぇ〜…』
『あかりママァ!!!』
¥5,400
【終わりだろ】
¥10,000
【頼むからここが瞬間最高火力であってくれ】
【でちゅね!?】
【何見せられてんだよ俺たちは】
【3Dでこんなもん見せるな】
¥1,800
【てぇてぇと言いなさい】
¥3,900
【TS美少女ママでちゅねVtuber!?!?】
¥540
【こーよー完全に壊れちゃった…】
【何度完全に壊れれば気が済むのか】
【こーよーにテスト見せる云々はいったいどうなったんだ】
『テストならちゃんと見たぞ。そのうえであかりには二時間半ほど勉強してもらった。小テストの点数も良好だ。本当によくやったな、あかり』
『えへへ…』
オレの胸に顔を埋めていた秋風さんが起き上がり、そっと髪を撫でてくれた。
【あっ、そうですか…】
【それはそれは…】
【左様でございますか…】
¥1,111
【露骨に距離を取るな】
¥4,100
【宵リスナーは押し負けるな】
¥5,963
【めちゃめちゃ倒錯した関係してんなこの二人…】
【情緒とかどうなってるんですかね…】
【宵も宵でこんなやつ甘やかすな】
『…でもさ、こうなっちゃったのには間違いなくオレにも原因があるからさ。だったら最後まで甘やかしてあげようって、そう思うんだ』
責任という言葉はとても重い。そのことを秋風さんは体を張って教えてくれた。それを知ってまた一つ、オレは大人になったのだと思う。
【ともに破滅へと突き進むその姿誉高い】
¥1,500
【よいもみメリバ合同】
¥6,000
【その寂しげな微笑みもっといい感じの場面に取って置けなかった??】
¥777
【一緒に破滅してくれる系ヒロイン正直好き】
【宵は男の子やぞ】
『さっき真剣に勉強していた時のあかりの横顔は凛々しくてかっこよかったからな。魂とでも言うべきか、確かに以前は男の子だったのだなと、そんなことを少し思ったよ』
『えっ、ど、どんな顔してましたか…?』
『ふふ、秘密だ。せっかく一緒券を使ったんだ。それくらいの特典はあってもいいだろう?』
どんな顔をしてたんだろうかと、配信画面で宵あかり自分の表情をチェックしながら、いろいろな表情を浮かべてみる。少しすると膝枕されている秋風さんの手が伸びてきて、オレの顔に優しく触れる。「どうしたんですか?」とその手に触れれば、微笑みと「いや、なんでもないよ」という言葉が返ってきた。
【なんか…普通にいい雰囲気だな…】
【よいもみすげぇ進展してないか?】
【宵がそんな真面目に勉強を…!?】
【こーよーイケメンムーブするな】
【カレカノムーブやめてね】
【よくあんなオギャっといて良いムードになれるな…】
『もう私はあかりに甘えることから逃げない。そしてそれを恥じないと決めたんだ。いくらでも好きに言うといい。どれだけ言われようが私にはいつでも甘えられるあかりがいるんだからな!!』
【ドン!!】
【ええ…】
¥3,000
【そんな私にも理解のあるママがいます】
【乗り越えてはいけない壁を乗り越えて完全体に進化してしまった…】
獣王百々✓ 【ん、シンプルに恥ずべき】
柚月ゆいな✓ 【それはちゃんと恥じた方がいいんじゃないかなー…】
世統まお✓ 【甘えることから逃げないって普通に意味分からんじゃろ】
暁仄✓
¥4,141
【あかりちゃんを守護らねば…】
【やはり三期生ズ!】
¥1,700
【同期からフルボッコで草】
¥900
【三期生フルパ助かる】
【まおー様の冷静かつ辛辣なツッコミで常識度の高まりを感じる】
【仄ちゃんこわ…】
『何とでも好きに言え! 今この時だけはこの膝枕は私のもの…ん?』
秋風さんが堂々と言い切ろうとする途中で、スタジオのドアが内側からスタッフさんの手によってゆっくりと開かれる。スタジオ内は二重になっているので、外の音がオレたちの配信に入ってしまうことはないし、その逆も然りだが…一応、何かあったのだろうかとリスナーさんたちに一言残してマイクをミュートにする。そして改めて入口の方へ目を向けてみると…そこにはまさに今さっき、コメントにやって来ていた三期生のみんなの姿があったのだった。
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