謎の歌い手女子高生YouTuber
予定ギリギリとなってしまいました。
「おはよー」
夏葉は席に着くと親友の静に朝の挨拶をする。いつもの光景だ。
静は艶やかなロングの黒髪が似合うお人形さんの様な美少女。彼女の両親は循環器系で有名な総合病院を経営している。いわゆるお嬢様というやつだ。
「おはよう。今日も元気だね。なっちゃん」
静はそう言うと嬉しそうに微笑む。
彼女が微笑みを浮かべた瞬間、夏葉は周囲を見渡し、ニヤリと笑う。
「今日も静の魅惑の微笑みの破壊力は凄いね。男子がみんな見惚れているよ」
夏葉の言葉を受けて静も周囲に目を向け、天真爛漫な表情を浮かべる彼女に視線を戻して。
「この視線の半分は私じゃないと思うわよ。なっちゃん……」
「……ふえ?」
静の視線とセリフの意味を理解した夏葉は慌てふためき、
「ちょっと……いや。私なんかが……皆きっと……」
言葉にならない言葉が口からつむぐ度に夏葉の表情から感情が抜け落ちていく。
「……好きな人にも……せっかく……チャンスな……のに……」
「なっちゃん」
夏葉の辛そうな表情に胸が痛む静。付き合いの長い彼女は夏葉がひた隠す秘密を知る数少ない1人であった。
「なっちゃん!
KOYO-の新作動画見た?」
落ち込む夏葉の姿に静は慌てて話題を変える事にした。
KOYO-は今人気急上昇中の謎の歌い手女子高生YouTuberである。彼女は顔出し完全NG。そして、肝心の歌声は儚く繊細な透明感のある歌声からガラスの歌姫と呼ばれている。
「KOYO-の新作……って、あの何日か前に発表された今話題の?」
「そうよ。それ、ちなみに公開は2日前。
彼女は誰からのオファーさえも断っていたのに突然デュエット曲を配信。撮影自体はオフ会の時って話だけど……」
静は少し困った様な表情を作り。
「彼女も謎が多いけど、お相手も正体不明なのよね。彼はこの動画の他に見付からないからもしかしたらYouTuberじゃないかもって噂もあるのよね」
謎の歌い手女子高生YouTuberKOYO-のファンを公言している静は一気にまくし立てている。そのの勢いにたじたじとなる夏葉。
「この動画は耳が幸せ過ぎて1曲聞いたらしばらく立ち上がれない程……やばかったわ」
いつの間にか熱の入った静の布教活動はホームルームが始まるまで続いたのだった。
話題のKOYO-の新作動画。
わずか公開2日で、500万再生達成。
デビューしてから約1年。この配信動画が今現在、彼女の1番のヒット作となっている。
【謎の歌い手女子高生YouTuber】を最後までお読みいただきありがとうございます。
夏葉と親友の静との日常風景でした。
そろそろ1度、すずのパートを入れたい。タイミングを考えてます。
追伸
夏のホラー2022に作品を応募しました。
約15分程で読み終わると思います。こちらもよろしければ……
タイトルは
録音【聞こえてくる終わりの声】
全4話