現在【夏葉サイド】
予想以上のPV数/メッセージ/評価ありがとうございます。
※誤字のご報告ありがとうございます
辞書で役不足の意味を調べたら確かに意味が
思っていた内容と違っていて驚きました。
「……すず」
微かに聞こえた声に私は足を止めて私は周囲を見渡した。
今の声は間違いなく、
「先輩?」
何かショックな事があったのだろうか、普段の声音と違い、掠れて沈んではいたが、先輩の声だった。
そして程なく、私は呆然と立ち尽くし、空を見上げるようにして何かをこらえる優太先輩の姿を見つけた。
不意に彼の頬を涙が伝う。
「なんだか……疲れたな」
ため息混じりに力無くつぶやくと、先輩は項垂れ、フラフラと歩き出す。
「先輩!」
その異様な光景と台詞に私は慌てて先輩の元へと駆け寄り彼の腕をつかむ。
「どうしたのですか?」
言って、先輩の顔を改めて見つめると私はぎょっとした。そして、ただごとではないと気付いた。
「……ああ。夏葉ちゃん」
「ひどい顔ですよ。本当にどうしたのよ。大丈夫?」
目の前には虚ろな目をした先輩。普段の優し気な表情が能面の様な無表情に……変わっていた。
「何でもないよ」
暗い声でそう答えると私の手を振りほどき、再びフラフラと歩き出す先輩。
ダメッ!
小さくなっていく先輩の後ろ姿に、何とも言えぬ嫌な予感を感じて私は無意識に両手で先輩の手を取り、叫んでいた。
「そんな顔して何でもない訳無いじゃない!
悩みがあるなら言ってよ。私が聞いてあげるし、解決するまで隣で一緒に悩んであげるわっ……って!」
まるで先輩の彼女であるかのような事を口走っていたことに気付き、私は恥ずかしさの余り、先輩にとって地雷の様なワードを知らなかったとはいえ口にしてしまう。
「先輩には愛しのすず先輩が居るから私なんて力不そ……く…………っ!」
「うぐっ……」
すずという単語を耳にした瞬間に先輩は泣き崩れてしまったのだった。
「ごめんなさい」
先輩の身に何が起こったのかを知り、私は思わず先輩を抱き締めていた。
「先輩。辛いとき、気持ちを溜め込むのはよくないわ……こういう時はね。声にだそうよ。
そう。こういう時はカラオケ行って歌って忘れましょう!」
両腕で先輩の手をホールドすると、
「先輩の歌。久々に聞きたいしね」
誰にも聞こえない程の小さな声にで呟いた。
先輩を元気付けるという大義の中に私のささやかな欲望を紛れ込ませて……
現在【夏葉サイド】を最後までありがとうございます。
主要人物の視点でのストーリー進行はここで一旦終わりとなります。
楽しめる作品を目指して執筆作業を進めてまいります。引き続きよろしくお願いします。
プロローグで得た評価を下げないように頑張らねば……