現在【すずサイド】
1週間に1話を目標に活動します
※誤字のご報告ありがとうございます。
「じゃあね。れん」
「おぅ。スズも気ぃつけてな」
わたしは蓮次の頬にキスをして別れの挨拶をする。もう慣れたもので自然に身体が動いていた。
彼はわたしの頭をポンポンと触り、歩き出した。
「…………」
彼の姿が人混みの中に消えるまで……その姿を眺めるわたし。
「……ふうっ」
小さく息を吐き、歩き出そうとした時だった。
「すず!」
突然、わたしを呼ぶ声。
よく知るその声にわたしは硬直してしまう。頭の中が真っ白になる。
ゆっくりと振り向くわたしに声の主――ユウ君は早口でわたしに尋ねてくる。
「どういう事だよ。さっきのは誰だよ?」
「ユウ……君」
彼とは三年前に恋人関係となり、純粋な付き合いをしていた。
そして、受験生となったわたし達は半年前に二人で話し合い受験が終るまでは勉強に集中しようと約束したのだった。
そして。
わたしとれんの出会いは1ヶ月程前。受験勉強の息抜きに繁華街へ出掛けた時にまで遡る。
久々の息抜きに浮かれていたところ、彼に声をかけられた。いわゆるナンパというやつだった。
わたしは容姿とスタイルは人並み以上だと自負している。だからだろう、わたしには彼氏がいるからとれんから離れようとするもなかなか諦めてくれなかった。
それどころかれんは何処か得意気に、メジャーデビュー間近と噂されているバンド【HIT DOG】のボーカルだと自己紹介してきたのだった。
わたしはそこで足を止めてしまった。
わたしはユウ君とれんを天秤にかけ……どちらが将来性があり、幸せになれるか考えてれんを選んだのだ。
そして、彼は会う度に高価なプレゼントを用意し、楽しい時間を過ごし、わたしは間違っていなかったと気付けば彼と深い関係となっていた。
れんに初めてを捧げ……付き合いはじめたのに……ユウ君と別れなかったのは……何故?
ふっと、泣きそうな表情を浮かべる彼を見て、そんなよく分からない疑問が頭に浮かんだ。
同時にわきおこるなんとも言えない感情。まるで知らない暗い夜道を1人歩くような心細さ……不安がわたしの心にのしかかる。
きっとこれは、ユウ君を捨てたことによる罪悪感……ね。
わたしは自身にそう言い聞かせ。
「ユウ君とはもう終ったのよ!」
彼に宣言するわたしの足は無意識に震えていた。
こうしてわたしはユウ君との――
幼馴染み信頼と関係を自らの手で完全に断ち切ってしまったのだった。
最後まで読破ありがとうございます。
登場人物達の考えていることや気持ちを書くのって難しい。特に恋愛ものは……
次回の更新予定は7月2日土曜日を予定
次の話でヒロイン登場します。
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