変わりはじめるすず【すずサイド】
「なんでよ」
やり直そうと優太に語りかけるも彼は2~3言葉を交わしただけで立ち止まることさえなく走りさって行く。
その表情。態度。行動の全てが幼馴染みに対して向けるにはあんまりなものであり、すずは呆然と優太の背を見送った。
「私。反省しているんだよ。仲直りしたいのに……なんで意地悪するの?」
まともに話すことさえ出来なかったことにすずは泣いた。
「あの時。あのクズが私に声をかけなければ……ユウ君と一緒に登校できたのに……」
気付けば悲しい気持ちは反転し、れんへの激しい怒りがすずの心を覆いつくす。
「あのウソつきのせいで私がこんな思いを……しなければいけないのよっ!」
怒りが頂点に達したすずは人目も気にせずに叫ぶ。
急に叫び出したすずに、たまたま通りかかった通行人達がぎょっとする。そして、彼等は独りで激昂して喚くすずに視線を向け、慌てて視線をそらすと小走りで走り去っていく。
そんな通行人の姿など気にすること無く、なおもれんを罵り続けるのであった。
「でも」
突然。本当に突然。怒り狂っていたはずのすずの表情が変わり、楽しそうな笑みを浮かべた。
「……ひぃ」
静かになったすずに通行人の1人が視線を向け、息をのみ、小さく悲鳴をあげて逃げるように去っていく。ほんの数秒で憤怒の表情から満面の笑みに変わっているのだ。その変わり様はもはや恐怖である。
「れんは婚約破棄の慰謝料や【HIT DOG】の活動資金の使い込みとデビュー取り消しの損害賠償と……すごい金額を請求されるみたいだしいい気味ね」
実はれんの活動資金の使い込み用途のほとんどがすずとのデートやホテル代に消えていた。
そして、れんの浮気調査を行った彩香も驚きあきれたことではあるが、使い込んだ金銭の支払いは活動用として渡していたカードが使われていた。請求の明細を見て彩香は唖然としたのだった。
こうしてれんとすず。2人の不倫の証拠が見付かった訳であるが、すずはまだ17歳と未成年であったことから慰謝料の請求は行わないこととなった。
見逃してくれたのだ。
どうやって辿り着いたのか、気が付けば教室の窓からすずは急ぎ足で昇降口へと駆け込む生徒達を眺めていた。優太に置いていかれてからの記憶が曖昧であった。
席に着いてから優太の事を考えようとする度に、あの時の優太の表情が脳裏に浮かぶ。
私の心を蝕み。疲弊させ……追い込まれていく心を守る為、頭が考えることを放棄して無気力になって行く。
「……疲れたよ」
沈んでいくすずに、
「どうしたのすごい顔よ?」
登校してきた明海が言った。
彼女はすずの顔を見つめて眉をひそめる。視線はすずの頬。れんに殴られた場所に向いていた。頬の赤みは無くなったが、青緑に変色していた。
「って……そのアザどうしたの?」
「えっ。ああ。これ。最低のクズにちょっと……ね」
メイクで隠しきれなかった頬に手を当て笑って話す。
「最低ね。女の子の顔に手を出すなんて……」
「そうよね。付き合ってはじめてクズだと気付いたわ。知っていたら付き合わなかったのに……」
当時の彼氏であったれんに対して憤りを見せてくれている明海に私はうなずき、愚痴をこぼしたのだった。
明海はすずを抱きしめると優しく語りかける。
「そんなやつは別れて正解よ。すぐにいい人が見つかるわ」
「いい人……ねえ。明海」
1人でスマホを操作する優太を見つめ、心がきゅっとする。込み上げてくる悲しみ。
涙が頬を伝う。
KOYOーの動画を見てから感情が上手くコントロール出来ないことにすずは戸惑うのであった。
「何。すず?」
「私。ユウ君とやり直したいの……どうしたらまた彼に振り向いてもらえる……かな?」
「……は?」
明海は驚き目を丸くする。
2人は気付いていなかった。すずの言っている『彼』の齟齬に。
そして、その問題を解決する前に朝のホームルームがはじまり、そのままなあなあになってしまったのだった。
すずは優太と話すことさえ出来ずに昼休みとなり、体育館裏で……
夏葉と不良グループ。そして、優太と夏葉の一連の出来事を目撃したのだった。
〖変わりはじめるすず【すずサイド】〗を最後までお読みいただきありがとうございます。
すずのラストが定まり、この話を急遽つくりました。
ちなみに流血沙汰や猟奇的な展開にはならないのでご安心を……
よろしければ、いいね/評価/ブックマーク等の足跡をよろしくお願いいたします。
最後に、新作短編。〖幼馴染みの結婚〗を公開しました。
内容はざっくり説明すると主人公が過去の選択肢を間違えて後悔するお話となります。
下書き無しで勢いで書いた作品となり、いろいろ拙いと思いますがよろしくお願いいたします。




