ライブ2【すず視点】
久々のすず視点となります。
返却された答案用紙をベッドの上に並べて私は改めてその結果を眺めた。
「ひどい点数ね」
前半の問いはそこそこ出来ていたが後半の問いについては全然ダメであった。
タイミング的にはれんと出会った以降に習った範囲からテストの正解率が逆転し始めている。
「このままだと次のテスト……赤点もあり得るかしら……」
つぶやき私は身震いした。
この時、私は何故か言い知れぬ不安を感じていた。
それは次のテストに対してではなく……
【HIT DOG】のリハーサル見学の翌日。つまり今日はライブ当日。
れんのバンドメンバーからは『デビュー前に彼女の影があると人気に影響するから……』と、遠回しにライブには来ないで欲しいと言われていた。
大事な時で、彼等の言いたいこともわかるけど……
私はどうしてもれんのライブを見たくて、こうして足を運んでいた。
そして、時間となり。
ステージ上に【HIT DOG】のメンバーが登場した。
「誰?」
戸惑いの声をあげる私。
視線の先には……
れんのすぐ隣に立つスーツを着込んだ1人の女性の姿。歳は二十代半ばの美女だった。
「私のれんに近すぎるわ」
まるで恋人の様にれんの隣に立つ彼女にムカムカする私。それと同時によくわからない小さな不安が心の底にめばえたのだった。
れんからマイクを受け取ると彼女は自身に満ちた大人のスマイルを浮かべると。
「本日は、【HIT DOG】メジャーデビュー直前……最後のライブにお越しいただきありがとうございます。ご存知の通り、彼等は……」
話はじめた。
【HIT DOG】のデビュー後のスケジュールを分かりやすく。魅力的な声で……
彼女が話しはじめた当初はマネージャーか何かであると思っていたが、話を聞くところによるとれん達がデビューする予定のレーベルの女社長であった。
「…………」
れんの彼女としては喜ぶことなのだろうけど……
私程ではないものの彼女もなかなかの美人。
れんの隣に立つ自信に満ちた彼女の姿に略奪されるかもと有り得ないはずの不安が脳裏をよぎったのであった。
「あんな女より。私の方が綺麗で若いし……大丈夫……よね?」
ベッドに広げた答案用紙を手に取り、机に置き直すと、ドアをノックする音が部屋に響き渡った。そして。
「お姉ちゃん。ご飯出来たって!」
「はーい」
私は気持ちを切り替えいつも通りの声音で3つ下の妹に返事した。妹は色々と鋭いのだ。
〖ライブ2【すず視点】〗を最後までお読みいただきありがとうございます。
すずを不安にさせた二十代半ばの美女。名前はまだ無い。
彼女ですが、物語の進行上かなりのキーキャラとなります。
果たして、彼女は優太達とどの様にからんでくるのか……
ストーリーが読めてしまうかもしれませんが、れんのバンド【HIT DOG】と言う名前ですが、プロットの段階で当て馬とかませ犬から、当てと犬を取って名付けています。
何に対しての当て馬とかませ犬なのでしょうか?
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