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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

俺の幼馴染がチャラ男に。

俺、小林賢治には幼稚園のころからずっと想い続けている幼馴染がいる。

坂井由依という、その幼馴染は、小柄だけど愛嬌があり、男女問わず人気があった。

実は着やせするタイプで水泳の授業なんかではクラスの男子が色めき立ったりもして、

魅力的な女の子だと思っている。

毎朝2人で登校するときに、俺の話を聞いて笑う時に眉尻が下がり、えくぼができるその笑顔が可愛くて、由依が笑ってくれるような事を話すのが俺の楽しみで、そんな風に2人で一緒にいる時間がこれからも続いてほしいと願うようになった。

由依とは家も隣同士で両親同士も同級生の友人との事で家ぐるみの付き合いが合り、物心ついたころには隣に由依がいた。

いずれは由依と付き合って一緒になるんだな、というビジョンを思い描きながら、小学生になり、中学生になり、そして俺たちは高校生になっていた。毎年由依と2人で行く夏の花火大会で由依に告白しようと準備を進めていた。

春休みとGWの短期バイトで由依と出かける合間に少しずつお金を貯め、母さんにも相談して花火大会の日に由依にプレゼントする計画を離したら母親からも応援されてカンパも貰えた。

結構な金額がたまり、計画は順調・・・のはずだった。


夏休みも近づいた初夏の日曜、友達とその彼女と買い物に行こうと朝早くに家を出た俺は、由依のお母さんに呼び止められた。

「おはよう、ケンちゃん。ちょっといいかしら?」

困ったような顔のおばさんに、俺はなんだろうと思いながら近づき話を聞く、

「・・・由依の部屋でそういうことをするのもいいけど・・・きちんと避妊はするのよ?二人とも、まだ高校生なんだから」

朝から何を言ってるんだ?この人はと、怪訝な顔をする。

「2人とも高校生だからそういうことに興味があるのもわかるし、おばさんも2人を応援してるからこんなこと言いたくないんだけど・・・ほら、ね?」

何だ?

「えっと、そりゃ俺も由依のことは好きですけど俺たちまだ付き合うとかそういう関係じゃないですよ」

困ったように返す俺の答えに、え?という表情をしたおばさんは、何か思い至ったような、微妙な表情をした。

「え・・・そうなの?私はてっきり・・・そんな・・・。ご、ごめんねケンちゃん。へんな事を言って」

そういっておばさんはそそくさと家に戻っていった。

どういう事だ?

・・・まさか、由依が誰かとそういう事をしている、のか?

そんな事を思い、悶々としながら友達との待ち合わせ場所についた。

このあたり唯一にして最大のショッピングモールだ。

そこには俺の友人である津川智樹と、その彼女である服部真理がいた。

だが、2人とも微妙な表情をしている。待ち合わせ時間よりは早く着いたし、俺が遅かったからというわけではなさそうだが・・・。

「よう、待たせちゃったみたいですまん。・・・2人ともどうしたんだ?」

2人の様子に俺が聞くと、智樹がスマホの写真をみせながら言いにくそうに話しかけてきた。

「おう、賢治。・・・これなんだけどさ、みてくれよ」

そこには俺の想い人である幼馴染、由依と、チャラいことで有名な同級生、渡部が仲良さそうに腕を組んで歩いているのがうつっていた。それこそ甘えるようにしなだれかかる由依の姿に、俺は目の前が真っ暗になりそうだった。

「今日はお前が坂井さんに渡すプレゼントを探すって事だったけどよ、これ・・・坂井さん、もう渡部にひっかけられてるんじゃないのか」

智樹の声と、ちょっと智樹と窘めるような服部さんの声が遠くで聞こえるようだった。頭がぐらぐらし、ぐわんぐわんと頭の中でなにかがなるような感覚。ふらふらとした俺をすかさず智樹が抱えて、近くのベンチに座らせてくれる。

「・・・なんでだよ。ちくしょう。嘘だろこんなの。由依・・・」

朝の、由依のお母さんから言われたことを、智樹と服部さんに、伝える。

「うわぁ・・・」

ドン引きしたような服部さんと、つらかったなと俺を抱きしめる智樹。

2人に慰められつつ、今日の予定はお開きにして帰ることになった。

とはいえ、俺の様子が心配だからと智樹と服部さんが俺を送ってくれることになった。

「ありがと・・・ほんといいやつだよなお前」

智樹にそういうと、「よせよ照れるだろ」とそっぽを向いた。そしてそんな俺たちをみてなにやら湿度の高い笑みを浮かべる服部さん・・・(?)。

「・・・おい、賢治、あれ!」

そういって智樹が指さしたのは、ショッピングモールの隣にあるラブホテルだ。そこに、俺が見間違えるはずもない、由依と、渡部が、腕を組んで入っていこうとしている所だった。

「・・・っ!」

服部さんはすかさずスマホを出し、2人の様子を写真に収めた。

「・・・ふう、バッチり撮れた。・・・小林君。落ち込んでいると思うんだけど、この写真はあとで智樹に送っておくから受け取っておいて。女の子ってさ、何かあったときには自分の身を護るためにどんなこともするし汚い嘘だってつくんだよ。だからこれは万が一の、保険に。」

そういって、ゴミでも見るような目で2人が入っていったラブホテルをにらむ服部さん。

俺はそんな服部さんの言葉をどこか遠くの音のように聞きながら、呆然自失となっていた。

智樹に肩を貸されながら帰ってきた俺を、母さんと妹は何事かという様子で出迎えた。

事の次第と、服部さんから送られたラブホテルに入っていく由依の写真をみて、母さんは言葉をなくしずっと写真をみつめ、妹は顔を真っ赤にして「サイテー!!」と怒っていた。

玄関で崩れ落ちたままの俺だったが、ぼんやりと、「母さんごめん、カンパしてもらったプレゼント代は返すわ」とだけいった。そんな俺の様子に、母さんは黙って俺を抱きしめてくれた。母に抱きしめられ、妹は俺にすがりついてわんわん泣いていた。俺も魂が抜けたようにすすり泣いた。

そんな俺たちを沈痛な面持ちでみる智樹と、思案するような服部さん。

暫くして俺が落ち着くと2人は帰って行ったが、帰り際に俺がお礼と、この埋め合わせは改めてするよと言うと「今度仲良い連中とお前が元気出るようにカラオケでもいこうぜ」「じゃあ女子も誘うね」と慰めてくれた。いい友達とその彼女だなぁと思った。


次の日、俺はいつもより早く家を出た、もし由依が俺を訪ねてきたら、俺は先に行った事を伝えてくれと言った。

もう登校しない、一緒にはいられないということは、自分で伝えないといけないと思ったからだ。

家を出るとき、ちらりと由依のお母さんが家から出てくるのが見えたが、俺は無視した。


「もう、どうして先に行っちゃったのケンちゃん!」

教室に入ってくるなり、俺のところに来て文句を言う由依。

「俺はもうお前とは一緒にいられないからな」

死んだ魚のような目をして由依をじっと見返すと、ひるんだ様子を見せる由依。

そしてその瞳に、やましいことがある、ということを確信した。長い付き合いだからな、そういうのだけは感覚で分かる。

「何それ、冗談でも面白くないよケンちゃん!」

怒った様子を見せる由依に、

「渡部とラブホに行ってヤリまくってるような女と一緒にいたくないんだよ」

と吐き捨てた。

その言葉に、由依の顔からサーッと血の気が引いた。

「な、なに言ってるのケンちゃん、なんでそんなこというの?!私子供のころからずっとケンちゃんのこと・・・その、」

「じゃあこれは何なんだよ!!」

そういって昨日の写真を見せる。写真を凝視した由依は、蒼白といった顔色だ。

「昨日見てたんだよ!お前が渡部とホテルに入っていくのをな!俺さ、・・・毎年2人でいってる花火大会の日、今年こそはお前に告ろうと思ってたんだ」

俺の言葉に、「嘘・・・」と震えながら呟く由依。

「それでお前に買うプレゼントのお金を貯めて昨日買いに行ったんだよ。わかるよな?あのショッピングモールだよ」

由依は言葉を失っていた。

「幻滅したよ。二度と話しかけないでほしい。近づかないでほしい。渡部とヤリまくってたんだろ?俺なんかどうでもよかったんだろ?いいよ別に、恋人同士でもないしただの幼馴染だったんだからな。けどそれもこれまでだ。ここからは赤の他人だ」

まくしたてるように言った俺の言葉に、由依は「いや、いや!私はケンちゃんが好きなの!ずっと好きだったの!」と泣き叫んだ。

気づけばクラスは俺たちの様子を凝視していた。だがまあ、今更どうでもいい。

「はぁ?何言ってるんだよ。じゃあ好きでもない奴とヤッてたのかよお前、気持ち悪いな」

ゴミを見るような目で由依を見る。その視線に、ひぅ、とたじろぐ由依。

「ていうか無理だわ。あんなチャラ男と穴兄弟になんてなりたくねーし。こっから先お前と付き合うとかありえねえよ。お前とそういうことしてもヤリチンとヤリまくったような女なんか汚くて抱けねーよ。お前の身体汚ねーよ。」

そういうと、由依はぼろぼろと涙をこぼしながら崩れ落ち、わんわんと泣いた。

俺もドカッと席に座ると、「泣きたいのはこっちだよ・・・」と泣いた。


教師が教室に入ってくるとそんな俺たちの様子に何事かと驚いたが、一部始終をみていたクラスメートが説明をしてくれたらしい。

俺は職員室に連れて行かれたが事の次第を話した。由依が何をどう説明したかはわからないが。途中、智樹と服部さんが職員室に入ってきて、俺のフォローをしてくれた。昨日あったことだ。そのお陰もあって、特に俺の話を聞いてくれた男性教師からは「・・・気をしっかり持てよ。女は他にもいるからな」と慰められてしまった。


暫くして、渡部と由依は停学になった。

渡部に関してはたたけばでてくる埃のように余罪が沢山あったようでそのまま退学になっていた。由依は停学があけたら学校に来ていたが、皆腫物を触るような扱いだった。


暫くして、由依のお母さんに連れられた由依がうちを訪ねてきた。

正直顔を見るのもいやだし会いたくもなかったが、母さんが一緒に話を聞くというので玄関で話を聞くことにした。


由依曰く、俺のことがずっと好きだったけど、なかなか彼氏彼女になれなくて不安だった、渡部に恋愛相談をしているうちにそういう関係になってしまった、だまされていた、好きなのは俺だけ、ということだった。由依のおばさんも、由依は間違えてしまったが許してやってほしい、と一緒にあやまってきた。

「別に俺に謝ることでもないだろ。最初から彼氏彼女ってわけだったわけじゃないし、由依・・・坂井さんが渡部と付き合ったってだけでしょ。で、俺は失恋した。それだけの話」

「違う!!私がずっと好きだったのはケンちゃんだけ!」

「いい加減ケンちゃんって馴れ馴れしく呼ぶな!!!」

俺の声に静まり返る。

「さっきの繰り返しになるけど、坂井さんがどこで誰と付き合ってようと俺には関係ないから、それだけ。話はこれで終わり?」

「いや・・・赦して!私、ケンちゃ・・・賢治君が好きなの!」

「無理。あのヤリチンの体液がしみ込んだ身体をだけって?無理無理。渡部はゴム無しでハメるの最高って豪語してたヤリチン野郎だぞ。そんなのの抱いた女なんて汚くて無理。っていうか俺が好きっていうのにほいほいほかの男に股を開くような女をどうやって信用すりゃいいんだよ。俺には無理だ」

そういうと、わあああああんと顔を手で覆い泣き崩れた坂井さん。

そこまで黙って話を聞いていた母さんが間に入ってきた。

「ごめんなさいね。どうやっても話は平行線にしかならないと思うのだけれど、もう無理だと思うわ。だから由依ちゃんは賢治の事はあきらめて、他の誰かと恋愛していった方がいいと思うわ。これ以上由依ちゃんが関わっても、お互いに傷つくだけだし、何よりうちの子がこれ以上傷つくのをみたくないもの」

そんな母さんの言葉に、由依のお母さんもうなだれ、崩れ落ちた由依を起こして、帰って行った。


それから俺と由依が関わることは無かった。

智樹と服部さんに伴われていったカラオケで出会った鶴見佳乃という女の子と意気投合した俺は、しばらくしてその子と付き合うことになった。一見するとギャルのような見た目と態度、すごいスタイルで露出も多い子で由依とは正反対の子だった。

だが情に深く、頭も良くて俺はいつのまにか鶴見さんに勉強を教えられるようになった。

母さんもそんな鶴見さんを気に入り、俺も鶴見さんの家を訪れたりして向こうのお母さんに気に入られて、いつのまにか両親公認となっていた。

好きになったら一途で献身的なそんな鶴見さんに俺は由依との傷を癒された。付き合って、初めてそういうことをした後、ぼんやりとどうして俺と付き合ったの?と聞いた。もともと智樹や服部さんとは知り合いで俺の事を知っていたのと、告るためにバイトしてるなんて今どきロマンチックでいいじゃん?って思ったからだとか。そこからの弱り切った俺の姿に心をくすぐられたそうだ。

「アタシはケンを手放さねーし、アタシと一緒にいるかぎり絶対凹ませないからね!」

そういってケラケラ笑う鶴見さん・・・いや、佳乃に、俺も夢中になっていた。

由依とは関わらなくなったが、渡部にヤリ捨てられた女というレッテルをはられたことでまともな男子からは見向きもされなくなった。

そんな心の隙をついて色々な男子が由依に手を出し、すぐヤれる女として有名になっていた。

まぁ、俺には関係のない事だ。

俺は佳乃のおかげで県外のランクの高い大学に進学することが出来、両親公認で同棲しながら充実した大学生活4年間を送った。そして就職を決めた後、佳乃にプロポーズ。

互いの両親に結婚の報告をするために地元に帰ってきた。佳乃を伴って実家に帰ろうとしたところで、地味な格好で子供を抱きかかえた女性・・・年相応に雰囲気はかわっているが、坂井由依と遭遇した。

妹や、地元に残った智樹や服部さんから大学でもすぐヤれる女として色々な男と関係を持った揚げ句、妊娠して大学を中退し、シングルマザーになっているというのは聞いていた。

「あの、ケンちゃ・・・賢治くん?」

そう、声をかけられ俺は複雑な思いで、どう返そうか悩んだ。

「ああ。こんばんは、坂井さん」

そう、無難な、しかし明確な拒絶の言葉で返した。

「こんばんは、、いきましょうあなた。お義母さんや義妹さんがまってるわ」

今では高校時代のギャルっぷりもナリをひそめ、すっかり美人の奥様といった雰囲気になった佳乃が、にこやかな笑顔で由依に会釈しつつ、俺に腕を絡めてひっぱり、足早にその横を通り過ぎる。


背後から、子供を抱いた由依がすすり泣く声が聞こえた気がするが、俺には関係のない話だ。

俺はこの佳乃と、これからもずっと一緒に歩いていくのだから

8/21 20:40 誤字報告ありがとうございます、修正しました!

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― 新着の感想 ―
[一言] 反省……していなかった、呆れた
[気になる点] 相談する相手がチャラ男なのが笑う お前の周りに信頼出来る友達いねーのかと
[気になる点] 何故かヤリチンに2人っきりで相談する幼馴染 バレるのに何故股を開くのか? 過去に失敗しているのに反省をしない幼馴染 シングルマザーになっている?父親が分からなければ下ろしていると思いま…
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