箱入り娘のかくれんぼ
「ママ……もういいでしょ? ……どうしてわたしは外に出ちゃいけないの? ……しじゅつだって終わったのに……」
「まだ駄目よ。ママじゃなくてお母さんだと言っているでしょう。それにしじゅつじゃなくて手術。顔のアザは消えたけれど、歯並びも鼻の形も癖毛も治っていないじゃない。私はあなたのことを思っているのよ。どこに出しても恥ずかしくない娘に育ってほしいの」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「お母さん……もういいでしょう? 手術のおかげでアザもなくなったし、歯並びも鼻の形もお母さんそっくりに綺麗になったよ」
「まだ駄目よ。歩き方に話し方もなってないわ。利き手だって左のままじゃない。テーブルマナーだって身に付けていないでしょう。どこに出しても恥ずかしくない娘になるまで、まだまだ練習しないといけません」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「お母様。もういいでしょう? ありとあらゆるマナーや礼儀作法を身に付けました。いつ、いかなる場所でも粗相する心配はありません」
「まだ駄目よ。あなたがここにいる間、他の子供達は学校で勉強していたのよ。学問ができなければ恥をかくのはあなたの方なのだから」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「お母様。もういいです。私は、一生このまま、ここで暮らしていきたいと思います」
「何を言っているの。娘が引き籠りだなんて世間に顔向けできないじゃない。せっかくどこに出しても恥ずかしくない娘に育ったのだから、これからは私の教育がいかに素晴らしいかをあなたが証明する番よ。ほら早くそこから出なさい」
ギィイイイイ。
「……痛っ! ……ちょっと! 何をするの!」
「お母様。私は、たくさん勉強して悟ったのです。お母様は……あなたは病気なんです。世間では『毒親』と呼ぶそうですよ。そんなダメな人が母親だなんて、私、恥ずかしいんです……」
ギィイイイイ。ガシャン。カチリ。
「……だから、これからはあなたがそこで、ずっと、ずーっと世の中から隠れていてくださいね」
「ふざけないで! やめなさい!」
「……お願い……やめて……」
「……ねえ……どこへ行くの……」
「……助けて……ここから出して……」




