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第73話 決まりがないから自由で十人十色



「それでっ、五行って何ぞ! リーヴルさんの生活魔法ってどうするぞ!?」


 闘技場近くのカフェで、私はグレンさんとリーヴルさんに詰め寄った。


「ほんっっとに邪道な魔法職だな上位3人!」


 たまたまその場に居合わせたBランク魔法職と共に。


「いやなんで??????」


 処理不足でパニックに陥ったグレンの疑問符が、その場に埋め尽くされた。




 第3戦目の後すぐ、グレンさんとリーヴルさんを確保した。

 何より大興奮した魔法の数々。私は結構王道の魔法を使っているから、2人の魔法の詳細を聞きたかった。リーヴルさんは明日決勝でぶつかるから細かいことは言えないかもしれないけど。


 流石に準々決勝出場の魔法職が揃っているので視線も集めてしまう。焼け石に水かもしれないけど、カフェに移動したって訳。


 ところがどっこい。

 そのカフェに居たのはパーティーメンバーに付き合わされてカフェにいたという冒険者の知り合いが。


 見覚えがあるような無いような、と眺めていると第2戦目で私がぶつかったBランクの魔法職だと言うことが判明した。

 そして流れで一緒の席に着いたっていうことだ。


 現在に戻る。



「挨拶が遅れてしまってすまないな。俺はジョー。こっちは同じパーティーメンバーのブリス」

「相棒が世話になったようだね。同じパーティーで長いこと一緒にやってる、Bランク冒険者のブリスだ」

「あ、えっと。クラン『ザ・ムーン』のCランク冒険者、グレンです」

「Cランク5人でパーティーを組んでるリーヴルよ」

「リィンです〜!」

「「「「知ってる」」」」


 4人はその場で挨拶を交わした。


「ブレスさんは」

「ブリスね」

「ブリスさんは、大会にぞ出てませぬよね?」

「あぁうん。Bランクの俺たち2人で出場しても良かったけど、2人と3人じゃ実力以上に難易度が高くなるからさ。俺は棄権させてもらったんだ」

「まぁ……俺たちのパーティーは3人がかりでもFランクの2人にめちゃくちゃ負けたが」


 ボコボコにしました。ライアーが。

 ほら、私目くらまししかしてないし、ライアーのサポートに回っただけだし。


 私がボコボコにしたの月組のDランクパーティーだけだし。


「いやしかし、お前ら若いな。まだ30いってないだろ」

「……まぁギリギリ」

「あら、褒めてくれるの? 嬉しいわ」


 ……リーヴルさん、ライアーより年上だったような。

 よく考えたら返事が肯定も否定もしてないし。


「俺たちも40過ぎたが、魔法職はやっぱり慣れだ。ようやく安定して自信を持って魔法が得意だと言える様になったし、この年でようやくBランク」

「けど、それが普通じゃなきです? Aランクにぞ行くが可能は才能と運と肉体と素質と環境ぞ必要ですよね」

「……お前結構現実的な考え方するよな。本当に魔法職か?」


 グレンさんの言葉にもちろんですと頷く。魔法職、イマジネーション大事だもんね。

 現実見すぎると魔法が使えなくなっちゃう。分かるよ。


「いや、それに関してはお前にだけは言われたくないんだが(10代少女に負けた40代男性)」


 ジョーさんはゴホンと咳を払った。


「ともかく、お前らは若いのにめちゃくちゃ魔法に強い。是非とも話を聞かせて欲しいと思って押しかけたわけだ」

「私も私もー! 自分と系統ぞ違う魔法職、とても勉強にぞなる! 敵を知り己を知れば百戦危うからず!」

「本音漏れてるぞ。敵対した時の為に学んどきたいみたいな本音が漏れてるぞ」


 敵対する時は私個人に不利益が被った時だけですのでご安心を。全ては私が中心。守りたいものもプライドも全然無いんだわ。


 これに庇護欲が生まれた兄弟とか、四面楚歌で共に居た共依存関係の人間とか、唯一の愛を注いでくれる親とか、そういう存在が居れば迷いも出たというのに。


 ……第一候補に上がりやすい家族はクソだからなぁ。


「あー、つまり。2人は俺の魔法を知りたいわけだ」

「その通り!」

「いぐざくとりー!」


 ブリスさんが申し訳なさそうな顔をして席に着いている。

 グレンさんは仕方ないな、とつぶやきながら説明してくれた。


「俺の魔法の師匠は海外の人間だ。だからこの国に馴染みが無いんだけど」


 グレンは懐から人型の紙を取り出した。


「俺は、ちょっと特殊な魔法を使う。やり方はエルフに近いかな。俺の魔力で生み出した魔法の種──式神を予め準備しとかなきゃならない」


 魔法の種、ね。

 するとグレンさんは私に視線を寄せながら目尻をトントンと指で叩いた。


「俺は生まれながら魔力が少ない。師匠も、俺と同じような特徴を持っている。例えば同じように鍛錬している普通の魔法職と比べると圧倒的に少ない。だから師匠達先人が生み出したんだよ、俺の使う魔法を」


 ──死霊使い!

 グレンさんの指が指したのは目で、彼は目で見て魂を判別出来る。女狐だとバレたのも彼の目が原因だ。


 グレンさんので師匠も死霊使いと言われる人間だったのだろう。

 鎮魂の鐘の枢密院出身。ちょっとどころか闇の気配が沢山してこれ以上関わりたくないんですけど。


「だからこういう手間かけてやるんだよ。魔法は式神に命令して発動する。詠唱している時は『お願いします困っているので力を貸してくださいファイアボール』みたいな」


 まるで式神に意思があるような言い方だなぁ。


「ちなみに……多分聞いたと思うけど俺が使う急急如律令は『ファイアボールをさっさとやれ!』って命令してる感じ。だから魔力消費えげつない。そりゃ、多分お前らが普通に使うファイアボールと同じ消費量だろうけど」

「じゃあ五行というのは?」

「お前マジでどこからそういう知識仕入れて来んの?」


 グレンさんが困惑したように私を見た。

 うちの師匠、結構偉いエルフみたいなの。あんな昼寝中のゴブリンの鼻ちょうちんみたいな存在の癖して。


「五行? って、もしかして属性のことか? だが属性は地水火風の四元素だし……」

「ざっくり言うぞ。ぶっちゃけ詳細話したら異端にも程があるから。──俺の攻撃魔法は五属性ある」


 極力小さな声でグレンさんがそういうと、確かにこれはあまり漏らせないなと驚いた。


「師匠が教えてくれたのは『水を吸って木が育ち、木を燃やし火が栄え、火が消えて土になり、土から金が生まれいで、金は水を生む』」

「金が水?」

「分からないわね、全く」


 あー。なるほど。

 湿度が高いところに金属があると、そこに空気中の水分が集まるから生んでいるように見えるのか。


「そこで1人納得したような顔した子がいるけど」

「あいつは俺もちょっとよく分かんないです」


 ブリスさんとグレンさんが顔を見合わせていた。


「というわけで、だ。俺は基本的に土と水と火しか使わない。地水火風に当てはめてれるからな。これが俺の魔法だ」

「よく初対面相手に言えたな……。聞いたのは俺だが」

「ははっ、だってジョーさん達は他言する様な人じゃないでしょう」


 グレンさんはそう確信したようにいった。


 これ以上は触れないようにしよっと。



「──リーヴル」


 カフェの入口付近で、ラウトさんが声をかけた。


「あら、私の話をする前に迎えが来ちゃったわ」

「やっほーリィン。ウチのリーヴル返してもらうで〜」

「ま、リィンちゃんとは明日対戦するしねぇ……。この話はお預けってことで」


 ラウトさんの後ろにサーチさん、そしてツルッツルが居た。そろそろ脳内で呼んでいる野生の鶴の呼び方のレパートリーが無くなりそうな頃合だなぁ。


「あれ? ペインは?」

「…………。野暮用だ」

「やぼよう」


 多分それ色々隠している上で言ったね、ラウトさん。

 別に同じパーティーってわけじゃないから隠し事されようと被害が来ない限り大丈夫だけど。被害どころか災害野郎のことは許しません。


「それじゃあリィンちゃんまたね」

「バイバイリィン」

「明日、会おう」

「さーて! 対策会議やー!」


 対戦相手に堂々と言うな。


 そうしてあの愉快なパーティーはカフェを出ていった。わざわざ会計を終わらせて。



「……ッはぁ〜。なぁリィン、あのパーティーのフードの奴。何者だ?」

「あの若白髪?」

「いや髪色は知らないけど。なんか、視る(・・)からに『自分の快楽のためにしか生きない自己中心的な存在』みたいな感じじゃん?」


 見るのニュアンスが違ったような気がしたけど本当に当たってるの草通り越して魔の森が生えた。


 そのサイコパスな自己中心的野郎と明日ぶつかるのが私です。その面を思いっきり殴りたい。


「応援してるぜ、Fランク」

「相棒負かしたんだから頑張ってな」

「ところでリィンの魔法ってどうなってるんだ? ここで自分の魔法は普通とか抜かしたら流石の俺も黄金の右手が勢いを止めないからな?」


 つまり殴るぞってことですね分かりません。


「王道ぞ歩きすてる」


 本当に黄金の右手が飛んできた。




 ==========




『さてさてさてさてぇ! まぁたせたな! キャー、待ってたわー! 皆さんお待ちかね! 泣いても笑っても嘘みたいでもこれが今期の結末だぁ! ──クアドラードアドベンチャートーナメント! 最! 終! 日ぃいーーーー!』


 ドッ、と今までの比じゃない程の歓声に包まれる。その熱気は王都全体を包み込むような錯覚すらある。


『まぁずは今大会のダークホースから紹介しましょう! ──幸運と実力で乗り越えた前衛と魔法職の最低ランクの冒険者コンビ! ライっっっアーーー! アンド! リィーーーーンッッ!』


 眩い光と共に、入場した。

 お金貰えるけど多分今後大会には出場しないだろうなって誓ったよね。恥ずかしいが過ぎる。


 ちなみに私はフェヒ爺のアドバイスの元、帽子は外した。

 ローク・ファルシュの面影は一切出すな、と言われたからこの視線を味方に『貴族とは無縁の少女』を意識付けする。


 フェヒ爺の現在? エルフ領に行ったよ。

 どうやら魔の森にエルフの領地があるらしい。


『そしてそして! 異色の変わり種Cパーティー! コンビネーションには目を見張る以外が出来ねぇ! 魔法も使える万能リーダーペイーーーーンッッ! そして同じくパーティーメンバーのラウトッッ! クラーーイシスッッ! リーヴルだぁあああ!』


 同じような歓声と共にペイン達が入ってくる。


 ここに来て普通に身内。



「同じ魔法職同士。魔力が切れるまで頑張りましょうね」

「あはは、お手ぞ柔らかく」


 リーヴルさんと握手を交わす。


「よく勝ち抜いたな。全力で相手をしよう」

「自分が優位である自信、木っ端微塵に爆発ぞさせますよ」


 ラウトさんと喧嘩を売り合う。


「…………。」

「本当に気配ぞ消すですよね。殺す合うましょう」


 無口を相手したが、反応は返って来なかった。




 ペインと顔を見合わせる。

 彼の碧眼が私をがしりと縛り付ける。


「実はお前と戦ってみたかった」

「私も」


 固く、拳をぶつけ合わせた。



 風が強く吹き、私の金の髪が視界に流れる。

 ペインはニンマリと笑っていた。



『それでは──最終戦、スタートです!!!!!!!』


 戦いの火蓋が切られた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 『昼寝中のゴブリンの鼻ちょうちんみたいな存在』 『自分の快楽のためにしか生きない自己中心的な存在』 『草通り越して魔の森が生えた』 今回も語彙力が素晴らしすぎる。キレッキレッですね! 魂…
[良い点] 魔法の秘密聞いちゃってるよw 初対面さんもいる中手の内晒せってなかなかに酷いw そんなリィンちゃんをそこにいる全員が知っている← グレンさんの魔法にはそんな裏があったのか…… 異国の珍し…
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