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第68話 第1戦目、コンビ解散の危機



 幼馴染が現れた……!

 パーティーは剣、槍、弓、魔。バランスの取れた一般的な組み合わせ。所々見知った顔。


 私とライアーはジリッと少し下がった。


「お前らダクアは!?」

「そうぞ! 月組がダクアの殆ど冒険者分布ですぞね!?」

「リリーフィアちゃんが泣くぞ! 帰れ!」


 なんでダクア冒険者のほとんどを占めている月組が王都にいるんだよ!


「……知りたいか」


 どっと疲れた顔で月組は言った。


「…………ッ、リィンちゃんが王都に行くなら俺らも行くってリックが……!」

「ひぇ」


 なんか、ごめん。

 申し訳なさが溢れてくる。そこで私の名前が理由に出ちゃうのかー。


 ……えっ、王都に拠点移動させるとか言わないよね!?


 私が驚いて月組を見ると、彼らはそれぞれがそれぞれの場所に目線を逸らした。


「お兄ちゃん」

「リックさんが……この大会の優勝賞品に建物が入ってるから丁度良いって……」

「ばかばかばかばか! ヒラファ言うな!」

「こいつらが本気出したらどうするんだ!」

「ごめんでも俺幼馴染には絶対勝てない! というかお前らに分かるか!? 地元を出てクランに入ったらいつの間にかクランごと幼馴染のファンクラブになってんの! 俺も知らない間に入ってんの!」

「みなさーーん! この子のファンクラブは俺らクランを通してくださーーーい!」


「実況! こいつら早くぶちのめす実行許可は!?」


 月組をひねり潰して口封じしなきゃ!

 ファンクラブ。なんて、なんて面倒なものを広げようとしているんだ!


 私は冒険者としての居場所は確保したいけど別に目立ちたいわけでもなんでもないんだけど!


『え、ええー。なんて言ったんだか』

『解説のエティフォールです。多分早く戦闘開始の合図を、って意味だと思いますね』

『あっ、言語解説も出来るんですね』


 アイボー、やろうぜ! そんなことを思いながらライアーを振り向くと、彼は腕輪を付けた手を口に当てて私を見ていた。


「な、なに」

「……お前の過去の生き証人に会って本当にこの世界の人間だったのかって驚いてる」

「喧嘩ぁ!?!!??」


『──試合開始ぃ!』


 私の味方が闘技場に1人も居ないッ!


「先手必勝!」


 前衛職、確かオーウェンさん。片手剣というには遥かに重そうな剣を片手で軽々持ち上げて突進してきた。それと同時に魔法職が詠唱を始める。


「ライアー受け」

「リィン避けろ」


「「は!?」」


 お互い顔を見合わせる。


 ここはライアーが受け止めて私が魔法で前衛を速攻潰すパターンでしょ!?

「(ここは両方避けて武器振り下ろした所を狙うパターンだろ!?)」


 大振りの攻撃を避けることは雑作ない。

 オーウェンさんの攻撃は軽々避けることができた。ライアーは左に、私は右に。


──ヒュンヒュン!

「──行け! 〝ストーンブラスト〟」


 その避けた地点に風を切って矢が飛んでくる。

 ライアーの方向に地魔法が飛んで行った。


「……ッ!」

「チィッ!」


 〝ウィンドスラッシュ〟


 咄嗟に魔法を使い、矢を壊すことは出来なくても方向を逸らした。


『おおっと! 初撃はザ・ムーン! 魔法の発動が非常に速い、が、Fランクコンビも負けてはいない! ライアーは石を弾きリィンも避けきったようです!』

『なるほど、前衛職のオーウェンが2人を引き剥がし、避けた先に物理と魔法で攻める。魔法職には弓矢を、前衛職には地魔法を。初撃からわかるのは見事なコンビネーション。ライアーが受け止めていた場合恐らく詰んだかもしれませんが、流石は知り合い同士の戦いですね。行動パターンが読めている』

『いやーライアー凄いですね! 石が10個くらい飛びましたよね!』

『もちろん彼もすごいですがリィンさんの方は……。ちょっと推測なので確定したら解説します』


 実況と解説の声が耳に入る。

 チィッ、分が悪い。


 いくら単独で強くてもコンビネーションで足を引っ張り合えば向かう先は負け。


「ライアー前中衛!」

「は!? お前の足ならお前が前中衛職だろ!」

「めんどくさきなお前は! それでも前衛職!?」


 ライアーの主張は、足の速いライアーが後衛に居る2人を片付けて私が前衛と中衛職を相手すること。

 そして私の主張はそれとは全く逆。


 相性がいいのは確実に私の提案の方だけど!?


『どうやら……揉めてるようですね』

『仲、いいのか悪いのかちょっと分かりませんね』


 悪いよばーーか!


「遊んでばっかだと負けるぞ」

「──〝ストーンウォール〟」

「うおっ」


 ライアーがオーウェンさんに向かって走り出した所をハッシュさんの魔法が直撃した。

 が、ライアーは飛び出てくる魔法に右手を着いて、乗り越えるどころか下から上に向かう勢いを利用して空中に飛び上がった。狙う先にハッシュさんがいる。


「ば、ライアーお前バカか!? 煽る暇もねぇくらい予想外のことをすんな!」

「この魔法は嫌でも見てんだよッ!」

「あ゛ぁーーー!!! そうだったああ! やめろやめろ来るなオーウェンんんんん!」

「背中を開け……あれ? 悪い追いつけん」

「ばあああああああか!!!」


 ハッシュさんに肉薄するライアーを、オーウェンさんが追うが防具をろくにつけてないライアーの足は速い。前衛のフォローも魔法の詠唱も追いつけないまま。


 ただし、後衛職のオレゴさんが弓を構えてライアーを狙ってい──


「──余所見してていいのか?」

「しまッ!」


 幼馴染で、中衛職。槍を持ったヒラファお兄ちゃんが瞬時に私の目の前に来ていた。

 私を刺すために振り被った槍を、私は


 〝ロックウォール〟



──ドコッ!


 面での攻撃に弱いロックウォールは、刺突である槍を簡単に貫かせた。


「ハッ、甘……っ?」


 がしり。

 私は槍を掴んで離さない。


 〝ロックウォール〟!


 貫かれた壁のさらに向こう側。

 飛び出した新たな壁は、その場にあった槍を易々と破壊し、私は穂先部分を引っ張った。獲物ゲット。


「は!?」


 壁に飛び上がって、上からヒラファお兄ちゃんを蹴りながらオレゴさんを見る。


 〝ウォーターボ────!


「っぐ」

「ドワッ!」


 ──ルゥ?〟


 お兄ちゃんの唸り声と共に濡れ鼠となったライアーが立ち尽くしていた。


『あーっと、これはライアーがハッシュを狙うと見せかけて後衛職のオレゴを狙いました。が、どうやら同じ様に狙っていたリィンの魔法がライアーに降りかかりました』

『解説のエティフォールです。確信しました。リィンさんの魔法、無詠唱ですね。しかも今、判明しているだけで3種類の攻撃魔法を無詠唱で使えています』

『えぇ!? あの1属性の習得だけでも貴族が何十年かけるという?』

『正確に言うと1属性ではなく1つの魔法で約十年、ですね』


 そうなの!?

 貴族、普通に詠唱したくなくて初っ端から無詠唱無言魔法を頑張ったんだけど。


「小娘ぇえええ!」

「フェイントぞ使うするなぁ!」

「普通1人でやってんだからフェイント使うだろ!」

「ちょっとまつして」


 壁の上にたった私を、頬を押さえながら呆然と見上げている幼馴染。

 奪い取った穂先を思いっきりのど元に突き立てた。


──ガインッ!


 致命傷を知らせる光の盾。


 そう、この大会。メルクリウスさんのギルドの模擬戦で使った冒険者ギルドのチートアイテム。

 それが各冒険者に渡されている。もちろん、管理は徹底してあるので持ち出し厳禁だ。


「──で、普通1人と言うですけど、こちとらコンビぞ組んでるんですよ!」

「組んでるって言わねーーーだろこのコンビネーション!」

「分かる!」

「だよな!」


「「……」」


 いやそうじゃなくて。


「水魔法なだけありがたきと思わぬですか!?」

「即死性のある火魔法じゃなくてそりゃありがてェな俺は水吸って体が重いが!」

「よっ、水ぞ垂れ流すいい男!」

「俺がいい男なのは元からだろうがァッ!」


 この男っ、ああ言えばこういう……!


「えぇ……これ俺ら攻撃していいと思う?」

「ひ、ヒラファの仇ー」


──ガッ


 〝特大ファイアボール〟!!!!


「邪魔をすんな!」

「邪魔ぞするな!」


 飛んできた矢を掴んだライアーと、団子になって呆然とする月組に魔法を放つ私。


『わぁ、どうしよ。俺実況したくねぇ』

『解説のエティフォールです。即死攻撃の反応を確認したのでFランクコンビ対DランクチームはFランクコンビの勝利です。さっさと去れ』


 いい加減コンビネーション取れないのムカついて来た! 我慢の限界だ! 面ぁ貸せやおっさん!


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― 新着の感想 ―
[良い点] これからはほんのちょっとだけ息があっていくのかな? 楽しみだね~! お兄ちゃんにも容赦なかったね……でもそれでこそリィンちゃんだね! [一言] 圧勝凸凹コンビかっこよーい!
[良い点] 幼馴染みのヒラファお兄ちゃん もっと爽やか好青年かと思ってたけど案外そうでもなかったw 地元を離れクラン入ったら幼馴染みのファンクラブに……ってどんな心境なんだろw その月組はリィンちゃ…
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