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最低ランクの冒険者〜胃痛案件は何度目ですぞ!?〜  作者: 恋音
合同演習編

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311/311

第311話 なんでもイベントって言っておけばいい


「ご機嫌よう、リー」

「……ご機嫌よう」


 夏休みが終わり、私は死にそうな体で久しぶりの教室に座っていた。そこで声をかけたのは私の従兄でもあり冒険者仲間でもある第四皇子ヴォルペール、略してペインだ。


 私は学園では病弱な深窓の令嬢をしているため、他の人達は『いつもの事ながらしんどそう』みたいな感想を抱いていそうだが、私が健康体であることを知っているペインは、私の顔色が悪いのを見ておや? と首を傾げていた。


「ご機嫌は良くなさそうですね」

「まぁ……!」


 そんなことありませんのに、という感情を見せながら『わかるぅ!?』という感情を込めた顔を出した。我ながら器用〜。




 さて、なぜご機嫌がよろしくないのか、それは1日前に遡る。


 アルメハまでの護衛依頼をこなした私達。店主さんはぼちぼち旅をしながらシンクロ領に戻るとのことでアルメハで別れ、私たちは王都に向かうことになった。

 そこで私は瞬間移動魔法を使って転移先であるシュランゲの元へ飛んだ。


 のだが。


『──おや主様。王都までの旅路は老骨には堪えますなぁ』

『ふざけるなぞこのジジイ詐欺!!!』


 そんな対して進んでなかった。普通に歩いたらあと三日はかかったであろう距離にいた。本当にふざけていると思う。奴隷の中で一番舐め腐っていると確信したよね。


 私はライアー達を置いて、一人で箒をかっ飛ばして魔力の許す限り王都に向かって飛んで行ったのだった。ちゃんちゃん。



 まーーーーじで着いたら覚えとけよ。


 シュランゲとライアーの監視として月組の二人を置いていってるから、まぁ何とかなるでしょあっちは。


「リアスティーン、大丈夫ですか? 特にこれから大変な行事が待っているのですが」



 すると扉を開けて入ってきたのは担任のレイジ・コシュマールこと元トリアングロ幹部、梟、アーベント・グーフォ。


「皆さん久しぶりだね。夏休みが開けたばかりで頭が休み気分かもしれないが、しっかり頭を切り替えるように。それから二学期からは副担任が付く。こちらは──バルサム・エンガス子爵だ」


 なんで???

 副担任のエンガス子爵は私と目があってビクッと肩を揺らした。気持ち逸らしたい。


 やばい、急に胃痛が棍棒で暴れながらやってきたな。陥れた私が何を言うかって話だけど、自滅に見せかけて裏から手を回していたので、あの、普通に気まずい。


 いやー、これあれだな、梟が元トリアングロって上層部にバレたから『やっべ、ヴォルペールとリアスティーンだけじゃ不安だわ、教師に暇してる元騎士団放り込も!』した感じだね。私のやらかしが回り回って最悪のマリアージュを生んでいる。最悪。


 冷静に考えて上層部!

 この2人『敵国スパイ』と『麻薬犯罪未遂』ですよ! それでいいのか!?


 ……。


 い、いいんだろうなぁ……。未遂の方は決定的な犯罪を与えてないから。あくまでも巻き込まれた貴族だからね、着々と滅びというか衰退を辿ってどんどん落ちぶれていく時間を長く長く、がシアンのご希望でもあるからさ。


「さて、皆さんには早速だけど伝達事項がある」


 グーフォは……名前が沢山あると呼び名が大変なのでどの道呼びづらいし担任って呼んどこ。

 担任は書類を捲りながら内容を確認すると私の方を見ながら口を開いた。


「このクラスで成績上位八名に騎士団との合同演習が決定された。今から名前を呼ぶので返事をするように」


 合同演習……そういえばシンクロ領でもなんか言ってたなぁ。



「成績順に、ヴォルペール・クアドラード」

「はい」

「リアスティーン・ファルシュ」

「はい」


「クロロス・エルドラード」

「はい」

「ヴィシニス・エルドラード」

「はい」

「ミセリア・パスト」

「ツンディ・デレッタ」

「ロギ・ガルザ」

「ケルナイン・クフン」


 八名が呼ばれたため返事をする。

 私やペインは当然の事ながら、エルドラード双子(異母兄妹)も流石に優秀だったのか選ばれた。


 ミセリアとツンディの二人というのはシュテーグリッツ領に行く際に一緒に行った二人。片方は元トリアングロ幹部鶴の実妹と私のファンだ。ちなみに二人はBクラスにいるので、ここには居ない。


 ロギ・ガルザとケルナイン・クフンに関しては両方男の子で、同じAクラス。



「まぁ、流石は殿下ですわ」

「リアスティーン様も体調が優れない中優秀でいらっしゃる」

「くっ、次こそは」

「まさかトリアングロ上がりの貴族が選ばれるとは」


 クラスから口々に賞賛や諦めと言った声がざわめきとして聞こえてくる。


 そこで私はヴィシニスの手を取った。


「(合同演習って、何?)」

「……!」


 ピーンと察したヴィシニスは私に視線だけで頷いた後、静かに手を上げて担任の方を見た。


「失礼ながら、合同演習について今一度詳しいご説明をいただいてもよろしいでしょうか」


 ヴィシニスは『素手で触れた者の心を読める』という魔法を常時使っている。ペインが『嘘を見抜ける魔法』を常時使っているように。常時使う魔法というのはちょっとまぁあまた今度細かく説明するとして。

 彼女は私の従者として生活する前は手袋をしていたのだけど、今では素手で生活をしている。何故かと言うとですね、私が言語不自由で貴族の階段を逆走した言語なんて言われるような言語をしているせいで、貴族バージョンではテンプレートでしか喋ることが出来ないから、その、フォローをね。私の言いたいことをね、代わりに言ってもらえたりするために。


 ほんっっっとにありがとうヴィシニス。

 あまりにも便利すぎるし私に都合が良すぎるから、一生私の従者として生活して欲しい。伴侶が必要なら頑張って用意するからさ。


「分かった、では改めて説明するので代表者は一旦座ってもらおうかな」


 着席だぁ!

 制服がシワにならないように座ると担任が話し始める。


「代表選手の選考基準は学年交流会に向かう道中のサバイバル知識や、一学期末に行った試験の結果を加味して決定されたもので、具体的な数値は廊下に貼り出すのでそちらを確認して欲しい」


 なるほど。

 公平を期すために可視化されるんだ。まぉそうだよね、王子と王家の親戚と、それらの従者が入っているんだから、不正を疑われかねないよね。


「合同演習とは、この学園の代表選手とクアドラードの誇る四つの騎士団でチームを組んで行う小隊指揮演習のことを指す」


 お前トリアングロの人間じゃん?

 誇り高いってどの面下げて言ってんの?


「ゴホン。代表者には実際に騎士団員を五名動かし、王都で発生する問題解決のための指揮をしてもらう。他の生徒はその情報を分析してもらうのが、大雑把な演習の内容だ」


 なるほど…?


「そしてこのイベント……合同演習は」


 イベントって言っちゃったよ。


「歴代、王都の方々の協力は必須なものとなっており、代表選手は街中での活動となるんだ。王都出身者は巻き込まれたこともあるだろうが、街中の人が一人持っている情報はほんの微かなもの。騎士団を使い、事件解決に励んで欲しい」


 その説明に私はふむ、と顎に手を当てた。

 質問は無いんですけどね、実際細かいルールを知らないとなんとも言えないので、一旦黙っておこう。


「騎士団は戦力であり、盾であり、足でもある。どう使うかは全て代表次第だ。正解はないので、皆それぞれ励むように」



 ……思っているよりかなりダルいかも。辞めていいかな?


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