第259話 貴族の駆け引きなんてカレーに比べたら簡単
「グリーン子爵♡」
「帰ってください」
「おたくの領地に関係ぞするところで麻薬事件♡」
「次から次へと……!!!」
私は冒険者身分での後見人、グリーン子爵のところにお邪魔しに行っていた。
試作というか、実は、王都の魔力感知結界の構築が終わった。
流石フェヒ爺……。意味わかんない……。
ベースを作って、魔力を継ぎ出すのが従来の形。
そして私が加えた改良は『感知した魔力を微量吸収して半永久化』である。継ぎ足すのではなく、魔族みたいに吸い上げればいいじゃない。個人の3パーセントくらいチュウチュウしますよ。税金ならぬ税魔力。
これにより、宮廷魔法士の仕事の削減に繋がった。あんな大規模な魔力を個人で賄ってたら他の業務に影響出るって。
で、まぁ要は王都の交通料が増えれば増えるほど安定するので、私みたいな多い魔力を持ってる人間がどれくらい魔力を取られるのか、みたいな実験したかった為、普段は瞬間移動魔法で飛ぶのだけどてくてく徒歩でライアーといっしょに王都の外に出てきたのだ。
グリーン領まで徒歩だと時間かかるって?
王都の外まで出ただけでいいんだから、そこはほら、転移ポイントとして奴隷に走らせてたよ!いやぁ、助かるよ、冒険者組。本当に一週間で辿り着くとは思っても無かったから。
「グリーン子爵がまだ王都にいるすたなら良かったですけど」
「去年は戦争もありましたからほぼ特例ですよ。基本、王都には滞在しないものです」
まだ春先からずっとバタバタしてるしね。
パパ上が王都に未だにいるのは、新しく領地や防衛を考えなければならないからにほかならない。いっつも忙しそう。
「…………さて、話を聞かせてもらいましょうかね」
グリーン子爵は私達を応接室まで連れてきてくれた後、お菓子を出してくれた。
ニコニコと冒険者っぽく屋敷の人にお礼を言って足をブランブランさせた。
「……アーリア、ジョルジュ、退出を」
「「はい」」
メイドと執事を下がらせた。
「……」
「……」
これでいいだろう?
そう視線で伝えて来たので私は微笑んで合ってますと返した。
「いや言葉を喋れよ……」
横で死んだ目をしたライアーがそう言った。
「やだなぁ、ライアー。貴族たるもの、視線のみで会話するは基本ですぞ? まぁ私デビュタント未満の新米ですけど」
「一概にそうとも言えませんが礼儀上口に出すとまずいものもあります。特にリィンさんは『Fランク冒険者』として来たので、貴族に要望を言うのは無礼に値するんですよ」
「もちろんグリーン子爵当主様の立場は私たちより上ですが、地位はライアーとも同じ、さらに言うなれば私は少し遠めの王家の血筋ですから、小娘でもある程度交渉というか、会話自体は認められるです」
「個人的にはファルシュの末娘なんて、本物のお嬢様ですからねぇ。少し違えば王位継承権もありましたよ。……冒険者としてのやらかしや身分がなければ、たかが子爵の私が気軽に軽口叩ける相手じゃないんですが」
間違いなく女の中では地位が高い。公爵や侯爵ももちろんこの国にはいるけど、クアドラードは地位より血筋の方が優先されがちな国だから……。
「特にこの国にはもう姫君がいらっしゃいませんからね」
「あっ」
それ、クライシスのせいですね。
なんであいつ処刑されてないの? それだけがバグなんだけど。
「もう終わるすたことですので言いますと」
「うん?」
「トリアングロの作戦は最終的にクアドラードを潰すすたあとは、魔法排除に向かって」
「向かって?」
「王家から順番に処刑するつもりだったらしきですぞ」
クライシスはあくまでも暗殺。
位の低い人物から順番に殺して行ったため、ペインでぶつかり合った。
でも、戦争後の処刑は魔力を封じた上で、きっと上から狙ったのだ。
「…………もしかして、王家の次ってファルシュだったんじゃ?」
「はい。そこで、ファルシュ家に『汚名』を仕掛けるすて、王位継承権が既にないローク・ファルシュを処刑する口実を作るすてたんじゃないかなーって、思うすてます」
その汚名の内容が今回関係してくるし、なんならグリーン子爵にも関係してくる。
「グリーン子爵、私たちの出会いぞ覚える捨てますか?」
「はい、もちろんですよ。盗賊が元貴族の屋敷を拠点に活動していた所を君達ふたりが中心になって弱いものいじめをしたんだよね」
「よわいものいじめ」
「救国の英雄、敵国の幹部。……過剰戦力だよね?」
当時は割と必死だったんですけど!?
しかもその盗賊、隣の相棒が黒幕だったみたいですし!?
あ、思い出したらお腹いたくなってきた。
責任……責任問題……。ライアーのやらかしがデカすぎて……。
「で、ですよ! そこで被害に遭うすてた商会長さんいたでしょう? あのグリーン子爵が来る前に時間ぞ稼ぐすた人。彼は香辛料ぞ扱うすてますよね?」
「そうだね。というか彼の商会はどちらかと言うと君の方の商会なんだけど……」
そう。
ファルシュ家の香辛料事業。それを扱っているのがその商会なのだ。
「ミローネ商会が……? なにかしたのかい?」
「あ、いえ。そっちは別に何もすてません。国内生産の香辛料、あるでしょう?」
「あぁ……国内流通はミローネ商会に比べて少ないけれど、香辛料は貴重だからね。商会の本拠地は王都だけど、生産途中はうちだから……。っ、ん? まさか」
私はにっこり微笑んで宣言した。
「麻薬事件、協力すてくれますよね?」
「………………協力しないとまずいことになるやつだね?」
「まぁほぼ王命です」
「断れないやつ!!!」
グリーン子爵は頭を抱えた。
「あと、デビュタントパーティーの招待状を持ってくるすたです」
「え……。あ、そうだった、リアスティーン嬢はまだでしたね」
「王妃様が食材と料理人を提供すてくれるようですてね?」
「断れないやつ!!!!!!」