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第250話 空間魔法の使い手


 魔法には生活魔法。攻撃魔法。防御魔法。回復魔法。補助魔法。空間魔法。の主に6つがある

 攻撃魔法は地水火風があり、生活魔法と攻撃魔法は殆どの人間が使える。


 ただ、習得難易度というものがある。

 ゲームみたいにレベルがあるという訳ではなくて、庶民は生活が大変で魔法の鍛錬に割ける時間が無いだとか、貴族は魔法の教師も時間もあるから鍛錬に割けるとか。


 だから貴族は魔法に強い。


 6つの中でどれが一番難しいか、と言われるとダントツで空間魔法だ。

 応用が効きにくく、取得も難しく、魔力消費量が馬鹿みたいに多い。


「俺が、空間魔法……」


 シアンが呆然と呟く。

 空間魔法はすごく便利だ。私は攻撃の中では水が得意だし、空間魔法のゴリ押し戦法も好き。


 でも人に教えることって出来るのだろうか……。


「フェヒ爺教える事ぞド下手くそですしね……」

「おい小娘喧嘩か?」


 擬音語ばっかりのエルフは黙ってもらっていいかな。


「シアン。やれる?」

「…………誰に物を言ってる」

「元幹部様」


 シアンが魔法で実家の宮廷魔法士達を上回るのが一番だろうけど、まぁ準備期間の短さからかなりの無茶。


「無茶な訓練だろうがはったりだろうが、なんでも。使える物なら全て使う。ご主人様であろうと、私の復讐に利用出来るなら使わない手はない」

「うわ……シアンのご主人様呼びぞきつい」

「死にたいのか?」


 ちなみに。こんな一大決意みたいな面してるけど手は黙々と農作業をしているのだからシュールだよね。


「でも、私も忙しきですからフェヒ爺も手伝うすてくれても良きですよ?」

「あ? 俺に手伝えってぇ?」


 フェヒ爺は私の訴えに鼻で笑った。


「残念だったなぁ。俺はリフレッシュに忙しいんでな」

「…………禿げろジジイ」

「〝グラビティ〟」

「重きーーっ! ま、待つすて潰れる!」

「これはグーンっと魔力をやれば出来る重力操作だ。対極にサイコキネシスがある。てめぇのご主人様が潰れた蛙みたいになってる姿をきちんと見て覚えておくんだな」

「フェヒ爺っ!!!」


 重たい空気に押し潰されているのかそれとも私の体が重たくなっているのか分からないけど、負荷が強すぎて起き上がれず地面に倒れ伏している。

 ひーーん! 重たいよぉ!


 シアンは一応私の奴隷にも関わらず少しも助けてくれない。


 ぐぬぬ、私の奴隷はトリアングロの元幹部しかいないから忠誠心がない。信頼も置けないしそれぞれ我が強いから普通の奴隷を指揮官みたいにするのは非常に難しいだろう。脅しにも屈しないしそれぞれ求めていることが違うし、プライドも高ければこだわりも強い。

 どないせぇっちゅうねん。


「うえーーん! 脳筋変態最悪サディストプー太郎ジジイに酷い目に遭うぞされるー!」

「で。ちなみに言っておくと今俺はこの喋る名誉毀損小娘対策としてサイレントっていう音を遮断する魔法をかけている。こいつも空間魔法」

「なるほど」

「おいてめぇ栗頭クソジジイ! シアンも『なるほど』では無きぞ!?」


 どうにもこうにもならないので瞬間移動魔法を使ってシアンの所へ移動した。

 そして、シアンは私と重力に押し潰されて潰れた蛙みたいな悲鳴をあげる。


「うぐっ」

「まだ重き!」


 シアンも巻き添えで重力に翻弄されることになった。ふっふっふっ、私だけが酷い目に遭うだなんて理不尽、認められない。


「あ、言い忘れたが移動しても無駄だ」

「どうせ! んなこったろうと! 思うすたぞりー!」


 巻き込み事故だぁい!


 シアンを押し潰しながらふんぞり返っていると、遠くからこちらに向かって走ってくるエルフが見えた。


「ん?」


 緑髪のお上品な見た目をしているお転婆なエルフの姿に見覚えがある。


「フェヒ爺、魔法辞めるすて」

「……はいよ」


 フッ、と重力が無くなり起き上がれそうだ。

 そしてサイレントも切れたのか外側の声が響いた。


「──リィンさーーーん!」


 私の名前を呼ぶ緑髪のエルフなんて、1人しか知らない。


「エリィ?」

「リィンさん!」


 クアドラードの王都でも一緒に過ごし、戦争中はトリアングロで色々やったエリィだ。

 過ごした時間は割とライアーとそう変わらないどころかちょっと多い気がする。


「こんにちはリィンさん」

「久しぶりぞ、エリィ」

「久しぶり……? たった数ヶ月前ではありませんの?」


 数ヶ月は人間基準では久しぶりなんだよ。


「お隣の方は?」

「トリアングロの門で私たち捕まるすたの覚えてる?」

「あぁ! あのダイナミックお邪魔します?」

「忌々しい」

「何やってんだよお前ら」


 トリアングロの城内に潜入するにあたってどうやって第三者が入り込むのか考えた結果、それっぽく戦って負けたフリして潜入する、という方法を取ったのだった。

 その時に刺客として現れ利用されたのがシアンってわけ。


「その時の処刑人ぞり」

「あぁ、言われてみれば。そうですわ、綺麗な顔立ちをしていたから覚えてますの。こんにちは処刑人さん」

「こ、んにちは?」


 ニコニコとバブエルフのマイペースさに混乱したシアンは戸惑いながらも挨拶を返した。


「フェフィア様に呼ばれてきたの。リィンさんに会えてとっても嬉しいわ」

「フェヒ爺に?」


 そういえば、フェヒ爺の本名はルフェフィアだけど己ではフェフィアって名乗ってたんだったな、なんてのを思い返しながらフェヒ爺を見た。


「エルフ族と交渉がしたいんだろ?」

「まぁ、言うすれば。知恵をお借りすたいし、エルフ領の領主にもお会いすて交渉ぞ望むです」


 だろ? と言いたげにフェヒ爺が首を傾げた。


「──エリィは領主の娘だろ」

「無駄農作業!!!」


 私は手に持っていた鍬をぶち投げた。

 最初からフェヒ爺じゃなくてエリィに話しておけば早かったやつじゃん!


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― 新着の感想 ―
農作業は無駄なんかじゃない! 汗水流して作業して育てた作物を収穫していただく喜び、リィンさんも味わってみないか? 元幹部奴隷達を従わせるのに不安ないように絶対服従魔法とか掛けられたらいいのになぁ………
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