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第234話 子連れ狼のおじさん


「おおきに〜」


 私はアダラと、ペインにはライアーとクライシスと残りの二匹を任せ別行動にすることに。


 え?監視?

 冒険者活動やらせてる位だしペインいるし平気でしょう。


 というわけでアダラと一緒にショッピングだ。アダラは値切りなどせずに一括で衣服を購入した。


「アダラさん楽しそうですぞね」

「あっちにおる時は常に命の危機に晒されてたもんやで? 気軽に買い物やら出歩けんのよ」

「どうやって生活すてたです?」

「人と関わるタイミングを最小限に抑えてた、言うたらええんかな。そんでもって出会い頭は必ず頭を下げさせてたわ」


 アダラはフフと思い出し笑いをした。

 そういえばそのマイナールールのせいで私たちがトリアングロの城での変装が一気にバレたんだったか。不覚。


「うちは唯一の女幹部やさかい、下から狙われる率が高くてな。実力はもちろん、おひぃさんの相棒に負けへんで? やけど……うちかて人間、油断するタイミングもある」


 アダラは周囲を見回した。


「うちは他の幹部と比べて魔法を恨んどらんよ。嫌いでもあらへん。ただ、けったいなもんは好きやない。人の法律で扱えるもんや無いと常々思っとる」

「けったい?」

「分かりにくい、ゆうことやで。……でもおひぃさん、うちはどえらい分かりにくい人間なんよ。もっともっと分かりやすい子はいっぱい居る。うちが唯一恨んどんのは、この世界を作ってもうた神様や」


 安心させるように微笑んだアダラは私の頭を撫でる。


「おひぃさんはとっても分かりにくい口調やけど、とっても分かりやすくて助かるわ」

「割と複雑極まりなき立場ですし厄介な人間だと思うですけど!?」

「否定はせんけど。おひぃさん、期待を裏切ったりせぇへんやろ?」

「ええ……?」

 

 裏切れるけど。


 困惑してる私を見て何が面白いのかアダラはさらに笑みを深めている。


「うちがこの世で一番嫌いなんは裏切りや。他人にも、自分にも。狐はその点、けったいやなと思うとるで。おひぃさんは結果出せるお人やろ?」

「そう、ですかね?」

「せやで。せやなかったら、うちは今こうしてのんびり買い物なんてしてられへんよぉ?」


 随分楽しそうに買い物をしていたし、命の危機がない顔の割れてない状態を楽しんでいるのかもしれないな。


「まぁ私に命の危機が無きなのであれば」


 奴隷にした動物は大小少なからず恨まれているとは思って行動している。特にシュランゲとシアンと王様。あと恐らくグルージャ。

 アダラとクラップは比較的友好的に接してくれているから、まぁ恨まれている割合が低くて安心したって感じ。


 アダラやべナードは私の事子供だと思ってるのかな? 扱いが幼子に対するそれに近──


「命の危機が無いやなんて、誰が言うた?」


 アダラが急に私を鷲掴みにして吹き飛ばした。


「ぐぇっ!」


 ふわりと宙を舞った様な感覚のすぐあと、誰かに抱き留められて怪我無く地面に降り立てた。

 思わずつぶった目を開くと、アダラが鉄扇を扱って荒くれ者を五人、切り捨てている。


 血しぶきがドレスのように舞い、アダラは扇子をパンと閉じた。


 どうやら襲われたのをアダラが気付き、私を投げ飛ばして避難させたあと始末したようだ。


「おひぃさん、怪我は?」

「だ、だい、じょうぶ…………」


 か、幹部怖〜〜〜〜〜〜〜〜!


 切り捨てている時の表情、殺戮に対して獰猛に笑ってる感じのアレだった〜! 患部、怖い。

 さっきまで朗らかに話してたって言うのに! 急に怖くなるのやめて。


 えっ、私達、こんなヤツらを相手にして勝ったんですか? 奇跡? 大の大人五人で油断を狙ったタイミングだったのに? 瞬きの間に片付ける位レベル差があるのに?


「あんさんもありがとね、うちのおひぃさん受け止めてくれて」


 アダラは呆然とした表情の私を通り越し、私の背中にいる人物に向けてお礼を言った。


「……いや、構わん。だが知らんやつに娘を投げつけるのは止せ。それで誘拐などがあったらどうする」

「娘じゃ無きです……」


 一旦それだけ否定して振り返ると、顔にいくつか切り傷を付けた白髪混じりのガタイのいいおじさんが眉間にシワを寄せていた。

 そして彼の足元にはグレーの狼がいる。恐らくペットとか従魔とかそんな感じだろう。


「嫌やわ。あんさん、うちが襲われそうな時腰に付けた刀に手を伸ばしはったやろ? そんなお人好しなお方が子供投げられて受け止めへんわけがない」


 やろ? と確認するようにアダラが言うと図星だったのかおじさんは無言で渋顔を作った。


「それにあんさん、背中に背負うとる荷物。それ赤子やろ?」

「む……」


 え、赤ちゃん?


 そろーっと確認してみれば生後3ヶ月程の、ようやく首が座ったであろうサイズの赤ちゃんが布に包まれて背負われていた。

 で、デンジャラスギャップ盛りおじさんじゃん。赤子を背負うな、抱っこしろ。


「……とりあえず、先程の件は俺が正当防衛だと証言する。街中で襲われたんだ。冒険者ギルドと白華教に報告が必要だ」

「そういやそうやったわ。ギルドにも報告必要なんやねぇ」


 下剋上や死者が当たり前だった世界のアダラの発言って物騒極まりないなぁ。

 でもアダラとおじさんのお陰で助かった。

 まぁ状況的にアダラ狙いっぽそうだけど。


「Fランク冒険者のリィンです。ありがとうござります!」

「…………いや、特に何も」

「おじさん名前何ですか?」

「はぁ。Aランク冒険者のウヴァンだ。狼はグレートウルフのアッシュ。背中はリターナ、孫だ」

「うびゃんさん」

「ウヴァン」

「うべんさん」

「……おじさんやおじいさんでいい」


 拝啓、ライアー。

 幼女引き連れたおじさん枠取られそうだよ。


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― 新着の感想 ―
子連れ狼とはまた日本的なキャラクター来ましたな しかも連れてるの幼女か…… さてはこの作者さんはおじ×幼女の組み合わせだいすきだな??(※周知の事実)
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