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第230話 対人戦特化なので魔物は苦手です



 私とライアーは武器を調達したあと、街の外にある街道まで来ていた。

 ライアーは篭手はそのままにして、剣を少し重ために調節。私はあまり軽いとは思わない片手剣を購入した。ライアーより私の武器のほうが重たいんですけど、どういう事ですか。


「私後衛職なのに……」

「前衛といい勝負出来るお前がただの後衛職であってたまるか」


 というかトリアングロの幹部も普通に負けてるんだぞ、とライアーはブツブツつぶやく。

 文句があるなら言い値で買うけど?


「ライアーどこまで行くつもりです?」

「いや、この辺りなら面倒な魔物がいるから……」


 剣は一応使えるけど、筋力とか持久力があるわけじゃない。何かあった時や不意を狙う時の一手のつもり。


「ライアー?」


 森が近くなってきてきた場所で、ライアーは急に薬草を取り出した。

 そしてわざと自分の手を傷つけて血をその薬草に付着させると、それを燃やし始める。


「…………何してるですか?」


 こう、すごく嫌な予感するんですけど?


 ライアーが黙々と作業を作業を続けている。

 私が声をかけても全く返事が無いところが怖い。


 壊れた?叩いたら直るかな?


「……おい小娘。」

「何です?」

「その手に持った剣を振りかぶって何をするつもりだったんだ?」

「頭にクリーンヒット……!」


 殴るつもり満々です。

 やっぱどこがバグってるかなって思ったら頭かなと。修理手順は分からないから叩くしか、私にはその方法しか無くって!悔しい、こんなに野蛮な手段しか無いって事が……!私に、もっと力があれば……!ライアーを救える力が!


「本音は?」

「1回くらいは本気で頭かち割ってやりたきと思うすてますた」


 この私を蹴り倒したこと未だに根に持ってるからなうんこ髪野郎。


「さ、そろそろか」


 ライアーは私に火のついた薬草を渡して、数歩後ろに下がる。


「この薬草はとある植物系の魔物の副産物みたいなものでな」

「ん?」

「その魔物は弱いが、他の獣や魔物に傷付けられた弱った獲物を食べることで、弱った時に出会いたくない魔物とされている」


 ライアーはニンマリと意地の悪そうな顔で笑った。


「頑張れよ」

「はぁ!?」


 目にも止まらぬ速さで距離を取ったライアーを追いかけようとした瞬間、背中からガサガサと音が聞こえた。


「ピッ!?」


 後ろを振り返ると猛スピードで食虫植物のウツボカズラみたいな大口開けたよく分からない生命体が手足?の触手をバタバタと大きく振り回しながらやってきていた。


「気持ち悪きーーーっ!!!!」


 なんで蔦みたいな細い触手で体を支えられるのか、とか。なんか本当によく分かんない!


「ライッ」


 何してくれてんだとライアーを振り返ればあのおっさんは忽然と姿を消していた。


 スピードどうなってんの?


「ぴぎゅあああ!!??」


 これは私の悲鳴。

 私が3人居ても飲み込めそうな大きさの魔物は私目掛けてヨダレみたいな液体を流しながら迫ってくる。なにこれなにこれなにこれ。


「うえーーん! ライアーのばかぁ!!!」


 応戦するっきゃない事を察して私は涙目で剣を構えた。植物なら切れるでしょう。


 1本目の触手を剣で受け止めたら2本目の触手がぺちぺちと私を叩いた。

 いて、いてててて!


「腹ぞ着立!!!」


 殺傷能力が微妙にないだけに腹が立つ。

 2本とも切り捨ててても、蔦は怯む事無くぺちぺちと私に向かっていった。


 何この初心者向けの敵みたいな!

 それに翻弄されている私も腹立つ!


──ガバッ


 大きく口が開いた。

 何故か植物なのに歯が見えた。


「なにゆえ歯が存在するぞりー!!!!」


 怖いわけでは無いけど普通に気持ち悪い!


「そりゃ魔物なんだしあるだろ、歯」

「こんな溶解液みたき液体、口からデロンとおだしすといて!?」


 ライアーがどこからか冷静なツッコミを入れるけど異世界よく分かんない。腹立つ。


 せめて溶かして捕食する存在であれよ!咀嚼しようとすな!構造に文句言うぞ私は!


「ッ、も、うざい!」


 対処に手足が足りない。

 触手が腕にまとわりつくので上手く剣が扱えない。くそー! だから前衛職じゃないんだってば!


「〝ふぁいあぼうりゅ〟!!」

「あっ」


 喰らえファイアーボール!

 剣を使えても、初心者剣士だぞこちとら。対人戦闘経験しかありません。


 植物ならお得意の魔法で燃やせば継続的にダメージを与えられると思ってました。


「おいリィン……」

「何ライアー!?」


「──カエンネペンテスは炎で燃やすと仲間をおびき寄せるぞ」




「先言え!!!!!!」



 煙のせいで遠くからドドドドドと大群が押し寄せて来た。


 植物に炎属性くっつけちゃダメじゃん。初見殺しすぎるって。



「遺伝子根絶やし皆殺し!」

「韻を踏むな」


 その数およそ十

 剣は捨てました。はい、向いてない。


「ゴリ押し魔法ぞ見せるすてやる……」


 耐性があるだけでダメージが入るなら、何がなんでもファイアーボールで殺し切る。

 むしろ炎以外の選択肢が浮かばないって。植物に地属性とか効く?? 私の魔法はイメージ重視なのでイメージ優先します。意地になってるワケじゃないからね。ウンウン。






「……きたねぇ花火だ」


 ライアーのそんな呟きが聞こえるくらい、私はこれでもかとファイアーボールをカエンネペンテスにぶち込んだ。




──十分後


「ハーッハッハッハ! 得意属性に殺すされた気持ちはどうぞり!? あ、聞こぬか! ごめんなさいねぇ!」

「初心者でもやらねぇよそんな方法」


 周辺のカエンネペンテスが追加で入り、その数は倍の二十くらいはあった。


 プスプスと燃えた黒煙がその体から登っている。


「カエンネペンテスの討伐証明部位は袋の中に入ってる魔石だ。ちなみに魔石以外の素材は蔦と液体と袋なんだが……燃え焦げて売れねぇな」

「うぐっ」


 先に言ってよライアーの馬鹿。


「とりあえず魔石だけでも回収しておくか」


 ライアーがそう言って袋に手を突っ込む。うわぁ気持ち悪い。解体もだけどこういうグロ系はちょっと未成年にはきついね。


「グロき……」

「……。俺的にはお前がトリアングロにやった事の方が割とグロいと思うけどな」


 喧嘩売る方が悪い。お前の事です。


「………………うん?」


 ライアーが突然カエンネペンテスの袋をひっくり返した。




 そしてその中から勢いよく出たのは、目を回している男女二人組の冒険者だった。

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