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第156話 金の血あれど人権なし




 パチ。

 組んだ木が燃え盛る火のせいで爆ぜた。


 倉庫のそばでテントを組み、そこで休む4人。その傍で夜番をしているのは私とエリアさんだ。


「リィン様……よろしければどうぞ」

「あの、私貴族様に様付けされるほど偉くは無きなのですけど」

「これは失礼しました」


 エリアさんがカップを持って私に渡してくれた。

 カップの中には暖かいミルク。軽く口をつけると甘い味が口の中に広がった。毒の気配も無い。砂糖を入れてくれたってことは純粋な好意か……。


 この島は気温変化に疎いとは言え、ほんのり肌寒くなってきた夜だ。暖かな飲み物が体に染み渡る。


「金の血、って、何ですか」

「……。金の血、ですか」


 フゥ、と吐いた息が炎に照らされた空に白くなびいた。


「クロロスも時たまに口に出すしてますた。私の事、黄金の君と呼ぶました。……何よりクラップに直接、この髪の色がクアドラード王家の血筋だと教えるされました」


 私が王弟の娘であるということ。

 身分は漏らすつもり無いけれど庶民なら疑問を持っても仕方ない。それに、個人的に多方面から情報を集めたいというのが本音だ。


「王家の血筋だとご存知だったのですね」


 エリアさんは断りを入れた後私の前に座った。


「……そうですね、始まりはクアドラード王国建国当時まで遡ります。初代国王、リベラシオン・クアドラード様が大賢者様を仲人に、エルフの代表者と契りを交わしたことから始まります」

「エルフ、ですか」

「はい。当時のエルフ族というものは今とは違い最上位に位置する種族とされていました」


 つまり、我が家でグーダラ寝転びナッツをつまみながら魔法の指導をしていたフェヒ爺もかつては神格化されてたってこと? 信じられない。


「そして初代国王陛下はエルフの加護を承ったとされています。その証拠に初代国王は金髪碧眼となりました。……貴女のような色に」


 碧眼は違う。私は普通に金髪だけです。

 まぁ、そんなことは言えないので無言で返す。


「エルフの加護を得た血筋というのはとても強力なものでした。子は皆金髪碧眼。片親の血筋が混ざろうとも。公爵家など、王家から離れた血筋、というものは何故かその加護が薄れるようで。現在最も血筋が濃いとされているファルシュ領でも金髪碧眼の子供はいません」

「ファルシュ領主様が……」


 あれ、王家から離れた子供たち。要は私の兄姉達が金髪碧眼の加護を離れたのなら、パパ上はなんで碧眼じゃないのだろうか。彼の目はヘーゼル。王家出身の子供時代が存在するなら、碧眼の可能性の方が高い。

 他は母の血を継いで皆黒目だし……。


「エルフの加護、というのは何かしらの効果ぞあるですか?」

「現状、魔法が得意になるというものが判明されています」


 あぁ……。

 なんだか妙に納得してしまった。


 私はまぁ、異世界転生の『幼少期から頑張るぜ俺TUEEEE方式!』みたいな自我形成で優位だから例外としても。パパ上も双子もそれぞれ魔法は優れていた。姉は体外に放射する魔法は苦手だったけど、身体強化系統は大得意だったから。


 双子より上の2人は生活が被る時間が少なかったからちょっと分からないけどね。


 そうやって納得していると、エリアさんの笑みが深められた。


「加護が薄れるとは言いましたが、それでも初代国王陛下から脈々と受け継がれている血筋。──私達エルドラード家はその血筋を尊び守り、管理して来たのです」

「か、管理?」


 あの、なんかすごく嫌な予感がするんですけど。

 カンリッテ、ナンデスカ?


「現在、この世に存在する金の血は全て、エルドラード家の認識の中にあります」

「ひょえ」

「クアドラード王家、ドラートドーノ公爵家、ゴールド侯爵家、ファルシュ辺境伯爵家。その家出身の子供、4人、5人、3人、5人、そして更に孫もおりますので。大体30人程」


 こっ、こっわ〜〜〜〜〜〜〜????

 え、怖くない???? 怖いよ?????


 あと大体30人って誤魔化したのは情報規制とかそういうのを兼ねているんですよね? 決してどこから出てきたか分からないFランク冒険者の事を言っているんじゃないですよね?


「……あれ? 少なき?」


 たった四家?

 私が首を傾げるとエリアさんは目を見開いた。


「おや、どうしてそうお思いですか?」

「クアドラード王家4人というのが王子というは分かるですけど、王弟って大概は爵位ぞ頂くかと思うですよね。そうなると婿入りか新興。歴代王家の兄弟が何人ぞいるか知りませぬが……。あと本来ですと姫も居るはずですし、過去にそんな場面ぞ存在すた……と………………ナンデモナキデス」


 エリアさんの笑みがめちゃくちゃ怖い。

 うん、とにかく少ないんだよ。ドラートドーノ家とゴールド家がどの時代から存在しているのか分からないけど、ファルシュ家はパパ上が初代。金の血と言われる子供達がたった三家の中に収まるとは思わなかったんだよねぇ……。


「はは、そう怯える様なものではありませんよ。嫁ぐ先、もしくは婿入りの家は別にその家だけでなくとも良いのです。……その子孫はまぁ四家に吸収されますけど」

「あぁ〜、そういうカラクリ」


 要するにこの四家以外の家に行った人達は金の血の予備って訳か。んで、予備を使わなかったら速やかに回収。

 うーん、扱いが人間では無い。


 そういえばペインがクロロスと知り合いなのって、もしかしてその四家じゃなくて予備側の人間だから……?

 うっわ、有り得そう。碧眼は事故でもなるって言ってたけど、そういう話は聞いてないし。


 うん、知らないで済むなら花だ。黙っとこう。

 多分ペインの親が金の血で、庶民と結婚した感じかな。んで、ペインはいつか貴族の養子に行く、と。


「と、言うわけで。ここまで理解出来るなら貴女の今後は分かりますね?」


 思わず顔が引き攣っていた。


「け、軽率に子供は作るません」

「それなら良かった」

「というか私に結婚願望というか……恋愛願望というか……そういうのが微塵も無きなのですよね……」

「そうなのですか?」


 庶民だったらあるかもしれないけど、結局パパ上の命令一つでどっかに嫁ぐ予定の身だったからさ。

 自主的にどうこうしようって気持ちは微塵もない。


「ちなみに私ですとどこ予定ですぞ?」

「金髪碧眼ですからね、それなりに。四家のどれかに……ですがまぁ、金の血には殆ど婚約者がいらっしゃるので第二夫人ですね」


 私知ってる。双子の兄はドラートドーノ家の令嬢と婚約してて双子の姉はゴールド家の婚約者が居るって言うの、知ってる。

 上の姉様ならまぁ、王家だろうかなぁ。あの人も金髪だし。


 というか言語上の問題でリアスティーンに婚約者居ないんだけどパパ上どうするつもりだったのか。


「……もしくは第4王子ですね」

「おぅ」


 思わず引いた声を出してしまった。


「彼には婚約者がおりませんし、庶民派ですから。(面識あるし)貴女にピッタリでしょうね」


 え、えぇ……。でも第4王子って嫌われ者だよね? 王家の的になっている存在なら軽率に婚約しない方がいいんじゃなかろうか。

 張本人がどういうつもりなのか知らないけどさ。


「あ、はは」


 まぁ、王子なんて雲の上の存在だよね。

 ……なんか王様見た事あるし第2王子に認識されてるけど蜃気楼だよね!


「あの、実は私の碧眼魔法で偽造すている場合はどうなるですか?」

「おや、それでも金髪である点は変わりませんよね」


 人権が無い。


「(その場合も第4王子だと言うことは言わないであげましょうか……)」


 リアスティーンはパパ上に、リィンはグリーン子爵に守ってもらうしかない……!

 ちょっと人権を作ってからお話させてもらってもいいですかね。



 ところで、ここまで話をしてエリアさんが誰の従者か分かったんだけど。


「第2王子殿下は元気ですたよ」

「……!」

「国境基地で会うしますた。貴方の睨みは正解です、推定ですが王都に向かっているです」


 クラップが素直に私の言葉通りにしていればだけど。


「……貴女は、少々頭が回りすぎますね。本当に庶民ですか?」

「この言語で庶民以外の可能性が存在すてますか?」

「………………異世界人?」


 お前もか。

 私は深く息を吐いた。


「──ちなみに国境基地では夜伽狙い多く存在すたので処罰する前に口ぞ割る方がいいです。まぁほとんどフロッシュの方に行くしていた故に気配は無きですけど」

「ナイス情報、ありがとうございます! 縛り上げて吐かせます!」


 いやぁ、女で良かった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なるほど。エルフの加護で魔法が大得意になるのね!エルフってすんごぉい!……フェヒ爺も元は神様と同格だったというのか……!?あの大雑把テキトーエルフが!? エルドラード家の黄金ガチ勢を既に…
[良い点] リィンちゃんに甘いホットミルクを用意してくれるエリアさん紳士~流石貴族様! 金の血狂いだけど!!! クアドラード王家がエルフの加護を受けた証の金髪碧眼、王家から離れると薄れる? 今ヘーゼ…
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