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5-20.緊急クエスト受注

 ギルドに着くと、いつも以上にごった返していた。

 平時の数倍人がいるんだが。まっすぐ歩くのが困難なレベルだ。


「緊急クエストっていつもの受付で良いのかな?」


 俺達4人の中で緊急クエストを受けた事がある人が居ない為、どうすれば良いのかが分からない。こんなに混んでなきゃ気軽に受付の人に聞けるんだけど。


「あ。あそこじゃない?」


 遼の指差す先に「緊急クエスト受付最後尾」と書かれた板を掲げるお兄さんがいた。

 どごぞのテーマパークのアトラクション待ちみたいだな。


「列…長いわね。」


 え…。

 よくよく見てみると、列はグネグネと蛇行していた。

 本当にアトラクション待ち列じゃん。


「1時間位掛かるみたいですの。」


 いつの間にか、ルーチェが待ち時間を聞いてくれていた。てか、1時間も掛かるのか。


「ちょうど良いですの。戦い方とか、陣形の打ち合わせをしましょう。」

「良いわね。」


 と、いう事で…並びながらパーティの基本的な闘い方の擦り合わせを行う事になった。


 1時間後。


「はい。お待たせしてます。4人パーティでよろしいですか?」


 疲れた顔の受付のお姉さんは、それでもテキパキと仕事をこなしていく。


「パーティ名は?まだ決まってないんですね。そうすると正式登録もしていないですね。はい。今回の緊急クエスト結果がパーティのギルド貢献度に加算されませんので、ご了承ください。報酬は個人成績に対して支払いますので、個人別受取でも良いですし、個人成績を合算して4等分でも構いません。予め分配方法を決めておかないと、後で揉めますので。後は…今回の緊急クエスト内容?あぁ、説明してませんでしたね。禁区で魔獣が大量発生して各区の管理小屋に押し寄せていますので、思いっきり討伐してください。魔獣の大量発生が収束と判断した時点でギルドカードに緊急クエスト完了の配信をします。」


 という感じらしい。

 …そう言えば、こーゆー複数のパーティが投入される場合のクエストってお決まりの役割があるような。聞いてみるか。


「この緊急クエストってリーダーパーティーみたいなのっているんですか?」

「リーダー…あぁ、コアパーティの事ですね。確かに通常ですとコアパーティがあり、各コアパーティをまとめるリードコアパーティを設定しますが…現段階では予定していません。というのも、強力個体が出たと言うよりも、無作為に魔獣が大量発生しているとの報告が入っていますので…コアパーティを設定するよりも、各個人、各パーティが得意な戦い方で各個撃破してくれた方が効率的との判断が下されています。…後ろが詰まっていますので、そろそろよろしいですか?」

「ん…?あ…はい。」


 受付は幾つかの窓口で同時並行で進められているけど、明らかに俺達だけの窓口だけ滞在時間が長かったみたいだ。後ろに並んでいる人達からの刺すような視線が痛い…!

 という訳で、俺達は緊急クエストを受注して禁区の管理小屋へ移動をした。


 管理小屋の転送室からロビーに移動すると、大勢の人でごった返して…いなかった。

 あれ?全然人が居ないんだけど。

 俺達4人は意外感に顔を見合わせながら、門の所へ移動をする。門番にギルドカードを見せると管理小屋を守ってくれる結界を解除してくれる仕組みだ。


「こんにちわ。」

「おっ。久しぶりだな。ちょっと前に初めてクエストに向かった時とは全然顔付きが変わったな。」


 げっ。その話はNGだ!


「その時は色々とありがとうございます。緊急クエストで来たんですけど…。」

「……気を付けろよ?魔獣の大量発生は時々あるから良いんだが、今回は少し様子が違うんだ。」

「どう言う事ですか。」

「なんつーか、普段の大量発生時は各魔物が個々で暴れ回る感じなんだけど、今回は一定の統制が取れている気がするんだよ。」


 統制…?同じ種類の魔獣がいて、その上位個体が下位個体を纏めているなら分かるけど、魔獣の種族が違って統制ってのは確かに変だな。


「まぁ、何とかなりますの。先ずは突っ込みすぎない程度に撃破しながら様子を見ましょう。」

「そうね。その中で何か見つかるかもしれないし。」

「うんうん。俺は遠距離で戦うから…全体を俯瞰しやすいかもしれないし、状況把握は常に出来るようにするね。」

「行くか。無理をしすぎないようにいこうな。」

「勿論!」


 門番のおっちゃんに結界を開けてもらった俺達は、EDランクの魔獣が生息する森エリアに足を踏み入れた。


 ヒュルルルルン!ボグ!!


 何かが飛来したかと思うと、鈍い音を立てて遼の鳩尾にクリーンヒット。目を見開いた遼は吹き飛ばされて結界に激突して崩れ落ちた。


「…はい?」


 いきなり過ぎる展開に動けないでいると、森の奥から6人くらいのパーティが現れた。…もしかしてプレイヤーキル的な展開ですかいな!?


「おい!大丈夫か!今のは流れ弾だ…!悪い!このポーションを使ってくれ!ってか、早くここから移動した方が良いぞ!すぐにエレメンタルウルフの群れが来る!!!」


 リーダーっぽい人は、ひとくちに捲し立てるとポーションを投げて寄越すと通り過ぎていった。

 良く良く耳を澄ませてみると、周囲の至る所から戦闘音が響いているな。


「遼君!早くポーションを飲みますの!はいっはいっ!」


 倒れた遼に無理矢理ポーションを飲ませたルーチェは痛みに顔を歪める遼の背中をバンバンと叩く。


「移動しますの!左右から魔獣反応が近づいていますわ。」

「…行くわよ!森林エリアは視界が悪いから、荒野エリアに移動した方が良いと思うわ。」

「だな。じゃぁ、打ち合わせ通り俺、火乃花のツートップ、ルーチェと遼が後衛で進もう。」

「え…ちょっと…俺、マジで腹が痛くて動けないんだけど。」

「遼君、動かないと死ぬわよ?」

「し、死ぬっ!?」

「えぇ。魔獣は待ってくれないわ。気合いで動いて。」

「そんなぁ…!」


 涙目の遼を尻目に俺達は行動を開始した。

 先ずは見通しが良い荒野エリアが目標だ。その後は…高台に移動して全体の状況が確認できると良いかもね。

 ともかく…気を抜かないでいかないとな!


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 高台(といっても、少し高い丘)に到着した俺達は視認できる魔獣の数に言葉を失っていた。

 魔獣達はランダムに大量リポップしている…なんて事は無かった。ゲームじゃないんだし、そりゃあそうか。


「湖エリアの方から来てますわね。」

「だな。」


 湖エリアはBランクだったっけ。普通に考えて俺達Cランクが気軽に行って良い場所じゃない。

 けど、湖エリア…もしくはその奥にあるであろう元凶を絶たないと、魔獣の大量発生が収束しない可能性もあるよね。

 魔獣を狩りつつ誰かが元凶を叩くのを待つか?


「ちょっ!どうするのさ!そろそろ限界なんだけど!」


 どうするのかを決めあぐねている俺達の後ろで、双銃を鬼連射している遼が騒ぎまくっている。

 高台に登ってくる魔獣の足止めをお願いしてたんだけど…もう少し頑張って欲しいよね。


「遼、もうちょっと待って……うげっ。」


 うわぁ…いつの間にこんなに沢山のゴブリンが集まったんでしょ。

 え、ちょっとヤバくね?懐かしのゴブリンロードまでいるんだけど。


「皆…どうするよ。このままだと消耗戦は必須だぞ。」

「私は大元を叩きたいけどね。ただ、高ランク帯の魔獣だと、相当厳しい戦いになるのは間違いないわ。」


 だよねぇ。

 この前の夏合宿で戦った雷猿かCランク。

 Cランクは4人以上で挑むべき魔獣。

 湖エリアに行けばBランクの魔獣がいる可能性が高い。

 Bランクは合計16人以上の複数パーティで挑むべき…とされている魔獣だ。単純に考えて強さが4倍違う。

 そんな相手に俺達4人で勝てるのかが問題だ。いやぁ…これは判断つかないぞ。


「お二人とも。ゴブリンを退けるのですわ。流石に冗談にならない数になってきましたの。」


 うん。そうだよね。

 じゃぁ、やりますか。

 俺は龍刀を構えると魔力を集中させる。

 夏合宿のサバイバルバトルで習得した新技がどれ位の殲滅力があるのか…試すには丁度良いだろ。

 俺の魔力が高まっているのに気づいたのか、火乃花とルーチェは一歩下がって待機を選んだみたいだ。

 よし。いくぞ…!


ヒュン!!


 俺の頬を掠めて一条の光がゴブリンの群れに突き刺さり爆散。ゴブリン達が吹き飛んだ。


「ルーチェさん?」


 今の流れはどう考えても俺の攻撃でしょ!?と非難の視線を送ると、ルーチェはフルフルと首を横に振っていた。


「今の…私ではないですの。」

「えっ?」


 ヒュンヒュンヒュンヒュン!!!

 次の瞬間、複数の光が通り過ぎ…遼を巻き込みながらゴブリン達を次々と吹き飛ばした。

 なにこのスーパー攻撃力。…ってか、似たような攻撃を見た事がある気がするのは気のせいだろうか。

 ゴブリンの群れがどんどん減っていく様子を、呆気にとられながら眺めていると…俺達の前に2人の女性が上空から降りてきた。


 1人は紫と白のドレス?を着こなしたグレーのゆるふわウェーブロングヘアを揺らすロリ系美女。

 もう1人は縦ロールの金髪を揺らし、紫と青が綺麗に編み込まれたドレスのような服を着こなし、胸元は白い布で寄せるという巨乳アピールな女性。

 …ん?………げっ。

 慌てて隠れようとしたけど…隠れる場所が無い。

 走行している内に2人の女性は振り向き……。


「………あぁ!!私の従者になる破廉恥男ですわ!!!」


 ……と、金髪の方が俺を指差して叫んだのだった。

 ギロリ…と、女性陣から殺意の篭った視線で射抜かれたのは言うまでもない!


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「成る程。それでは私達と同じですわ。」

「東区だっけ?も、魔獣が相当押し寄せてんのか?」

「そうですわ。全く…掃討するのが手間ですわ。」


 遼が近寄るゴブリン対処係を再任命されて頑張っている間に俺達は情報交換を行なっていた。


「と言うよりも、あなた…前回は私に名乗らなかった割に態度がふてぶてしいのですわ。」

「いや、こっちも名前聞いてないからな?」

「…そ、そんな事ありませんわ!この私が名乗りを忘れるなどある訳がありません!」

「そう言われてもな…。」

「……良いでしょう。そこ迄シラを切るのなら、改めて私の名前を教えてあげますわ。私はマーガレット=レルハ。…どうですの?私に対する態度を改める必要がお分かりになりました?」

「ん?マーガレットだろ。よろしくな。俺は高嶺龍人だ。」

「そ、そんな…!私の名前を聞いて動じないなんて……。」


 珍妙な生物を見るような目で俺を見るなし!

 隣に立つマーガレットの仲間が肩をポンポンと叩いている。


「マーガレット諦めるのよ。世間知らずの馬鹿なんて腐る程いるわ。でも…だからと言って邪険にしてはいけないのよ。…なんて言っちゃう私。フフッ。」


 うわっ。ツンデレして自分で突っ込んで笑ってるんだけど。コレは…新しいタイプの属性キャラか?


「マリア…私は許せませんの。レルハ家の名前を聞いて何の感想も抱かないなんて……!」

「そう言われてもな…。レルハ家とか知らんし。」

「レルハ家が禁区庁長官を務めているのを知っていて…興味が無いなんて。龍人と言ったわね…貴方何者ですの?」


 え?とても良い家柄のお嬢様じゃん。

 つーか、知らないって興味がないじゃなくて、本当に知らなかったんだけど。コレ、勘違いしてるよな?


「はっ…!分かりましたわ。龍人……あなたは家柄なんか関係なく私に仕えたいのですわね!それ程までに私の事を…。家柄ではなく、私個人を見ていたのですわ。だから、あの時…私を後ろから抱きしめたのですね!」

「いや、ちょい待て。」

「それなら…許してあげますわ。」


 頬を赤らめ、モジモジと上目遣いで見つめるなし!いや、可愛いよ。可愛いんだけど…今この場面でそれはマズイ。大いなる誤解を招く!


「龍人君。あなた…他区の女の子にも手を出してたのね。」

「誤解だか…」

「待つのですわ。他区の女の子…にも?……とおっしゃいましたが、それではまるで貴方達……南区っぽいですわね…でも女の子にも手を出している事になりますわ。」


 おーい、俺を置いて話を進めないでくれー。


「はっ…もしかして貴女………見た事ありますわ。霧崎火乃花ですわね……も龍人の女なのですか!?それに、隣に居るのはルーチェ=ブラウニーですわ。まさか………高官の娘ハンターなのですか!?」

「流石に看過できない女たらしっぷりよ。」


 マリアがドン引きしながらマーガレットの後ろに隠れた。


「分かりましたわ。龍人。貴方は他の女の子に手を出して、私が動じないか試しているのですね。…それ程までに私の事を想っているとは気付きませんでしたわ。……ポッ……ですわ。」


 俺は思わず天を仰いだ。

 当事者本人を置き去りにして、こんなに話が展開されることってある?

 そこからは、誤解を解く為に全力を尽くした。

 …15分位で一部の勘違いを除いて解決出来たのは不幸中の幸いだね。

 その間、ゴブリンの残党と戦い続けてくれた遼には、ちゃんと後で謝らなとな。




 ギリギリのところで修羅場を回避した俺達はBランクエリアの湖に向かっていた。

 マーガレットとマリアは元凶の当たりを付けていたらしく、討伐をする為に湖エリアへ移動してたんだとか。その道中でゴブリンに囲まれる俺達を見つけて助太刀に入ったんだと。

 …個人的には助太刀しなくて良かったんだけどね。

 そうすれは、今頃は普通の精神状態で魔獣討伐に臨めていたに違いない。


「ふふっ。龍人は照れ屋さんですの。この討伐が終わったら正式に私の従者になるんですから、恥ずかしがらなくて良いのですわ。」


 そんな事を言いながらピッタリくっついてくるのはマーガレットだ。

 従者と主人って普通は並んで歩かないよな?従者が少し後ろを歩くイメージなんだけど。仮に並ぶことがあっても、ピッタリくっつく必要はないよね?

 火乃花とルーチェは俺とマーガレットの事は諦めたのか、先行して歩いている。

 因みに頭が痛い原因はこれだけじゃない。


「龍人は恥ずかしがっているの?レルハ家のお嬢様が好意的なのだから、そういう態度は失礼ね。そーゆー人、嫌いよ。…でも、急展開過ぎて戸惑う気持ちも分かる。…なんて、龍人の気持ちが分かっちゃう私。フフッ。」


 さっきからずっとこの調子だ。

 ツンデレってデレた瞬間に萌えるんだと思うけど、ここまで連続でツンデレされると精神的に辛い。


「龍人、湖エリアに着くまでには色々解決しておいてね。」


 おまけに遼もこの調子だ。助けてくれる気配がさっぱり無い。触らぬ神に祟りなし…みたいなスタンスはずるいよなー。

 魔獣と遭遇でもしないかな。

 戦いになれば、一先ず今の状況は解消されるだろ。


 それにしても…そろそろ湖エリアに着くけど、やけに静かだ。魔獣の気配が感じられない。

 その時、突然マーガレットが俺の両腕で抱きしめた。

 こ、この感触は……!!


 そんな俺の動揺を他所に、マーガレットは真剣な顔で言ったのだった。


「ここから先が湖エリアですわ。努努気を抜かぬよう、お願いしますわ。」


 しゅ、集中出来ない…!

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