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5-18.遼と龍人

 バーベキューの翌日はまさかの…1日まるっと自由時間だった。

 ラルフ先生が酒瓶片手に「明日はハードなメニューがあるからな!」って叫んでたから、覚悟は決めてたんだけど…。

 何かあったのかね。ハードメニューを実施出来ない重要な問題でもあったのな。詳細は教えてくれなかったから分からないけど…。

 このタイミングで天地が魔法街を襲撃してきて、ラルフ先生達が急遽対処に当たっている…なんて、流石にないよな。

 ハードメニューって事は、それなりに危険もつきまといそうだし、それをちゃんと管理するのは難しいだろうから…その準備関連のトラブルかなー。

 と言うわけで、ポンっと空いた時間を使って遼と話をする事にした。重要な話を無駄に引き伸ばして良い事は無いからね。

 俺と遼がいるのはサバイバルレースのゴール地点だった山頂だ。


「それで、話って何?」

「あぁ。」


 なんか改めて話すってなるとちょっと切り出しづらいな。


「…遼はさ、天地とは戦うつもりなんだよな?」

「ん?勿論だよ。だから頑張って属性魔法も使えるようになったんだし。」

「だよな。でさ、どうやって戦っていくか…って考えた事ある?」

「あ……。」


 遼、フリーズ。

 そりゃぁそうだよな。天地がどういう組織なのかも、何人いるのかも、どこに本拠地があるのかも-何も分からないんだから。分かってるのはとてつもなく強いって事だけだ。

 それを考えれば、強くなるっていう目的で頑張っているのは間違いでは無い。

 けど、それだけじゃぁ…きっと届かない。


「先ずはさ、天地がどう言う組織なのかを調べる必要があると思うんだ。」

「うん。俺もそう思う。」

「で、それと同時並行で進める必要があるのが…。」

「う、うん。」


 ゴクリと唾を飲み込んだ遼が緊張の面持ちで俺の方を見る。


「一緒に戦う仲間集めだ。」

「………えっ?」


 青天の霹靂。みたいな顔をして俺を見るなし!


「え、いや、だって、…え?一緒に戦ってくれる人なんている?めっちゃ強いだろうし、そもそも天地の存在を信じてくれるかどうかだって怪しいよ?俺、それで皆に気狂い思想の持ち主なんて思われるの嫌だな。」

「遼……。」


 ゴン!と、遼の頭に拳骨を落とす、


「イタっ!?何すんのさ!」

「あのさ…、何をしてでも天地を潰す。位の気概…っていうか覚悟は必要だと思うぞ。なんなら、この魔法街を天地の対抗組織にする位の行動が必要だと思う。」

「えっ…この星を?」

「あぁ。」


 ちょっとスケールを大きく話し過ぎたかな?

 イマイチピンとこないのか、頭を摩りながら考え込んじまった。

 でも、俺は本気でそれ位の行動力が必要だと思ってる。仲間を増やすなら、それなりの実力者を集める必要もある。

 話は少しズレちまうけど、俺自身ももっと強くなる必要がある。龍人化【破龍】で黒い魔力を操れるようになって、ルフトが暴走させた竜巻の撃退では黒い魔力に赤い稲妻が走ってと…地味にエフェクト的には成長出来てる気がする。

 けど、纏魔も覚えたばかりだし…まだまだ技術も知識も足りない。今よりももっと早く成長出来たら良いんだけどな。


「龍人…その気概は大切だと思うけど、まずは少人数からでも仲間を集めるのが必要だよね?」

「勿論。実はさ、火乃花が一緒に戦いたいって言ってくれてるんだよね。」

「……え?………えぇっ!?今なんて言ったの?」

「だから、火乃花が俺たちと一緒に天地と戦いたいって言ってくれてるんたって。」

「嘘…あの火乃花が?」


 遼は火乃花に対してどんなイメージを持ってんだ?

 強いし、基本的に達観気味なスタンスもあるから、こういう面倒事には首を突っ込まないとか思ってるのかな。


「まぁそう言う事だから、今度3人で作戦会議でもするか。」

「うわ…なんかいきなり現実感増してきた。」

「何となく過ごしてて気付いたら天地に手のひらの上で転がされてたっていう悲劇よりはマシだろ?」

「…それはそうだね。」

「だろ。」

「でも、火乃花が仲間になるとか…龍人凄いね。」

「そうか?ただ成り行きで森林街の事を話しただけだよ。」

「…あ、そっか。自覚無しか。」

「え、何の話だ?」

「なんでもないよ。」


 何それ。凄い気になるんですけど。


「そうだ。仲間にする人って言ったら…ルーチェとか良いと思うよ。」


 ルーチェか。確かに父親が魔法街で良いポジションにいるから情報も集められそうだし、何より実力も指揮能力も高い。参謀役として活躍はしてくれそうかも。


「良いかもな。ただ…。」

「誰彼構わず話すのは得策じゃないから、話す相手は見極めて。でしょ?」


 うわ。心を読まれたんですが。

 遼のやつ「してやったり。」みたいな顔してるし。

 ちょっと悔しい。


「龍人はルーチェにもう話しても良いと思う?」

「んー…俺は良いと思うけどな。まぁ話すにしても夏合宿が終わってからで良いんじゃないか?」

「それはそうかもね。」


 一先ず話は纏まったな。当面の目標は強くなる事と信頼出来る仲間集めだ。その後にすべき事は1つ。


「龍人、久々に勝負しない?」

「お?…いいねぇ。ルールはどうする?」


 久しぶりだからちょっと楽しみだな。

 ただ、森林街にいた時よりも俺達の戦闘スタイルは確立してるから、対等な条件にするのが難しい気がする。


「んーー、制限無しで被弾したら負けでどう?」

「なるほどね。そしたら、10回で勝ちでいっか。」

「え、10回!?そんなにやるの?」

「だって今日暇だし。」

「いや、暇かもだけど…そんなにやらなくても良いんじゃない?」


 あれ?何故か遼が及び腰なんですが。


「嫌そうじゃん。」

「だってさ、最悪20回もやるんだよね?明日の事を考えたら危険じゃん。」


 明日の心配をしていたのか。

 まぁ…明日にはラルフ先生の言っていたハードメニューも始まるだろうし、コンディションを整えるのが大事なんだろうけど。


「遼。」


 真面目な顔で名前を呼んでみる。


「な、何さ。」

「天地と常に万全のコンディションで戦えると思ってんのか?」


 ちょっと意地悪な言い方かな?と思ったら、雷にでも打たれたかのような「ハッ」とした顔になった遼は腕を組んで頻りに頷き始めた。


「そっか…うん、うん……確かに…うん。龍人の言う通りかも。」


 アレ?遼のやつ、完全にスイッチが入っちゃったかも。


「よし。龍人、ギリギリまで追い込んだ状態で明日に臨もう。」


 え?流石にそこ迄は言ってないんだけど。


「俺が甘かったよ。10回勝利と言わずに、力尽きるまでらろう!俺、頑張るよ!」


 決意に燃えた遼の瞳を見ていたら、断る事は出来なかった。


「や、やるか。」

「うん!」


 俺と遼のデスマーチ並みな勝負が始まったのだった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 翌日。

 1年生全員が山頂に集められていた。

 凄い機嫌が悪そうなラルフ先生と、呆れ顔のキャサリン先生を見ながら…俺達は静かに体操座りをしていた。

 ラルフ先生は何でこんなに機嫌が悪いのかね。

 ピリピリと空気が張り詰める中、ラルフ先生は手に持っていたコップの水をグイッと一気飲みする。


「っくそ!こりゃぁ…3日酔いだな。」


 その瞬間、場の空気が目に見ているのかって錯覚するかのように緩んだ。

 機嫌が悪いんじゃなくて、2日酔い…3日酔いで頭が痛かったのね。


「ホント…私がそばに居るからって浮かれすぎなのよねぇ。一昨日の夜は本当に激しかったんだからぁ。」

 両手を頬っぺたに当ててイヤンイヤンと体をくねらせるキャサリン先生を見て、男達が微妙に前屈みになる。

 俺?俺は、まぁ、想像に任せるさ。


「アホか。騒ぎまくった結果気持ち悪くなって海辺で吐いてただけだろうが。」

「その吐き方が激しかったじゃない。隣で見ていて干からびるんじゃないかって心配したのよぉ。」


 思い出してまた気持ち悪くなったのか、ラルフ先生は顔を顰めて首を横に振る。

 その場にいなくて良かった。この世のものではない光景を見たくはないからね。


「あぁ気持ちわり。まぁ…やるか。」


 すげーやる気なさそうなんだけど。


「これから始める特訓が夏合宿最後のメニューだ。」


 お、遂に最後か。


「最後は特訓っていうよりも、俺とキャサリンがお前達を評価する。内容はサバイバルバトル。全員左腕に被ダメージを計算する腕輪を付けてもらう。」


 ラルフ先生が指をパチンと鳴らすと、俺達1人1人の前に銀色の腕輪が現れた。

 ん?色々表示されてるな。横長のバーと、その下に5と0の数字か。


「その腕輪の表示は3つ。1番上にあるバーが被ダメージバーだ。ダメージを受けていくとバーが減少していって、全部無くなると5の数字が4になる。その数字が0になったら退場してもらう。んで、5の横にある数字は相手の被ダメージバーを0にする攻撃をしたら1つ増える。簡単だろ?」


 簡単だけど…そのルールだとガチで総合力が必要な気がすんな。


「最終的には2つの数字を掛け算してポイントを算出だな。順位が高い程、将来的に良い事があるぞ。」


 …ん?また抽象的な内容だな。


「ラルフ先生、聞きたい事がありますの。」

「お、いいぞ。」


 ルーチェは真剣な顔で腕を組みながら立ち上がる。


「その将来的に良い事がある。…というのを具体的に知りたいですの。この特訓が最後となるとサバイバル生活で良い事があるわけでも無いと思います。つまり、魔法学院での生活で良い事があると仮説が立ちますの。」

「いいねぇ。で?」

「例えば昇学試験で加点があるとか、学食が1年生の間は無料とか…色々考えられますの。ただ、それが不明確だとやる気が起きませんの。」


 ルーチェの言葉に1年生の殆どが「確かに」とばかりに首を縦に振っている。俺もその1人だけどね。

 ラルフ先生が具体的に明言しなかったって事は、きっと何かしらの理由があるんだと思う。つまり、ルーチェの質問は明確に答えられない以上厄介なもの。

 …の筈なんだけど、ラルフ先生はどことなく楽しそうにニヤッと笑った。


「いいねぇ。そういう的確な質問は好きだぜ。そうだな…ギリギリアウトで伝えるとすると、今後魔法街公認の魔法使いとして活動する資格を有するチャンスが貰える。ってトコだな。」

「ちょっ…!?ラルフちゃん?」


 キャサリン先生が「行っちゃったわよっこの人!」みたいな顔で見てるから…きっと本当なんだろうな。


「おかしいですの。私の記憶では公認の魔法使いというのは存在しなかった筈ですの。いるとして魔聖ですわ。」

「まぁそこから先はお任せするぜ。あんまりペラペラ話してると俺の首が飛んじまうかならな。」


 いや、今の話が本当だとすると完全にアウトじゃないか?


「つー訳で、質問タイムは終わりだ。…おっと、忘れてた。今回のサバイバルバトルは基本的に何でもありだ。逃げる。欺く。不意打ち。なんでもやれ。但し…共闘は禁止とする。あくまでも個人の総合力を見るからな。俺とキャサリンが共闘してると判断した時点でそいつらは失格にする。これには裏の意味とかないからな?ただそのまんまの意味だ。」


 俺達の顔を眺めたラルフ先生は楽しそうに目を細める。


「いいツラしてんじゃねぇか。じゃぁきっかり1時間後にサバイバルバトルを開始する。全員勝手に散らばれ。じゃーな。」


 指をパチンと鳴らしたラルフ先生はキャサリン先生とともに姿を消した。

 なるほどねぇ。どこからサバイバルバトルを始めるのかも委ねるわけか。つまり、最初のスタート位置の決め方も相当重要になりそうだな。

 共闘不可と言われたからか、1年生の皆は互いに言葉を交わすことも無く、黙々と準備をして散っていった。

 つーか、魔法街公認の魔法使いって…メリットあるのかね?その辺りがイマイチしっくりこないけど。


 さてと。どうやってサバイバルバトルを乗り越えるかな。

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