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5-16.戦闘の果てに…

 残る3体の雷猿と戦うチームを助けに移動した俺とミラージュは、予想外の光景に立ち尽くしていた。

 ブスブスと煙を上げて倒れる雷猿を足蹴にする火乃花が俺達に向かって手を振っている。その奥ではプラムが特大の光球を浮かべて膨れていた。


「余裕そうだな?」

「勿論よ。1人だと手こずったかも知れないけど、プラムが一緒にいたから。」

「むむぅ。火乃花君が殆ど手柄を持っていったのよ。私ももっと戦いたかったわ。」


 どうやらバトルジャンキー枠のプラムにとっては消化不良な戦闘になったみたいだ。まぁペアの相手が火乃花だったらそうなるよな。よっぽどの強敵とかじゃ無い限り、火力面では火乃花1人で十分だろうし。


「ニシシッ。火乃花ちゃんもプラムちゃんも強いねっ!じゃあ私達は雷猿の討伐補助に向かうから、2人はルーチェ達のところをお願いっ!」


 クルクルーと回ったミラージュはトコトコと走り出す。

 さっきから思ってたけど…走り方の割に速度はかなり速いんだよなー。


「じゃっ!」


 俺はピッと挨拶をするとミラージュを追いかけて走り出した。

 次に向かったのはオルム、ルフト、チャンの3人組が雷猿と戦う場所だ。

 なんつーか、このトリオにはあまり心配していない。

 氷を操るオルム、風を操るルフト、炎を操るチャン…3人が使う属性魔法がバランス良く分かれてる。それに……戦闘センスが光るルフトがいるからね。

 そんな事を考えながら到着すると、拮抗した戦いを繰り広げていた。


「案外苦戦してんのな。」

「龍人ちゃん、バルクちゃんと遼ちゃんペアのトコにいこっ!」

「あれ?手伝わないの?」

「だってみんな無詠唱魔法だけで戦ってるんだもんっ。敢えてハンデをつけて戦うとか、余裕ちゃんちゃんだと思うんだよっ。」

「あ、なるほど。」


 そりゃぁ確かに放っておいても良いわな。寧ろ手を出したら怒られそう。


「そしたら最後は…遼とバルクか。」

「不安な2人でフィナーレだよっ。るるるん。」


 バルクと遼の組み合わせは、非常に心配だ。

 一直線に突き進むバルクと、石橋を叩いて渡る遼。これだけを考えたら相性は良さそうなんだけど…2人共極端だからなぁ。本当に責めるべき時と、引くべき時に行動がバラバラになっちゃうと思う。

 他のメンバーが比較的順調に倒しているから感覚が麻痺しそうだけど、雷猿はCランクの魔獣。普通は2人で挑まない。

 …あれ。そうやって考えると、結構やばいんじゃないか?下手するとボッコボコにされてる可能性もあるな。


「ミラージュ。急に心配になってきた。急がない?」

「そうだねっ。私も死んでないか気になってるんだよ!」


 縁起でもない。

 俺とミラージュは小走りから、走りに変えて移動を速める。

 少しすると、雷猿が戦っていそうな音が聞こえてきた。


 ドォン!ドォン!ゴロゴロゴロゴロ……ドドォン!!


 やり合ってるねぇ…!と思って到着すると、これまた予想外の展開が繰り広げられていた。


「ボァァァァァァ!!」


 雷猿の両手から雷球が連続で投げられ、着弾地点に高密度の雷を撒き散らしている。

 荒れ狂う雷球の隙間を縫って駆けるのは…遼だ。

 バルクは………いた。何故か木の陰に隠れて様子を伺ってるんですが。役割逆じゃないか?普通近接戦闘役が相手を引きつけるだろ。


「ここだぁ!!」


 遼の双銃から放たれた魔弾が雷猿へ飛翔する。


「ボァッ!!」


 直撃かと思われたけど、雷猿は地面に手を突っ込むとボォン!と抉り取った土の塊を魔弾の前に放り投げた。

 マズいぞ。雷猿の奴、既に両腕に雷をチャージしてやがる。魔弾を防ぎ、その後の隙を突いて反撃に出るつもりだ。


「ミラージュ!」

「うんっ。ちょっとヤバイんだよっ!」


 俺とミラージュは遼が致命打を受けかねない状況に行動を開始した。俺は遼を守るべく、ミラージュは雷猿に追撃を放つべく。

 龍刀を構えつつ遼と土の塊の間に割り込む。魔弾が防がれた直後に雷撃がくるはず。それを防いでミラージュの攻撃を当てるタイミングを作る!


「…って、んん…!?」


 予想だにしない光景に思わず動きを止めてしまう。

 なんと、遼の放った魔弾が土の塊を突き抜けたり、直撃した瞬間に爆発を引き起こしたんだ。

 お陰で魔弾が土の塊に防がれる事はなく、雷撃を放とうとしていた雷猿の腕を貫いて破壊した。


「フボルゥゥアァ!?」


 雷猿も予想外だったんだろう。

 目を見開きながら体勢を崩し、情けない声を出している。


「あ、龍人!今の良いでしょ。俺のバレットアーツ。」

「バレットアーツ?」

「そ。魔弾をカスタマイズするんだ。今のは貫通弾と爆裂弾。ここまで胴体がガラ空きになれば…!」


 クルクルっと双銃を回転させた遼はドドドドドン!と魔弾を連射する。今度は直進と弧を描く軌道の2種類だ。これって…サバイバルレースの時に使ってたやつか。複数の軌道で攻撃されると回避しにくい。嫌らしい攻撃だね。

 でも、この攻撃で雷猿を倒せるか微妙なような…ちょっと火力不足じゃないかな。


「ウリャァァアアア!!!」


 気合いが入りまくった声に上を見ると、巨大な岩の棘に向かって拳を振り上げるバルクの姿があった。


 ガン!!


 と、鈍い音と共に…殴られた岩の棘が彗星の如く雷猿に突き刺さる。


「グボギュゥ…。」


 口から鮮血を零し、胴体に突き刺さった岩棘に触れた雷猿は力なく倒れていった。


「おっし!作戦大成功だな!」


 着地してガッツポーズをしたバルクは遼とハイタッチを交わす。なるほどね。遼が引きつけてバルクが溜め攻撃を叩き込むって作戦だったのか。

 遼のバレットアーツは相手を撹乱するには良い性能を持ってそうだし。

 この作戦を考えたのがどっちなのかは明白だけど…。ただ、そうなると課題も残りそうな気が…。


「おい!龍人!俺達の作戦最高だったろ!?」


 満面の笑みのバルクが腕をブンブン振り回しながら褒めてくれアピールをしてくる。


「あぁ。良かったと思うよ。バルクの最後の攻撃は凶悪だね。雷猿が一撃だもんな。」

「ははっ!だろ!?」

「でもでも、遼ちゃんの戦い方は少し危なかしかったんだよっ?」

「う…ごめん。でもあの戦い方がベストだったんだよ。」

「んっ?」


 ベストという言葉を聞いたミラージュの頭にハテナが浮かんだ。


「えっとね、相手を倒せそうな時って一般的に視野が狭くなるから、少し押され気味になるようにしてたんだよ。」

「あ、そういうことかー!遼ちゃん凄いじゃんっ。」


 納得がいったのか、ミラージュはピコンと人差し指を立てて遼を褒め始めた。

 いや、そんな簡単に鵜呑みにするか?…って思ったんだけど、3人は俺を置いて意気投合を始めてしまった。

 その後、ある程度落ち着いたところで俺達はクラスメイト達が集まっているであろう幽霊屋敷に向かう今年にした。

 …これで屋敷に到着したら、皆が幽霊に憑依されてました。なんて展開だったらカオスだな。

 そうなったら幽霊討伐隊を結成するしかないけど…科学の力なんて無いし…幽霊を祓うのも出来ない。クラスメイト達がブリッジ体勢で歩いてきたら……逃げるね。仲間を助けるよりも保身優先になっちまう気がする。

 ……怖っ!


 無駄な妄想を展開しながら3人の後ろを歩いていると、木々の向こうに屋敷が見えてきた。

 うわぁ…惨劇じゃん。屋敷はボロボロに崩れ、周囲にはリモキが転がってる。崩れた屋敷の隣には疲れ切った様子のクラスメイト達が集まっていた。


「みんなー!お疲れ様なんだよー!」


 ミラージュが元気に声を掛けながら駆け寄ると、ルーチェ、クレア、タムが出迎えてくれた。


「お疲れ様ですの。」

「お、お疲れ様。」

「いやぁ大変だったっすね!」


 ルーチェは相変わらずのニコニコ笑顔。

 クレアは俺と目が合うと恥ずかしそうに視線をフイッと逸らし。

 タムは1試合終えたスポーツマンみたいになっていた。


「凄い数のリモキだけど…怪我人はいないのか?」


 これだけのリモキに襲われたんだ。相当な激戦だったに違いない。


「いや、余裕っす。」

「え。」

「ルーチェさんが魔獣戦闘未経験メンバーを指揮して、クレアさんが危ないチームの防御回復支援&遊撃、俺が後方から狙撃しまくるっていう鉄壁の布陣で倒し切ったっす。」


 あー…成る程ね。そういう布陣なら確かに良いわ。俺だったら魔獣戦闘未経験は防御に徹させるけど…それをしないルーチェは流石だ。


「タムさんは余裕だったかも知れませんが、皆は疲弊していますの。」

「そりゃそうだよな。初めて魔獣と戦う時は緊張すんもんな。」

「あ…そ、それは違いますの。」


 ん?ルーチェが顔を赤らめてモジモジし始めたんですが。

 そんな疑問を解決してくれたのはクレアだった。


「実はね、魔獣と戦った事が無い人達は凄い頑張ってくれたんだ。ただ…ルーチェさんがテンション上がっちゃって、色んな陣形とかの指示出しをしちゃったんだ。」

「…思ったよりも皆が動けて嬉しかったのですわ。」

「マジ凄かったっす。名軍師現るって感じっすよ。」

「褒められると…恥ずかしいですの。」


 再びモジモジするルーチェ。

 まぁ……結果的に大きな怪我をした人もいなかったみたいだし、良かったのかね。


「あ、ラルフちゃんだっ!」


 嬉しそうにぐるぐる回りながら言うミラージュの言う通り、壊れた屋敷の上空からラルフ先生がゆっくり降りてくるところだった。

 めっちゃニヤニヤしてやがるし。


「よぉ。肝試しはどうだった?色んな意味でヒヤヒヤしただろ。」


 …性格悪いな!

 つまり、この幽霊屋敷から魔獣の襲来まで全てがラルフ先生の狙い通りだったって事か。


「今回の肝試しは急な事態変化への対応と魔獣戦闘の経験を積んで貰う事が目的だ。まぁ…雷猿とはもっと皆に戦って欲しかったけどな。あ、そういえばキャサリンにも感謝しろよ。」


 キャサリン先生?そういや見てないけど…。


「魔獣達の出現管理と、幽霊屋敷の演出はキャサリンの担当だったからな。ま、あれだけのリモキを同時に出すとは思わなかったけどよ。」

「あらぁ?アレくらいハードな方が為になるでしょ?ふふっ。刺激が強い方が快感になりやすいのよ。」


 おふつ!?

 キャサリン先生…いつの間に俺の後ろに立ってたんだし!?しかも指で背中をツツーするのやめてくれし!ビクってなっちゃうじゃないの!


「そ、れ、に…この後は例のアレでしょぅ?」


 妖艶な笑みを浮かべながら目を細めるキャサリン先生。うわー、嫌な予感がするー(棒読み)。

 ラルフ先生も悪餓鬼みたいな顔してるしー。


「そうだな。おし、お前ら。明日は丸一日掛けて…」


 魔法の猛特訓とか?いやいや、ラルフ先生との果てなき戦闘訓練って可能性も。もしくは予想を外しての座学か?サバイバルレースパート2なんてパターンもあり得るな。


「バーベキュー祭りだ!!」


 えっ!?うそ、マジ!?


「「「「ウォォォーー!!」」」」


 俺達の歓声が大地を揺るがしたのだった。

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