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5-14.リモキ

 檻に閉じ込められた俺達は、さまざまな脱出方法を試みていた。

 魔法による内側からの破壊攻撃。探知魔法を使って檻自体に脱出関連の機構が無いかの調査。ガンガンに熱してから急激に冷やす事で熱疲労を起こす試み。転移魔法や転送魔法による脱出。

 普通に脱出できそうじゃん?その筈なんだけど…。


「どうなってんだこれ。」

「んー…コレ、魔法が無効化されているとしか思えないわね。」


 顎に指を当てて考え込む火乃花が焔球を放つが、檻の内側に当たると急激に勢いを衰えさせて消えてしまう。


「それか吸収だけど…それだと転移魔法が使えない理由にならないのよね。檻内の魔法が檻の枠外に出るのを妨害しているっていうのが1番しっくりくるわね。」

「そんな檻って存在すんのか?」

「そこよ。聞いた事無いのよ。ルーチェは知ってる?」

「ん〜私も初耳ですの。隔絶結界で双方向の魔力を遮断するのは一般的な話ですが、それでも転移魔法を防ぐのは難しいですわ。つまり…魔法ではない可能性もありますの。」


 んー、話がややこしくなってきたな。魔法じゃないとして、その特殊な檻が何故この島にあるのか。だよね。

 もしかして……。


「もしかして…怨霊の呪いっすか?」


 あら。タムが俺と同じ思考回路してるんだが。


「うぅ…それ怖すぎるよぉ…。」


 再び涙目のクレア。


「とにかく、この檻から脱出できる方法を探さな………」


 ドン!


「………今の何?」


 何かを叩く音が聞こえた気がするんですが。

 クラスメイト達を見回すと、皆が首を横に振っていた。


 ドン!ドン!


 …気のせいじゃない。これだけ不気味だとラップ現象とかを疑っちゃうんてすけど。

 探知魔法も檻のせいで周囲の情報を拾えないから、俺たちの他に誰かがいるのかも分からないし。


 ドン!ドン!ドン!ドン!

 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン


 家全体から打撃音が響き始める。

 これじゃあまるでこの家自体が生きているみたい……。

 そう思った時だった。ドォォォォン!!!という爆音と共に閃光が迸り、家が破壊されていく。

 天井が砕け、壁が壊れていき……俺たちの目の前に現れたのは緑色の体をした猿の群れだった。

 更に、俺たちを捕まえていた織檻もいつの間にか消えていた。


「ウキっ。」「ウキっ。」「ウキっ。」


 俺達を見て頭の上で嬉しそうに手を叩いている。

 …なんだろう。今は不可解な状況の真っ只中で、何が起きているのかを正確に把握する必要があるんだけと…緑猿の動きがヤケにイラつくな。


「アレは…魔獣よ。」


 小さい声で伝えた火乃花を、半数程度のクラスメイトがギョッとした顔で見る。

 いや、お化けじゃなくて魔獣なんだから良くないか?…違うか。クラスメイト全員がギルドクエストをやってる訳じゃないから、魔獣と戦った事がない奴がいるのか。

 つーか、今の反応を見る限り…半数程度が未経験か。


「大丈夫だよっ。リモキは体の葉っぱ飛ばしに注意すれば楽勝なのっ。ルルルン。」

「そうアル!ミーがぶっ叩いて、燃やすアル!皆はここで見ているアル!」


 周囲を緑猿…リモキに囲まれている状況にも関わらず、ポジティブ発言をして前に出たのは、2人の女性だった。

 ルルルン…と謎の言葉を口遊むのはミラージュ=ステラ。白とピンクのフリフリが付いたコスチュームを着用した…んー、ひと言で言うなら幼児体型アイドルかな。薄ピンクの長い髪をポニーテールしている辺りもアイドルっぽい。

 もう1人のいかにも中国人みたいな語尾の方がチャン=シャオロン。朱色のチャイナドレスを着た格闘家だ。ドレスのスリットから覗く健康的な太ももが、男性陣から密かな支持を集めているのは言わずもがな。

 確かこの2人、サバイバルレースで5位〜10位に入ってたよね。

 ミラージュは光魔法が得意で…とにかく戦い方が自由。

 チャンは炎魔法と格闘を合わせた暴れん坊娘。

 ってな感じかな。


「そろそろリモキが来るよっ!皆やっつけるぞー!おうおうー!」

「ボッコボコにするアル!」


 2人は果敢にリモキの群れへ歩き始める。けど…他のクラスメイトはまだ怖気付いたままなんだよな。


「龍人君。どうする?」


 あら?何故か火乃花が俺に意見を求めてきた。

 俺より良い判断が出来そうなもんだけど…。


「いや、火乃花はどうするのが良いと思う?」

「私なら一気に殲滅を狙うけど…。龍人君は?」

「んー、俺なら魔獣と戦う事に慣れてる人を2チームに分けるかな。殲滅部隊と防衛部隊で。」

「なるほどね。魔獣と戦った事が無い人達の指導役みたいなイメージかしら?」

「だね。ルーチェとクレア、タムを防衛部隊かな。残りは殲滅部隊で。」

「それでやりましょ。」

「ん?オッケー。」


 すんなり受け入れられたな。ちょっとだけ不安要素もあるけど…まぁ大丈夫だろ。

 俺達はルーチェを呼んで作戦を説明する。

 これを聞いたルーチェは「任せてくださいの。」と言って、クラスメイト達に矢継ぎ早に指示を出し始めた。

 因みに…この間、既にミラージュとチャンはリモキの群れに突っ込んで暴走中だ。


「よし。じゃあ俺達も魔獣討伐といきますか。」

「えぇ。」


 俺と火乃花、ルフト、バルク、遼、プラムは頷き合うと攻撃を開始する。あ、気付いたらオルムもリモキの群れの中で刀を振り回してる。いつの間に。

 まぁ、ビビってるよりは断然良いか。

 俺は向かってきたリモキの1体を通り過ぎ様に斬り捨て、返す刀で風乱刃を放って前方のリモキ達にダメージを与える。

 更に龍刀を振り下ろして地面に当たる瞬間に魔法陣を刃と地面の間に展開。接地の瞬間に魔法陣を発動して左右に土棘を連続で発生させる。

 よし。今の攻撃で包囲網に穴が出来た。

 仲間が殺された事に怒った数体のリモキが体の葉っぱを飛ばしてくる。見た目が鋭そうだから、回避からの反撃がベターかな。


 ゴォォォオオオ!!


「ワァオ。」


 目の前にいきなり現れた火の渦に思わず外国人みたいな声を出してしまう。


「龍人君!ヤバいわ。」

「ん?何がだ?」


 火の渦を出した火乃花が俺の近くに着地するなり、危機感を露わにした。

 ぱっと見、順調に魔獣討伐が進んでると思うんだけど。


「リモキの群れの奥から大型の魔獣が近付いてるわ。多分…4方向から1体ずつ。」

「マジか…。どの魔獣か分かるか?」

「木が邪魔で見えなかったのよ。それに夜だから視界も悪いし…。」


 成る程ね。ともかく大型の魔獣が来てるとしたら…状況は芳しくない。俺、火乃花、バルク、遼、ルフト、プラム、オルム、チャン、ミラージュの9人が魔獣慣れして戦ってるメインだから、これを4チームに分ける必要があるか。


「火乃花、4つのチームに分けて迎撃しよう。」

「そうね。それなら…」

「私と龍人ちゃんがペアね!後は、火乃花ちゃんとプラムちゃん、遼ちゃんとバルクちゃん、オルムちゃんとルフトちゃんとチャンちゃんが良いと思うよっ。」


 中々に良いチーム分けを言いながらミラージュが俺の隣にスチャッと着地する。

 機嫌が良いのか、鼻唄まじりにくるくる回ってるし。んで、キランと決めポーズを取りパチンとウインクをした。

 …なんだろう。可愛いのは間違いないんだけど、現実離れしてるっていうかなんていうか。ともかく俺の心は全く動かない。


「大型の魔獣は多分雷猿だよっ。Cランクの魔獣だから注意だねっ。ふふふーん。パパッと倒しちゃおうっ!」

「お、おう。よろしく。」


 テンション高いな。ぶっちゃけ付いていけない。

 火乃花がポンポンと俺の肩を叩いた。…なんだその憐れみの目は。


「じゃあ私は皆に伝えつつ行動するから、2人はこっち方面の魔獣をお願いするわね。」

「火乃花ちゃんヨロシクねっ!」


 ミラージュはブンブンと手を振りながら火乃花を見送る。

 その間にも魔具の杖から星型の光を撃ちまくってリモキを屠ってるから怖いよね。

 さて…。俺もリモキを撃退しながら雷猿について聞かないと。


「ミラージュ。雷猿の特徴って知ってるのか?」

「んっ?ザックリとね!」

「一応教えてもらえる?」

「えっとね、落雷の魔法を使いながらぶん殴ってくるよっ!」

「何それ怖い。」

「感電対策が出来てればそんなに怖くないから大丈夫!よーし、いっくぞー!!」


 杖をクルクルっと回したミラージュが飛び上がる。木の高さまで飛んだミラージュは真上に杖を掲げた。


「雷猿以外を一気に倒しちゃうよっ。」


 杖の先端に付いている星型の透明な宝石が光り輝き、流星群が放たれた。あ、隕石ではなくて、星型光魔法群だ。見た目はそのまんま流星群だけど。

 ズドドドド!!…っと、星型光魔法が突き刺さった衝撃が地面を揺らし、砂煙が晴れると周囲の木々は綺麗に吹き飛んでいた。

 そして、爆心地中心に佇むのは1体の魔獣だけ。

 クリーム色の体毛に体を包み、見える地肌は赤。3メートルはある体を、前でクロスした腕で守っている魔獣…雷猿だ。体の周りにはバチバチと雷が迸っていて、気軽に近づく事が出来ない威圧感を感じる。

 実はルーチェの魔法で絶命していて、そのまま……なんて事ある訳無いよね。

 ……やっぱりそうだよな。


「………ボァァァアアアア!!」


 ちょっとだけ間抜けっぽい咆哮を上げた雷猿が手に持つ錫杖を振り上げ、俺たちに向かって電撃を放った。


「よっと!」


 ま、この程度は予想出来たからな。

 俺が展開した魔法壁が電撃を防ぎ、それをみた雷猿が怒り狂ったように地団駄を踏む。


「ボァッ!ボァ!ボアアアァァア!!」


 そして、再び振り上げた錫杖が強い光を放ち…特大の雷が天より落ちて雷猿に直撃した。

 なにそれ自爆?と思ったけど、そんな事は無く…全身を稲妻が覆う凶暴な風体となった雷猿が低い唸り声を漏らしながら俺とミラージュを睨み付けていた。

 ナイトメアウィザードの時も思ったけど、Cランク魔獣は一筋縄じゃいかなそうだ。

 …気を引き締めていこう。


「ミラージュ。俺が近接で攻めるから、上手く合わせられるか?」

「まっかせてー!龍人ちゃんは私の魔法に射抜かれないように気をつけてねっ。」


 ハートを射抜くみたいな言い方でちょっとヤダな…。


「オッケー。」


 俺は龍刀を脇に構え、飛び出した。

 そもそも合宿に魔獣が現れる事が不可解だけど…、もしかしたら天地の差し金かもしれない。

 とにかく、先ずは現状打破最優先で動くぞ。

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