5-13.幽霊屋敷
仕事の都合で更新日を金曜9時に変更しています。
時間が取れれば追加更新もしていく予定です!
肝試しは各ペアが同時スタートという…不思議なルールだった。普通の肝試しって時間差出発だよね。脅かし役の人が時間差で脅かしポイントに来る挑戦者を脅かしていくのが鉄板な筈だ。
いや…てゆーか脅かし役の人いなくないか?心当たりがあるとしたらキャサリン先生。
そもそもこの島に来てるのは俺達1年生と、教師の2人のだけ。ラルフ先生が転移魔法を活用して脅かし役に回る可能性はあるけど…あの人がそんな面倒くさい事をするとは思えないんだよね。
そーすると、一切姿を見ていないキャサリン先生が脅かし役なんだけど、1人で全員を脅かすとか無理がある。
そう考えれば考える程…ラルフ先生の怪談話が現実味を帯びてくる。ガチの心霊スポットだから、脅かし役なんて不必要説だ。
「龍人君…怖いね……。」
隣を歩くクレアが不安そうに辺りを見回している。
本当にこーゆーのが苦手なんだろうな。肝試しが始まってからずっとウルウルしてる。
俺?俺はそこまで苦手って事はないんだよね。人並みに怖いけど、極端に尻込みはしないかな。
「不気味っちゃ不気味だけど、今のところ探知魔法にはクラスメイトしか反応していないし大丈夫じゃない?」
「でも、でもさ…幽霊って探知魔法に反応するのかな?」
「……それは微妙かも。生体反応は無さそうだし、魔力を持ってるか分からないから魔力反応があるかも不明だな。」
「でしょ?気付いた時に取り憑かれてたらどうしよう……。」
「取り憑かれるとかやだね。どうする?俺がいきなり白目を剥いて襲い掛かったら。」
「きゃっ。もう…やめてよぉ。」
ゾンビみたいなポーズを取ってみたら、クレアにポカスカ叩かれた。
「ま、でもこれだけ人が密集してたら何があっても大丈夫だろ。」
クレアに叩かれた所を摩りながら周りを見回す。
同時に同じ場所から肝試しが始まったのが原因で、各ペアは数メートルの距離感で進んでるんだよね。
実際に俺達のちょっと横では、面倒くさそうな火乃花に引っ張られる涙目のバルクもいるし。
「そうだよね…。でも、お化けに皆が同時に襲われたら…。」
…ダメだこりゃ。こーゆーのが怖い人って、きっとどんなにポジティブな状況になったとしてもネガティブに考えるんだろうな。
話せば話すほどドツボにはまりそう。
寧ろ違う話題に変えた方が良いかも。
「クレアって学院生寮に住んでんだよね?」
「ん…?うん。そうだよ。」
「実家的な所に帰ったりはしないの?」
「……。」
アレ?クレアが困った顔になっちまった。
「あ、ごめん。聞かない方が良かったか。」
「う、ううん。そうじゃ無いんだけど…。」
「いや、ホントにごめん。」
完全に話題の振り方を間違えた。普通に好きな食べ物とかの話題にすれば良かったのに。
俺自身、ちょいちょい森林街の事思い出してるからな。無意識にホームシックみたいになってて、その感情から相手に同じような事がないかを聞いちゃったのかも。
気まずい雰囲気に耐え切れず前を見ると…。
「あ。家だ。」
「えっ!?」
俺達の100メートル位先にある暗闇に、ぼんやりと一軒の家が浮かび上がっていた。
暗闇に浮かび上がるっていう時点で怪しさ満点だけど、そこは心配ない。何故なら、家の周りに光源を放つクラスメイト達の姿が見えるからだ。
ただ…誰も家の中に入ろうとしていないように見えるんだよね。
クレアが服の端をキュッと摘んでくる。何それ可愛い。
「とにかく近くに行ってみよう。」
「……うん!」
いよいよ目的の家が近付いてきたからか、クレアの顔は緊張気味だ。
小走りで家の近くまで移動する。
すると、ちょっとよく分からない事態になっていた。
「……何やってんだ?」
「さぁ…?」
何故か家の玄関ではプラムとルフトが物凄い剣幕で睨み合っていたんだ。
この2人ってそんなに仲悪かったっけ?
「俺っちが先だよっ!」
「いいえ、私達が先に着いたのよ。」
「スリル満点なこの場所に突入する美味しい役は渡せないのっ!」
「それは私も同じよ!」
ガシィ!と2人は胸ぐらを掴み合う。
プラムの周りに光魔法が、ルフトの周りに風魔法が浮かび上がり…一触即発の様相を呈する。
…なるほどね。ルフトがバトルジャンキーなのは勿論のこと、プラムが同じって事を忘れてたよ。
プラムが森林街でレフナンティ警護団団長を勤めている時に、部下の特訓が鬼のように厳しくて延々と続くってのが有名だったっけ。しかも、部下の成長を思って…というより、本人が戦いたいというニュアンスが強かったとか何とか。
つまり、家の前で揉めている2人は戦いのチャンスを相手に譲るまいと張り合ってるわけだ。
どうすっかなー。解決策は思い付くんだけどやりたくないというか何というか…。下手すると俺に2人の敵意が向きそうだしなー。
「はいはい。お2人さんとも無駄な喧嘩はお終いですの。こんな不気味な家の前で喧嘩するなら、少し離れた所でやって欲しいですの。」
いや…家にどっちが先に入るかで揉めてるんだから、離れたら意味ないでしょ?ルーチェさんや。
「という訳で、私が先に入りますの。」
スタスタスターと胸ぐらを掴み合うプラムとルフトの横を通り過ぎたルーチェは、躊躇う事なく家のドアを開け放った。
「あ!ルーチェ!抜け駆け禁止だって!」
「ルーチェ君。それは許せません!」
ルフトとプラムが慌てて止めようとしたけど、ルーチェは2人の手をスルリンと掻い潜って家の中に入ってしまう。
「………きゃーーー!!」
そして、家の中から叫び声に似た悲鳴が聞こえたのだった。
ちょっと…マジで幽霊が出たのか?
だとしたらヤバくない?
「クレア!先に行くぞ!」
「え…う、うん!」
クレアを置いて駆ける。
家の中にはルフトとプラムが先に飛び込んでいる。その数秒後に家の中へ入った俺は…絶句せざるを得なかった。
「なんだよこれ…。」
そこには、檻の中に入れられたルーチェ、ルフト、プラムが居たんだ。何故檻なんだ?
「どういう事だよ?」
「いや、中に入ったら捕まったというか…あっ!龍人危ない!」
ルフトの声に反応して身を屈めると、頭の上を何かが通り過ぎていく。ガシャン!と、それは壁にぶつかると壁の中に潜り込んでいった。今のって…小さな檻だよな?
……また!
上から降ってくる気配に後ろへ回避を試みるも…ドン!と、何かにぶつかってしまう。
「うわっ!」
「きゃっ!?」
今の声…クレアか?
そのままもつれるように転倒した俺達は床を転がり…。
「あらまぁですの。」
「龍人やるなっ!」
「ハプニングを装って…やり手ね。」
檻の中に閉じ込められた3人が何か言ってるけど、俺の耳には全然入ってこなかった。
何故なら、倒れた俺の上にはクレアが乗っていて…俺の目の前にクレアの顔があったんだ。口には柔らかい感触が。優しい吐息が俺の頬を…。
ガシャン!
あ…と思った時には時既に遅し。上から再び降ってきた檻が俺とクレアを捕まえて、気付いた時には他の3人が捕まっている檻の中に座っていた。
目の前の3人はニヤニヤと俺たちの事を見てやがる。横を見ればクレアは真っ赤な顔の頬を両手で抑え、顔から湯気を出していた。
「龍人っ!」
ルフトがグッと親指を立ててくる。
「龍人君、見直したわ。」
プラムは何か勘違いしてないか?
「龍人君、ドキドキは突然に…ですの。」
ルーチェは謎の格言めいた事を言い出すし。
皆がニヤニヤしながら言ってくるから、マジで恥ずかしくなってくる。いや最初から恥ずかしいんだけど、それをこの3人に見られてたって考えると余計に…。
「取り敢えず皆、落ち着こうか。」
「う、うん。私もそれが良いとおも…」
ガシャン!ガシャン!ガシャン!
後ろから檻が落ちる音がした。振り返って見ればクラスメイトがポカーンとした顔で捕まっていた。
まぁ家の中に入って、皆が檻に閉じ込められてたら「どういう事態?」ってなるよね。その隙を突いて檻が降ってくる訳だから…、事態を飲み込めずにポカーンとなるのはしょうがない。
その後も家の中に入ったクラスメイトが同様の手口で次々と捕まっていき…結果として全員が檻の中に閉じ込められる事になったのだった。
てゆーか、皆同じパターンで捕まるとか結構ダサいよね。いや、まぁ俺の捕まり方はちょっと違うシチュエーションだったけど。やばっ。思い出したら恥ずかしくなってきた。チラッとクレアを見ると目が合った。向こうも顔がほんのり赤い。ちょびっと見つめ合い、クレアが恥ずかしそうにプイッと視線を逸らす。なんなんだこの感覚…!中学生時代の青春を思い出すのですが!
ともかく、皆が捕まりまくったお陰で、俺とクレアのファーストキ……ゲフンゲフンは、一旦有耶無耶になった。
いや!男として有耶無耶にするのが良くないのは分かってるぞ。ただ、今はこの家で起きている不可解な現象の真っ只中だ。色恋沙汰にうつつを抜かしていたら痛い目をみてしまう。
…という事にしておいてくれ。
さて、檻からの脱出劇を始めるかね。
少しでも面白い!と思って下さいましたら、評価、ブックマーク、コメントなどよろしくお願いいたします!




